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M&A(エムアンドエー)とは?実行の流れと利害関係者・手法別のメリット・デメリットを徹底解説
M&A(エムアンドエー)とは?実行の流れと利害関係者・手法別のメリット・デメリットを徹底解説

はじめに

後継者不足の解決や事業上のシナジー効果により事業拡大に寄与するM&Aは、近年注目を集めています。M&Aを進めるための手続きや流れに手法(事業譲渡、株式譲渡、会社分割、第三者割当増資)についても理解を深めておくことで、それぞれのケースに応じて最適な方法を検討することができます。また、M&Aを行う際は、買い手と売り手がメリット・デメリットを検討し実行していきますが、その他の利害関係者(取引先、士業、金融機関)への影響も重要な判断材料となります。今回はM&Aの流れや手法、利害関係者のメリット・デメリットをご紹介をいたします。

M&A(エムアンドエー)とは

Merger(合併)and Acquisitions(買収)の略で、企業の合併、買収を意味します。M&Aの基本的な流れは、M&Aの検討、条件交渉、経営者同士の面談など様々なプロセスがあります。取引をスムーズに進めるための各段階におけるポイントを含めて解説します。

M&Aの具体的な流れは以下の通りです。

  1. プレディール:M&Aの検討
  2. オリジネーション:資料の準備/案件化
  3. マッチング:相手先探し/秘密保持契約の締結
  4. エグゼキューション:経営者同士の面談/M&Aの条件交渉/基本合意の締結/デューデリジェンス/最終契約の締結

M&Aの流れ

各プロセスでの手続きの内容やポイントについて解説します。

プレディール

M&Aの検討

M&Aは、あくまでも経営戦略の実現のためのひとつの手段です。会社の将来や事業目標を達成するために、M&Aという選択がベストなのかどうかを検討しましょう。目標達成のためにM&Aを選択するか否かを多角的に検討することで、M&Aという手段が目的化することを未然に防ぐことができます。M&Aを検討する段階では、顧問税理士やメインバンクなど外部の専門家に相談することもあります。外部に相談することで他社の例などを参考に、売却(買収)価格の目安やメリットを検討することができます。

M&Aの相談

M&Aを進めるためには、会社の財務や税務などに関する専門的な知識が求められます。相手企業との交渉や手続きにも時間や労力を要しますが、忙しい経営者が経営の片手間でM&Aの取引を進めることは容易ではありません。自社で実行できない場合は、M&Aの検討段階から、外部の専門家に相談し、委託契約を締結することが望ましいでしょう。専門家の代表的なものとしてはフィナンシャルアドバイザーやM&A仲介会社などがあります。

オリジネーション

交渉相手の選定

買い手候補先企業の探し方は大別すると3つの方法があります。それは①自分のネットワークで探す、②M&Aプラットフォームで探す、③M&A専門家を活用する、です。

自分のネットワークで探すことで相手が見つかればよいのですが、通常は②か③の方法を採用することになります。その場合、買い手候補先企業への初期的な情報開示はノンネームシートで行われることが一般的です。

交渉相手へのアプローチ

「ノンネームシート」を作成します。

ノンネームシートとは、自社の業種や本社所在地、事業規模、業績推移、売却理由、売却希望価格などの企業概要を企業名を伏せて記載した書面です。&A専門家に依頼をすれば無料で作成してもらえるケースがほとんどですので、初めてM&Aに取り組まれる方はM&A専門家に依頼をしてみるとよいでしょう。

マッチング

秘密保持契約の締結

買収を検討する企業からノンネームより詳細な情報を求められた場合には、秘密保持契約(NDA、CA)を締結します。M&Aの取引は自社の従業員や取引先、金融機関などの利害関係者に大きな影響を及ぼします。M&Aは秘密保持にはじまり、秘密保持に終わると言われますが、秘密保持契約を締結の上、M&Aの一連のやり取りが完結するまでは情報の開示先はたとえ社内であっても最低限に留めることを心がけましょう。

エグゼキューション

経営者同士の面談

秘密保持契約書を締結し、双方の社名や会社情報等を開示した上で、されにM&Aの検討を進めたいという際には、経営者同士のトップ面談が行われます。1回のみの場合もありますし、複数回行なわれる場合もあります。特に中小企業の場合には、経営における経営者の影響度が大きいため、トップ面談を行う中で双方の会社運営の考え方、経営理念、企業カルチャーなどについて認識や理解を深めることも重要なポイントになります。トップの間で信頼関係を醸成し、双方が納得行くまで会談を行うことが後続のM&A取引を進める上でも重要です。

M&Aの条件交渉

条件交渉の段階では具体的に以下のことを決定します。

  • 買収価格
  • 経営者・役員・従業員の処遇
  • M&Aの方法やスキーム
  • 最終契約締結までの流れ
  • 守秘義務

交渉段階ではこのような詳細事項を決定し、次のステップである基本合意の締結に向けて動き出します。一般的には買い手企業の側から希望する買収価格やスケジュール、M&Aの方法などが提示され、譲渡企業が合意するという流れで進みます。

基本合意の締結

交渉段階で詳細事項について合意形成ができたら、双方の間で基本合意書が締結されます。基本合意書には法的拘束力があるものと、そうでないものがあります。仮に、法的拘束力がない場合でも無碍にしていいというものではなく、M&Aの成約に向けての意思表明となる重要なプロセスです。一般的に記載される事項は以下の通りです。

上記の中でも独占交渉権の付与は買い手企業に、M&Aにかかる一定期間の独占的な交渉権を与えるものになりますので検討状況によっては他の買い手候補先企業にお断りをいれるなど契約違反とならないように注意が必要です。

デューデリジェンス

基本合意書を締結したらデューデリジェンスに進みます。デューデリジェンスとは買い手企業が売り手企業の財務、法務、税務などを調査し、訴訟の可能性や簿外債務がないかをチェックする手続きです。簡潔に言えば、売り手企業のリスクや問題点の洗い出しということです。

デューデリジェンスを怠ると買収後にトラブルに発生する可能性があるので、買い手企業が確認をしたい各分野の専門家が行うことになります。例えば財務や税務であれば、会計士や税理士が、法務であれば弁護士が行う形になります。

最終契約の締結

デューデリジェンスの結果、買収に問題がないと判明すれば最終契約を締結します。その後然るべき手続等を行い、M&Aをクロージングします。最終契約書の締結日と、譲渡代金の払込日は同日のケースもあれば、別日にずれるケースもあります。株式や事業の権利の移転にあたっては取締役会や株主総会の同意が必要となることもあります。

最終契約書には主に以下の内容が盛り込まれます。

  • 買収価格
  • 譲渡する対象物
  • 誓約事項
  • 表明保証クロージングの前提条件

取り引き先や、従業員はそのまま引き継がれるケースは多いのでご安心ください。

M&Aにおける利害関係者別メリット・デメリット

M&Aを行う場合の買い手と売り手、その他利害関係者にとってメリット・デメリットについてご紹介していきます。M&Aの主な利害関係を整理すると以下の通り、買い手・売り手・取引先・顧問先(会計事務所、税理士事務所等)・金融機関という人たちがいます。

買い手

買い手のメリット

時間と労力を買える、シナジーや節税効果の可能性

M&Aを行うにあたって、多くの買い手に当てはまるメリットは時間と労力を買うことができる点です。通常事業を拡大する、新規事業を立ち上げるためにマーケティング、技術開発、従業員の教育などで多くの時間が必要になります。M&Aを実行することによりすでに完成している状態の事業や企業を買収できるので、時間の短縮が可能です。

現行の事業と買収企業とのシナジー効果や、買収企業に繰越欠損金がある場合には節税効果を図れる可能性があることなどもメリットといえます。

買い手のデメリット

資金投入にリスクを負う

M&Aで企業の譲り受けるには相応の資金が必要です。特に規模の大きな企業や評価の高い企業の譲り受けほどその傾向は顕著ですが、中小企業であっても予想以上の評価額がつくケースもあります。

そのため買収資金と買収後の想定パフォーマンスの比較、想定パフォーマンスを実現できる確率についてはよく検討する必要があります。上場企業のケースでも大型M&Aによって負債が膨らみ、本社ビルなどの資産売却を迫られる事例も見受けられます。

売り手

売り手のメリット

後継者問題の解決、売却代金の獲得と個人保証の解消

M&Aによって、業績が良く意欲も高い企業に事業や会社を譲渡することで、後継者不足の問題の解消につながります。市場環境が不透明な中、最近は無理に家業を継がせて我が子に苦労をさせたくないという考え方をもつオーナーも増えている状況です。実子や親族による承継が減っており、M&Aは事業承継問題の課題解決の手段となっております。

また、売却代金の獲得と負債の引継ぎによる個人保証などの解消についても大きなメリットと考えられます。M&Aによるハッピーリタイアメントに向けて経営者利益の獲得ができることは見逃せません。

売り手のデメリット

対応に心理的・実務的なコストを要する

M&Aにおいて売り手のデメリットとしては、対応にコストがかかること、コストをかけたといって必ず希望価格で売れることは保証されていないことがあげられます。仲介会社等に依頼したとしても、価格や条件について折り合いがつかず、スムーズに買い手企業が見つからないケースは多々あります。成約まで平均的には早くても半年、1年以上かかる場合も多くあり、その間の資料提出にかかる準備の時間や、交渉の中での心理的な負担など、M&売り手企業のオーナーに心理的・実務的なコストが発生します。

取引先

取引先のメリット

買い手・売り手:サービスの充実やコスト削減、販路の拡大

買い手・売り手双方の顧客にとって、M&Aを行うことで取引している企業の商品ラインナップが増加する場合や、生産ラインを統一したり仕入先を最適化したりすることでコストが削減できる可能性が存在します。販売網が強化できれば顧客が増える可能性に繋がります。また、売り手が主要な取引先にあたる場合、売り手の事業が存続することによりその後も継続して取引を行うことができる面もメリットといえます

取引先のデメリット

買い手・売り手:競合可能性や名称の刷新によるネガティブな影響

デメリットとしては、取引条件の変更や、買い手、売り手のどちらかともう一方の取引先が競合関係にある場合に取引が継続できなくなってしまう、また、売り手側の事業の一部が廃止になり、これまでと同じ商品やサービスが利用できなくなってしまうといったこともあります。

また商品の機能や性能は同じでも、M&Aによる統合によってブランド名や店舗名を刷新するというケースがあります。その場合、信頼関係を築いてきた顧客が違和感を抱くおそれもあります。

顧問先(会計事務所、税理士事務所等)

顧問先(会計事務所、税理士事務所等)のメリット

  • 買い手:顧問範囲の拡大
  • 売り手:アドバイザリー業務の受託

買い手側の顧問士業のメリットとしては、M&Aに伴う、会計及び税務のデューデリジェンス等を依頼される可能性があります。加えて、M&Aにより子会社や事業が増え、顧問範囲が広がる可能性があるでしょう。

売り手側の顧問士業のメリットとしては、顧問先をM&A仲介会社等に紹介することで、M&Aが成約した場合に手数料のフィーバックがもらえることがあげられます。また、顧問先のM&Aが成約すれば、顧問先の廃業リスクが減り、将来の事業継続可能性が高まり、顧問業のニーズも維持できる可能性があります。さらに、顧問先の廃業を防ぐためのM&Aの提案をしたことでオーナーから信頼を獲得することもあり、安定的な顧問業の継続に寄与することも考えられます。

顧問先(会計事務所、税理士事務所等)のデメリット

  • 買い手:作業や対応範囲の増加
  • 売り手:顧問先喪失リスク

買い手側の顧問士業のデメリットとしては、M&Aの検討フローの一貫として、買収対象企業やその取引先に海外企業が入っているなどの理由で専門外の業務を依頼されるケースがあります。また、M&Aに伴う業務が依頼されることが多い場合は、通常の業務を逼迫する恐れがあります。

売り手側の顧問士業のデメリットとしては、顧問先のM&Aのニーズに正しく対応出来ない場合は、顧問先が知らぬ間に他社に買収されることで顧問業務が減少する点です。

逆に、顧問先のM&Aのニーズに正しく答えていくことで、オーナーの信頼を勝ち得たり、紹介手数料獲得したりするチャンスに繋がります。自社でM&A業務等に対応していない場合でも、M&A業務等に対応可能なパートナーや事業者と協業し、外部のリソースを上手く活用することで顧問先に対して適切なサービス提供を行なうことが解決手段の1つになります。

金融機関

金融機関のメリット

  • 買い手:融資機会、アドバイザリー業務の受託
  • 売り手:アドバイザリー業務の受託

買い手側の金融機関のメリットとしては、顧客がM&Aによる企業買収をしている場合ほとんどのケースで買い手は資金調達を検討しており、金融機関としては買収を検討する企業に対して融資を実行できる可能性があります。また売り手側の金融機関のメリットとして、売り手の企業が金融機関の融資を返せないまま廃業する可能性がある場合、優良な買い手企業に買収される選択肢を選んでもらうことで貸し倒れを防ぐこがのできる有効な手段です。

また買い手側、売り手側問わずM&Aを行う企業に対し、金融機関がアドバイザーとして関われば、M&Aアドバイザリーの手数料を受け取れます。

金融機関のデメリット

買い手・売り手:顧客の借り換えリスク

買い手側の金融機関のデメリットとしては、M&Aによる資金ニーズ等に答えられない場合は、他行に借り換えをされてしまう可能性があることです。

買い手が検討しているM&A案件の買収資金の融資検討の際に、メインバンクは融資不可、サブバンクは融資可能という判断となる場合があります。その場合、買い手が買収資金の融資と含めてその他の現状の借入についても借り換えを依頼するケースもあるようです。

売り手の金融機関のデメリットとしては、融資先がM&Aによって売却された場合、買い手の事情で買収後に借り換えをされてしまう可能性も出てくることがあげられます。

M&Aにおける各手法別メリット・デメリット

ここからはM&Aを行うにあたっての各手法についてとメリットとメリットについてご紹介していきます。M&Aの主な手法を整理すると以下の通りとなります。

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手が株式を売却し買い手がその対価で現金を渡し経営権を得る手法でM&Aの中で最も活用されています。

株式譲渡のメリット

  • 買い手:シンプルなプロセスでの支配権の獲得
  • 売り手:被買収企業がある程度独立性を保てる

株式の譲渡による経営権の譲渡であるため、株主(≒経営陣)のみが変化し、会社内の資産や組織構造には変化がないことが買い手と売り手に選択されやすい特徴です。買い手のメリットは他の手法と比較して、主な手続きが取締役会の決議のみであることなど比較的プロセスが簡単であることです。また売り手にとってもメリットは債権者保護手続きが不要になるなど会社法の手続きが比較的簡便である点や買収後も被買収企業の独立性が維持しやすい点があります。

株式譲渡のデメリット

  • 買い手:必要のない資産や、異なる企業文化の受け入れ
  • 売り手:経営判断に関与できなくなる

株式譲渡の買い手のデメリットは買収した会社が抱えている負債や事業に関して、必要のない資産を引き受けるリスクがある点があります。また、異なる企業文化の企業が買収後も存続するため、シナジー効果の発揮や融合がスムーズに進まない可能性もあります。

また、売り手のデメリットとしては、株式譲渡後は経営権が買い手側に移ることで経営判断には基本的には関与できなくなる点が大きなデメリットとしてあげられます。

事業譲渡

事業譲渡とは、特定の事業に使用する資産、負債を一体として譲渡する手法です。譲渡対象資産としては、特定の事業に紐付くような、在庫や不動産といった有形資産だけでなく、ソフトウェアのような無形資産、ノウハウや特定の人材、技術、契約なども譲渡対象となりえます。

M&Aではよく利用される手法ですが、特に株式譲渡との比較で、特定の資産のみを取得したい場合に利用されます。

事業譲渡のメリット

  • 買い手:譲受範囲を選択できる
  • 売り手:譲渡範囲の選択と集中が可能

買い手にとっては特定の資産のみを取得したい場合に利用されます。必要な資産だけを買収できるため、買収コストを抑えることができる点や、不要な資産や簿外債務を引き継ぐリスクがない点があります。売り手にとっては、譲渡対象の資産が少ないケースでは、会社法上の手続きが簡便である点や、事業の選択と集中として不要事業だけの売却が可能である点がメリットといえます。

事業譲渡のデメリット

買い手・売り手:手間とコストがかかる

買い手にとっては資産の引継ぎの際に他の手法と比較してコストがかかりやすい点がデメリットとしてあげられます。多数の資産の引継ぎを伴う場合、所有権の移転手続きが必要になる点や、従業員や取引先を承継する場合には契約の移転手続きが必要など手間と時間がかかります。また不動産の移転を伴う場合、不動産取得税や登録免許税などが発生します。資産の買収には消費税が課されるため、その分の資金も用意しなければなりません。

売り手のデメリットとしては譲渡の対象が一部事業である分、その後残る事業運営に影響が出る可能性があることがあげられます。

会社分割

会社分割は株式会社や合同会社などの権利義務の一部もしくは全部を別の会社に承継することです。会社分割には大きく分けて吸収分割と新設分割があります。吸収分割とは会社がその事業の権利義務の全部または一部を分割して他の会社に承継させる方法です。新設分割とは、会社がその事業の権利義務の全部または一部を分割して、新たに設立した会社に承継させる方法です。会社分割の特徴は、分割後の会社が消滅しない点にあります。

また、分割は、分社型分割、分割型分割に区分されます。吸収分割と新設分割との組み合わせで4区分の分割手法が存在します。分社型分割は「縦の分割」とも呼ばれ、孫会社を設立するようなイメージで、分割型分割は「横の分割」とも呼ばれ、兄弟会社を設立するイメージです。

会社分割のメリット

  • 買い手:買収に資金が必要にならないケースがある
  • 売り手:比較的手続きコストをかけずに選択と集中が可能

買い手のメリットとしては買収資金の準備が不要で、買収対価として新株を発行すれば可能であり、承継対価の支払いが柔軟である点が挙げられます。や、また買い手・売り手両社のメリットとして、分割契約では包括承継のため、事業譲渡との比較で契約の個々の移転手続きが不要という点で事業譲渡等よりも手続きコストが低くなることもありえます。また売り手にとっては、自社戦略にそぐわない事業など特定の事業のみ切り離すことができる点があげられます。

会社分割のデメリット

  • 買い手・売り手:実行に時間と手間を要する

まず買い手・売り手両者にとってデメリットは実行に時間がかかる点です。株式を対価として渡すため株式評価の必要があり、登記を含めた手続きに時間がかかります。

買い手のデメリットとしては事業全体を承継するため、事業に紐付く簿外債務を引き継ぐリスクがある点や、外部の事業を自社に取り込むため、システムなどの統合作業に労力を要する場合がある点があげられます。

売り手のデメリットは株主総会の決議にて3分の2以上の同意を得なければならない点であり時間と合わせて手間がかかる点にあります。また対価として受け取り株式の場合は、現金化が難しい点もあげられます。

第三者割当増資

第三者割当増資は対象企業(売り手)が株式を新規で発行し、資金の出し手(買い手)がその株式を引き受けることで、対象会社(売り手)は資金調達、資金の出し手(買い手)は株式を取得する手法です。株式を引き受ける資金の出し手にクライアントや取引先、付き合いがある金融機関、会社の役員など、会社の縁故者であることが多く、縁故募集とも言われましたが、最近では企業間のパートナーシップ構築の手法としてより柔軟に用いられるようになってきています。

第三者割当増資のメリット

  • 買い手:段階的な支配権の獲得
  • 売り手:財務基盤の強化

資金の出し手(買い手)のメリットとしては、段階的な支配権の獲得と資金供給による対象会社(売り手)との関係維持があげられます。資金の出し手(買い手)が対象会社の買収を考えている一方で、対象会社(売り手)にとって既存株主との資本関係が有益であり、資金の出し手(買い手)としても既存株主と対象会社の関係継続を望む状況かつ、対象会社(売り手)に資金ニーズがある場合、第三者割当増資に応じることが、段階的な支配権の獲得と対象会社と既存株主との関係維持につながります。

また対象会社(売り手)のメリットとしては、第三者割当増資の受け入れは資金を集めながら自己資本比率を改善できる特徴があり、財務基盤を強化できる点にあります。また、対象会社(売り手)は資金の出し手(買い手)を自ら選択できる点もメリットといえます。

第三者割当増資のデメリット

  • 買い手:早急な完全支配ができない
  • 売り手:資金の出し手(買い手)の影響力の増加

資金の出し手(買い手)のデメリットに原則として100%の株式取得はできないことがあげられます。

対象会社(売り手)のデメリットとしては、第三者割当増資により資金の出し手(買い手)は対象会社(売り手)の株主になるため、関係悪化時、資金の出し手(買い手)の影響力が対象会社(売り手)にとってネガティブに作用する可能性がある点があります。また、第三者割当増資を行うことは既存株主の保有株価値の希薄化につながります。既存株主に対して第三者割当増資の目的を適切に説明しなければ、株主からネガティブなイメージを持たれてしまうリスクもあります。

おわりに

ここまでM&Aの流れや利害関係者・手法別のメリット・デメリットついて解説しましたが、実際にM&Aを実行するためには少なくとも半年以上がかかり、長いと年単位の取り組みになることも少なくありません。準備が遅れて適切なM&Aの取引のチャンスを逃してしまうことも多くあります。買い手・売り手に係る多くの関係者に大きな影響が発生します。当事者になる前段階で、自身の立ち位置にどのような影響が出るか事前に抑えておけるかが、いざというとき判断を誤らない為の重要な要素になるといえます。また、手法について複数ご紹介しましたが、状況に応じてそれぞれのケースを検討できることが大切です。そのためには事前に知識をつけておくことや、詳細な部分については都度適切な専門家に相談することが、M&A検討にあたっての重要なポイントであるといえます。M&Aを検討する必要が出てきた場合には、早めの段階からM&A専門家に相談し、M&Aの準備に取り掛かりましょう。

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なぜ、M&Aに失敗したと感じる企業が絶えないのでしょうか? 筆者らが分析したところ、失敗の多くがビジネスデューデリジェンス(以下、ビジネスDD)に起因していることがわかりました。実は、そもそもビジネスDDを実施していない会社も珍しくありません。ビジネスDDを行わずに企業を買収することは、事業の中身(事業内容の現状、問題点、強みなど)を知らないまま購入するということ。未実施のまま買収すれば、効率的な運営ができず、効果が上がらないのも頷けます。ここでは事業の中身を知るために欠かせない手順の1つ、「経営分析」について見ていきましょう。

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経営者保証に関するガイドラインとは? 経営者保証なしでも、中小企業が融資を受けられる道
経営者保証に関するガイドラインとは? 経営者保証なしでも、中小企業が融資を受けられる道

はじめに

中小企業などが銀行などの金融機関から借入を受ける時、融資条件の一つとして、経営者が連帯保証人となる「経営者保証」を契約することがあります。しかし、この経営者保証が、経営者の負担になる場合があります。2013年2月から適用されている「経営者保証に関するガイドライン」には、経営者保証なしでも、中小企業が融資を受けられる道が示されています。そこでこの記事では、経営者保証に関するガイドラインが必要となった背景につと経営者保証の活用状況について解説していきます。

経営者保証とは何か

経営者保証とは、大企業と比較して信用力に劣る企業が資金を調達する際に、「経営者個人が会社の連帯保証人となること」を言います。経営者個人は、「保証債務」を追うことになり、万が一、企業が倒産して融資の返済ができなくなった場合は、経営者個人が企業に代わって負債の返済を求められます。

経営者保証という制度は、従来、経営への規律付けや資金調達の円滑化に寄与すると言われてきました。会社の負債を経営者が保証することで、経営者が会社のために経済活動を行うインセンティブが与えられ規律づけられるため、特に中小企業のガバナンスの一環として、経営者保証は一定の役割を担ってきました。また、会社だけでは資金調達が困難であっても、経営者個人が連帯保証人になることで、貸し手側の金融機関が安心して資金を提供でき、会社の資金調達がより簡単になるという側面もあり、経営者保証による資金調達は、特に中小企業において盛んに行われてきました。

経営者保証の課題
こうした背景もあり、特に中小企業において経営者保証は会社の資金調達活動を補う制度として積極的な役割を担ってきました。しかし、近年では、経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生、円滑な事業承継を妨げる要因になっていると指摘されるようになっています。資金を調達する場合、通常、事業計画書を提出しなければなりませんが、必ずしも、経営は計画通りにいくとは限りません。むしろ、計画通りに事業が進まないケースの方が多いでしょう。その場合、経営者は思い切った事業展開や不採算事業からの早期撤退・事業再生などを行うことが求められますが、事業計画書に記載されている事項に基づいて資金が調達されているため、この計画書にそぐわない事業展開などは、貸し手である金融機関からはあまり良い評価を受けません。契約次第では、資金の引き上げが行われるケースもあるため、経営者保証による資金調達は、経営者の機動的な経営判断を阻害していると指摘されるようになったのです。

なぜ「経営者保証に関するガイドライン」が制定されたのか?

これらの経営者保証の課題を解決するための策として、全国銀行協会と日本商工会議所が「経営者保証に関するガイドライン」を策定し、2013年12月5日公表に公表して、2014年2月1日適用されることになりました。また、この適用を踏まえて、金融機関と中小企業者の双方の取組みを促進するために、日本政府として「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」(2019年5月)を実施するに至っています。つまり、経営者保証の課題を解決するために、様々な機関がすでに動き出しているのです。

「経営者保証に関するガイドライン」の中身

経営者保証のガイドラインは、「中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」として位置付けられているものです。あくまでも自主的なルールなので、法的な拘束力はありません。しかし、経営者保証に欠かせない関係である「中小企業」、「経営者」、「金融機関」の三者が自発的にこのガイドラインを尊重し、遵守することが期待されています。経営者保証制度自体に関して、経営者保証を解除するかどうかの最終的な判断は、融資を行っている側の判断に基づくものなので、それぞれの金融機関の判断に委ねられます。

経営者保証に関するガイドラインは、経営者の個人保証について、

  1. 法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと
  2. 多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること
  3. 保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること

などを定めることで、前述の経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、早期事業再生等を応援する制度です。

このガイドラインの適用を受けると、(1)経営者保証なしで新規の融資を受けられる可能性があります。また、(2)すでに保証契約として結ばれている経営者保証を解除できる可能性があります。さらに、(3)債務整理をする場合は、一定の条件を満たすことで、自宅や生計費等の資産を残せる可能性があります。

「経営者保証に関するガイドライン」の活用状況

下記の図表1で示しているとおり、経営者保証に依存しない融資の割合は、経営者保証に関するガイドラインが適用されるようになって以降、増大しています。最新の令和2年度のデータでは、新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合が約27%となり、中小企業の約1/3が経営者保証に依存せずに融資を受けていることがわかります。

図表1: 新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合の推移

新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合の推移

出所: 金融庁(2021)「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績について

おわりに

経営者保証に関するガイドラインを活用すれば、中小企業は経営者保証なしで融資を受けられる可能性があります。また、もし万が一、保証債務の履行を求められる状況下となったとしても、保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除されるようになっているので、保証債務の履行者である経営者は、自宅や生計費等の資産を残せる可能性があります。経営者保証に関するガイドラインは、あくまでも自主的なガイドラインとして位置付けられているものの、すでに幅広く活用されている制度です。しかし、まだまだ認知度が高い制度ではないので、中小企業経営者の方は、資金調達の際に経営者ガイドラインの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

M&Aの基礎知識
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事業承継税制で納税免除…細かく定められた要件と注意点を解説
事業承継税制で納税免除…細かく定められた要件と注意点を解説 | 富裕層向け資産防衛メディア | 幻冬舎ゴールドオンライン

日本の後継者不足を解決すべく考案された事業承継税制は、後継者の納税資金不足を解決するありがたい特例です。しかし、この特例を受けるために満たすべき要件や、長期間の書類提出といった留意すべき点がいくつかあります。事業承継税制の活用に必要な諸項目についてみていきましょう。

M&Aニュース
2021/12/18