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コロナで経営不安となった企業のための、経営資金繰り支援策と自力再生以外の対策
コロナで経営不安となった企業のための、経営資金繰り支援策と自力再生以外の対策

新型コロナウイルスの流行により、経営不安が深刻化して経営者は存続判断を迫られ、数多くの企業が資金繰りの対策を行っています。特に中・小事業者では、財務体質が大手企業と比較すると弱含みであることと、大手企業やそのグループ企業よりも信用力が乏しいことが影響し、金融機関からの新規調達借入が難しい状況となる場合があります。その故に、資金繰りが回らなくなり、廃業を選択する事業者も徐々に増加傾向にあります。政府としては、新型コロナウイルスの影響を受け、資金調達が困難な中・小企業の資金繰りを支援するため、特例として融資制度・信用保証制度の拡充を実施しています。また一方で、倒産や事業休止において自力での再建に不安を感じている経営者がとる方法のひとつが、事業承継です。事業承継を適切に行い、他の企業と連携を図ることで、自力再建では実現できなかった新しい道が拓けることがあります。このコラムでは、コロナ禍の経営不安で自力再生が厳しい経営者に向けた対策、事業承継について解説します。コロナにより先行き不安を感じておられる中小企業の経営者のみなさんに参考となれば幸いです。

コロナ関連倒産の現状

コロナウイルスの影響を受けての倒産は、2021年7月21日時点で発生累計が1788件となっています(帝国データバンク調べ)。コロナ関連倒産では、「破産整理」が1554件と発生件数全体の86%を占めているのが現状です。

とくに、テレワークや外出自粛に対応できない業種である飲食店や建設業、宿泊業の倒産は多くなっています。倒産に追い込まれた企業は、もともと経営状況が悪化している中で、コロナが決め手となるケースも少なくありません。さらに、飲食店や宿泊業の倒産は、食品卸や観光業への連鎖が避けられない状況です。

参照元:帝国データバンク https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html

コロナ経営

コロナ禍の経営不安の正体

コロナ禍で業績が悪化した企業の経営者は、以下のような不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

  • 取引先企業の影響を受けた“連鎖倒産”を避けられるだろうか。
  • 事業存続のために自力再生ができるだろうか。
  • 以前のように売上が戻ったとしても、コロナで受けた融資は自力で完済できるのだろうか。

いずれにしても、不確実性の高いコロナウイルスの流行は、先行き不透明感を生み、事業における中長期的な見通しをたてづらくなっています。その中で、足もとの売上も低迷し運転資金の工面さえままならない状態で、経営を続けていくのは経済的にも精神的にも大きな困難を伴います。

コロナ禍の経営不安への対処:売上減少が「見込まれる」場合に利用可能な融資制度

セーフティネット貸付

「セーフティネット貸付」は以前からある制度で、主に自然災害時に適用されていましたが、コロナ対応として利用条件の緩和が実施されています。

従来までは過去の実績等と比較して売上が減少した事実が必要となる、いわゆる売上減少要件がありましたがそれが緩和され、売上減少が「見込まれる」場合であれば利用することが出来るようになりました。

  • 利用対象:中小法人、個人事業主など
  • 売上条件:コロナの影響が見込まれる事業者であれば利用可(※実質無条件)
  • 金利:中小11% 個人1.86%(※基準金利)
  • 融資限度:中小事業2億 国民事業4,800万円
  • 据置期間:3年
  • 貸付期間:設備資金15年以内、運転資金8年以内
  • 担保・保証人:原則必要

対象期間の売上減少が「5%以上」で利用可能な融資制度

コロナの影響で売上減少が5%以上ある事業者は、以下3つの制度から支援を選択することが可能です

  • 新型コロナウイルス特別貸付
  • 商工中金による危機対応融資
  • 新型コロナウイルス対策マル経融資

ただし、②「商工中金による危機対応融資」は、これまでに商工中金と取引がない事業者は、商工中金の新規審査の基準等を勘案し、実質的に利用する事が難しい状況になっています。

③「新型コロナウイルス対策マル経融資」は商工会議所の経営指導員の指導を受ける必要があり、意思決定に時間を大幅に有することから、実際には利用者の大半が①「新型コロナウイルス特別貸付」を選択しているとのことです。そのため、今回は「新型コロナウイルス特別貸付」に関して記載致します。

新型コロナウイルス特別貸付

  • 利用対象:中小法人、個人事業主など
  • 売上条件:5%以上の売上減少(※個人事業主は条件無し)
  • 金利:当初3年間(金利21%~0.36% ※以降は基準金利適用)
  • 融資限度:6億円(利下げは2億円迄)
  • 据置期間5年
  • 貸付期間:設備投資20年以内、運転資金15年以内
  • 担保・保証人:原則無担保で利用可

コロナ対応の信用保証協会による信用保証

信用保証協会とは、信用保証協会法という法律に基づき、信用力の乏しい中小企業・小規模事業者の資金調達支援、資金繰り安定化のために設立された公的な信用保証機関です。保証協会は事業者が金融機関から資金を調達する際に、事業者への「信用保証」を通じて信用力を付与し資金調達のサポートを行います。信用保証協会による信用保証の主な特徴については以下の通りです。

  • 取引金融機関からのプロパー融資と保証付融資の併用により、融資枠の拡大を図れる
  • 多様なニーズに応じて利用できる保証制度を用意
  • 長期借入金に対応した保証制度を用意
  • 無担保で利用可能

コロナ対応として新たに信用保証の対象となったのは、「セーフティネット保証4号」、「セーフティネット保証5号」、「危機対応融資」の3種類です。

セーフティネット保証4号

突発的災害の発生した地域において、災害等に起因し売上高減少している中小企業者を支援するための制度です。現在は「令和2年新型コロナウイルス感染症」だけではなく、「令和2年7月豪雨による災害」「令和2年台風第14号に伴う災害」等が指定案件となっています。

対象事業者

指定地域で1年間以上事業を継続していること(※新型コロナウイルス関連については、全ての都道府県の「業歴3カ月以上」と期間減少されています。)

政府指定を受けた特定災害の発生により、最近1か月間の売上高又は販売数量等が前年同月に比して20%以上減少していること
その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること

保証限度額

普通保証:2億円以内 無担保保証:8,000万円以内
無担保・無保証人保証:2,000万円(※一般保証とは別枠で保証)

セーフティネット保証5号

全国的に「業況の悪化している業種」の中小企業者を支援するための措置ですが、長期化する新型コロナウイルスによる経済の低迷を受け、令和2年5月1日以降は原則全業種が指定対象となり対象範囲が拡大しています。信用保証協会の一般保証(2.8億円)とは別枠で、最大2.8億円の借入債務の80%について保証を受けることが可能です。

対象事業者

  • 指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年同期比5%以上減少の中小企業者
  • 指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上、上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者

保証限度額

セーフティネット保証4号と等しい条件

危機関連保証

新型コロナウイルスの影響によって、新たに全国・全業種の事業者を対象に設けられた追加保証枠が「危機関連保証」です。売上高が前年同月比15%以上減少する中小企業・小規模事業者に対して、セーフティネット保証とは別枠として2.8億円の借入債務の100%を保証します。

対象事業者

新型コロナウイルスに起因し、金融取引に支障を来しており(リスケの実施等)、金融取引の正常化を図るために資金調達を必要としていること。

原則として、最近1か月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少しており、且つ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれること。

保証限度額

普通保証:2億円以内 無担保保証:8,000万円以内
無担保・無保証人保証:2,000万円

(※一般保証・セーフティネット保証4号5号とは別枠で保証)

コロナ禍では、大多数の事業者の方が大幅な売上減少を経験しています。複数制度がある中で、実際にどの制度を利用するべきか過去の事業活動や、事業規模、現在の財務状況などを鑑み判断する必要があります。資金繰りが悪化傾向にある場合は、できる限り迅速に金融機関の窓口や専門家に相談しサポートを受けましょう。

参照資料

日本政策金融公庫経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)ページ:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/07_keieisien_m.html

全国信用保証協会連合会HP:https://www.zenshinhoren.or.jp/index.html

コロナ禍の経営不安への対処:事業承継

コロナウイルスの経営不安を回避する対策として、政府では世代交代の事業承継を推進しています。事業を引き継ぐ後継者がいれば税制上の優遇措置が受けられます。しかし、事業承継において、すでに後継者が決まっている企業は少ないのではないでしょうか。後継者不在の場合、親族内承継、従業員承継、第三者承継など幾つかの方法がありますが、親族内承継、従業員承継は人材の選定や資金の準備などに時間がかかることも多くあります。短期で検討できる処方箋という観点では、第三者承継を選択する必要があります。

参照元:帝国データバンク https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210605.html

コロナ禍の経営不安対処:第三者承継

第三者承継は、事業承継の方法の一つです。現状の企業経営者が後継者不在のため、第三者に経営権を譲る方法になります。
第三者承継は、次のような状況下において効果的です。

  • 後継者がいない
  • コロナによる収益獲得ができない
  • 金融機関からの資金調達ができない

事業承継や第三者承継には補助金も適用されるものもあります。

中小企業庁より令和2年度第3次補正予算「事業承継・引継ぎ補助金」の公募が開始されています。事業承継による補助金は400万円~800万円を上限とする規模です。

本補助金は“事業承継やM&A(事業再編・事業統合等。経営資源を引き継いで行う創業を含む。)を契機とした経営革新等(事業再構築、設備投資、販路開拓等)への挑戦に要する費用”とされており、事業承継やM&A(第三者承継)にかかる費用の一部を補助するものとなります。

参照元:中小企業庁 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2021/210702shoukei.html

第三者承継

第三者承継のメリット

  • 後継者問題から解放される
  • 旧社名を残して事業を継続できる
  • 買い手と売り手のシナジーが期待できる
  • 雇用の継続ができる
  • 取引先や仕入れ先との関係性を続けられる
  • 譲渡代金を受け取れる

後継者問題からの解放

後継者問題は、少子高齢化の進む我が国の大きな課題です。
子供がいない家庭はもちろん、なんらかの事情で子供に経営のバトンを渡せない状況など、親族内承継がスムーズに行えないケースも多くあります。事業承継において、第三者承継の取り組みは今後ますます標準化していくでしょう。
経営に第三者的視点がはいることなど、副次的メリットも大きいです。

旧社名を残した事業継続

事業承継後も旧社名を残した事業継続が可能な場合もあります。
コロナの影響がなければ経営が順調だった企業の場合は、旧社名を残した承継では、取引先や仕入れ先の信用につながることが考えられます。事業自体がまったく新しい発想となる場合は、旧社名を残さないケースもあるでしょう。
社名に関しては、事業状況により判断が左右されます。

買い手と売り手のシナジー効果

買い手が売り手の事業を引き継ぐことで、買い手が既存に持っていた事業や経営資源と、売り手から引き継いだ事業やノウハウ・経営資源を組み合わせることで相乗(シナジー)効果が発生することが考えられます。シナジー効果は、売り手・買い手双方の事業にプラスになることが多く、事業の停滞によって引き継ぎを決めた売り手の事業が、シナジー効果によって再生する事例などもあります。
事業承継先を選ぶ際のポイントとしてシナジー効果は重要です。

雇用継続

事業承継をせずに廃業を選択した場合、雇用している従業員は原則解雇となります。事業承継で事業や会社を残すことを選択した場合には、買い手の方針にもよりますが、従業員の雇用を継続できる可能性が拓けます。通例、事業承継をした買い手も、引き継ぎ後の事業を滞りなく運営するために従業員を継続雇用するケースが多く見られます。

取引先や仕入れ先との取引継続

売り手の取引先や仕入先は重要な経営資源になりますので、事業承継の際には、取引先や仕入れ先との取引継続を買い手から望まれることが多いです。事業継続により、従来の取引を継続できれば連鎖倒産の防止にも役立つでしょう。

譲渡代金

事業の売り手経営者には、会社(株式)や事業の譲渡代金が入ります。その他、退職金等が支給される場合もあります。
株式譲渡代金や退職金等は税制の観点からも役員報酬や給与所得より優遇されていますので、ある程度まとまった資金を手元に残すことができる可能性は高まります。

まとめ:経営資金繰り支援策と自力再生以外の対策

コロナ前と同様の経営においては、急激な環境変化に伴う一時的な手当てができたとしても、負債の増加など、経営に対する悪影響は免れません。中長期的に考えれば尚更のことです。見通しのつかない不安もある中で、環境変化への対応を実行しなければいけません。

独立独歩での事業回復以外の選択肢として、第三者承継を活用した事業承継も有用な選択肢の1つとなりえます。事業上の相乗効果や、資本力や経営資源の豊かな企業とタッグを組んで業績の回復や再成長を志向するのもアフターコロナの新しい手法と言えるでしょう。この記事で紹介した事業承継のメリットと一致する部分があれば、ぜひ前向きに検討してみることをおすすめします。

M&Aの基礎知識
2022/07/30
事業譲渡と会社分割の違いとは?~比較・徹底解説!メリット・デメリットも紹介~
事業譲渡と会社分割の違いとは?~比較・徹底解説!メリット・デメリットも紹介~

近年、中小企業の後継者不足が問題となっているなか、M&Aによる外部承継が注目されています。M&Aのスキームには株式買収だけではなく、事業譲渡、会社分割といったスキームがあります。本コラムでは、「事業譲渡」と「会社分割」のスキーム概要、メリット、デメリット、2つのスキームの違いに関して解説します。

  • 会社の事業を後継者に承継してもらいたい。
  • 事業の清算を考えている。

このような場合は、事業譲渡や会社分割といった手法が考えられます。事業譲渡と会社分割は、どちらも譲受企業に事業を引継ぐ手法であり、M&Aの中でも混同されやすく類似した手法です。しかし、詳細をみてみるとそれぞれの特徴は異なるので、違いを理解して、目的に合った手法を選ぶことが重要です。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、M&Aの手法の一つです。会社が行っている事業に関連した資産(資産・負債・契約)を他社に譲渡するスキームのことをいいます。会社が行っている全事業を譲渡することも、一部の事業のみを譲渡することもできます。
この際の「事業」というものは、事業活動実施のために保有している組織化された有形、無形の財産・債務、人材、事業組織、ノウハウ、ブランド、取引先との関係などを含むあらゆる財産のことと定義されます。事業譲渡は、契約の締結しなおすことにより個別の財産・負債・権利関係等を他社に移す手続きを指します。そのため、事業譲渡は株式の買収と比較すると幅広い選択肢をとることが可能となります。譲渡企業は会社の事業の整理やコア以外の事業を切り離して、対価を得ます。
一方、譲受企業は対価と引き換えに事業の拡大や新規事業の獲得や技術、人材の取得を行います。なお、当事者の間で特に合意がない場合は、会社法で定められた競業避止義務が課されます。これは譲渡企業が売却した事業と同じ地域・期間において同じビジネスに取り組むことができないことを定めた規定です。

会社分割とは

会社分割とは、株式会社において、事業に関する権利義務の一部もしくは全てを別会社に承継することをいいます。会社分割のスキームとしては、ある企業の1つもしくは複数事業をすでに設立している違う法人へ移転する「吸収分割」と、新設した会社に対し既存の事業を移転させる「新設分割」という2種類があります。
吸収分割とは既存の会社に事業を引継ぐ方法であり、新設分割とは新しく設立した会社に事業を承継する方法です。会社分割は企業のグループ内の再編を目的として活用されることもあります。

事業譲渡と会社分割の違いのポイント

事業譲渡と会社分割はどちらもM&Aの一種であり、会社の事業の全部又は一部を承継するという点では同じです。したがって、事業譲渡と会社分割の違いがよくわからない方もいらっしゃるでしょう。しかし、この2つには違いがあるので、会社の状況に合わせて、どのようなメリットがあるのかを考えて、選択する必要があります。

会社法での解釈

  • 事業譲渡:組織再編行為に該当しない
  • 会社分割:組織再編行為に該当する

会社法上で「組織再編行為」に該当するか否かが異なります。会社分割は「組織再編行為」に該当する一方で、事業譲渡は該当事業の株式の譲渡を伴わないので、「組織再編行為」ではありません。会社法での解釈の違いによって、税務・法務での処理が異なります。

事業の承継の対価

  • 事業譲渡:現金で支払う
  • 会社分割:株式で支払うケースが多い

資産や事業の売買が目的である事業譲渡には、買収にあたって現金が必要です。一方で会社分割の場合は、買収対価として株式が支払われるケースが多いです。株式で支払うので、手持ちに現金がなくても買収が可能であり、負担するコストを軽減できます。しかし、株式は現金化するのに時間がかかるため、会社分割の場合でも現金での買収が要求される場合があります。
なお、事業譲渡・会社分割のいずれも承継の対価について法律で定められていないので、譲渡企業と譲受企業の合意によって買収対価を決定することが可能です。

税金の扱い

  • 事業譲渡:課税
  • 会社分割:非課税

事業譲渡は契約に基づく個別資産の「売買」に当たるので、原則として売り手、買い手共に消費税が課されます。土地や建物、設備、機械、商標権、特許権、在庫、のれんなど課税資産の合計額に課税されます。消費税の軽減措置はありません。一方で会社分割は「売買」ではないので、消費税は非課税です。
消費税以外にも税務で違いがあります。例えば、不動産取得税は事業譲渡・会社分割の双方で課税されますが、登録免許税・不動産取得税等の軽減措置に関して、会社分割では軽減措置が受けられますが、事業譲渡では受けられません。

雇用関係や取引先との契約

  • 事業譲渡:対象従業員と個別に労働締結・取引先との再契約が必要
  • 会社分割:原則的には再契約不要

事業譲渡では対象従業員と個別に労働契約を締結する必要があります。また、取引先との契約もすべて再契約が必要です。従業員や取引先から了解を得られない場合は事業経営に支障が生じる可能性があります。
一方で、会社分割の場合は従業員や取引先との再契約の必要はありません。

許認可の取得

  • 事業譲渡:新たに取得が必要
  • 会社分割:包括承継で、基本は再取得不要だが要確認

事業譲渡では許認可は個別に承継されるため、新たに取得する必要があります。
一方で、会社分割の場合は包括承継となり、一部を除いて、許認可が自動的に承継されます。許認可を再取得する手間を省略できるので、負担が減少します。ただし、会社分割でも承継できないものもあります。例えば、宅地建物取引業などの免許の取得や貸金業の登録、一般自動車運送事業や旅館業の許可などは再取得が必要になります。許認可は事業を合法的に行うために必須ですので、事前に包括承継されるかどうかを確認しておきましょう。

簿外債務の承継

  • 事業譲渡:負債の引継ぎは不要
  • 会社分割:簿外債務なども引継ぎ

事業譲渡の場合は負債を引継ぐ必要はありません。したがって、譲受企業はリスクを抑えて、事業を承継できます。
一方で会社分割は譲受企業が包括的に事業を引継ぐので簿外債務なども引継ぎます。
したがって、事前に徹底したデューデリジェンスが必要となります。

事業譲渡のメリット

事業譲渡実行時のメリットは主に2点あります。

事業譲渡のメリット①

1点目は、上述のように特定の事業を指定し売却できる点です。継続事業を選択し、将来性に乏しい等の特定事業をピックアップし事業譲渡することができます。法人に会社に多額の負債がある場合は、当面の運営に必要な資金分を確保するために一部事業だけ売却して現金化し、それを継続したい事業に対し再投資することも可能です。

事業譲渡のメリット②

2点目は、会社に大きな負債があっても譲渡先が見つけやすい点です。
会社全体を売却する株式譲渡では負債も引き継ぐことになるため、譲受先がリスクを勘案し価格の引き下げ、買収断念する場合があります。事業譲渡では売りたい事業のみを切り出して譲渡することで、非承継対象資産を手元に残すことができます。事業譲渡は譲受先が見つかるもしくは見つけやすい事業のみ譲渡することができるため、株式譲渡では売却のハードルが高いとされる状態でも、事業譲渡であれば譲渡できるというケースは多数あります。

事業譲渡のデメリット

一方で、事業譲渡実行時のデメリットもあります。

事業譲渡のデメリット①

1点目は、株式譲渡と比較すると、案件成約までに時間がかかる場合があります。要因としては債務・従業員・取引先・業務提携先等の事業に関わる全契約に、相手方の同意を得た上で、再度契約を締結しなおす必要があるため、契約数に比例して時間がかかります。

事業譲渡のデメリット②

2点目は、売却益に法人税がかかる点です。事業譲渡により、譲渡代金を得た場合には、法人税、住民税等の税金がかかります。その点では、事業譲渡は株式譲渡と比較すると税負担が重くなる場合が多くあります。例外的に、譲渡側に多額の繰越欠損金がある発生している場合や、創業者・取締役の退職金を損金計上できる場合があります。

会社分割のメリット

会社分割を用いることによるメリットは2点あります。

会社分割のメリット①

1点目は、対象事業の契約を維持したまま承継できる点です。会社分割を利用すると、一部許認可は承継できませんが、多くの場合、届出を提出するだけで承継可能です。そのため、一から許認可を申請しなければいけないようなものは少なく、契約の締結しなおしや許認可の再取得といった作業の負担を減らすことができるケースがあります。

会社分割のメリット②

2点目は、実行に従業員の同意は不要という点です。元の会社に残るか、新設会社に行くのか、いずれにしても従業員はどちらかで雇用されるため同意取得は不要です。ただし従業員が今まで従事していた事業と異なる事業へ所属させられた際には、異議申し立てが可能です。従業員の同意が必要ない分、分割前と異なる事業部へ所属させてしまうと異議申し立てをされるリスクがあることを認識しながら手続きを進めていく必要があります。

会社分割のデメリット

会社分割実行時のデメリットは主に2点です。

会社分割のデメリット①

1点目は、実行に際して株主の3分の2以上の同意が必要となる点です。つまり、株主総会の開催が必須となります。また特別決議に該当するので、それを可決する必要があります。直接事業に携わっていない株主がいる場合には、会社分割の理由を事前に説明しておかなければ、株主総会での承認を得られず案件実行できないリスクがあります。

会社分割のデメリット②

2点目は、税務上の取り扱いの煩雑さです。会社分割として税制適格なのか非適格なのかという判定があります。会社分割が税制適格であれば税制上のメリットを享受できるため、、税制適格で行得るかどうかを検討しなければなりません。税制適格かどうかの判定も含めて、専門知識が必要になる上、実際の課税が発生した場合の財務処理も煩雑になるため、適切な専門家の支援を仰ぐと良いでしょう。

事業譲渡と会社分割の違いまとめ

「事業譲渡」「会社分割」ともに事業の一部分を切りだして引継ぎを実行するという部分では同じ効果が得られます。しかし、スキームが分かれていることからそれぞれには違いがあります。

「事業譲渡」「会社分割」の、メリット、デメリット、スキームの違いに関して解説しました。それぞれ債券の取り扱いや税務の処理が異なるので、自社の状況に合った方法を選ぶようにしましょう。

それぞれにメリットやデメリットあるので会社の状況に合わせて、都度適切なスキームを選択する必要があります。売り手の場合だと、会社売却の経験など少ないためアドバイザーに依頼し、スキームをともに検討する選択肢もあります。

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2022/07/30
急増中でカオス!「M&Aプラットフォーム」3つの確認ポイント | 幻冬舎ゴールドオンライン

事業承継の選択肢のひとつ「M&A」。新型コロナウイルス感染拡大による不況下において、市場はむしろ活発化しており、広く注目を集めている。本記事では、事業承継サポートに取り組む、株式会社ビジネスマーケット・代表取締役社長の表一剛氏が、近年サービスを提供する企業が増加している「M&Aプラットフォーム」について解説する。

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秋田銀行、ブティックスとM&A分野で提携

秋田銀行は介護業界の仲介ビジネスなどを手掛けるブティックスとM&A(合併・買収)の分野で業務提携した。双方のノウハウを生かし、秋田銀は地域の取引先企業の事業承継やM&Aを通じた後継者問題の解決に取り組んでいく。ブティックスは2

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従業員にバトン(1)東京商工会議所中小企業相談部課長 山本格氏

「事業承継」と聞くと、創業社長の子供や親戚など一族の誰かが経営を引き継ぐイメージが強いと思います。東京商工会議所の中小企業相談部ビジネスサポートデスクにも、年間800社ほどから事業承継に関する相談が寄せられますが、そのうち6割ほどが親族承継です。ただ、実は従業員が事業を承継するケースも少なくありません。相談の2~3割を占めています。M&A(合併・買収)による第三者承継は1~2割です。以前、社員

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