M&Aの基礎知識 2022/07/30

事業承継の種類について~違いや傾向、特長など詳しく解説~

事業承継の種類について~違いや傾向、特長など詳しく解説~
                    

経営者が事業承継を行なうとき、どのような後継者に会社・事業を譲るか、まずはその方法を模索せねばなりません。引継ぐ相手によって承継の中身が大きく変わってくるからです。また、譲る相手によって会社で働く従業員や取引先、株主や金融機関との関係も大きく影響を受けます。

今回は事業承継の種類について、種類の違いや傾向、それぞれが持つ特徴や利用上のメリット・デメリットを詳しく解説します。

事業承継の種類の違いや傾向について

事業承継の種類

事業承継の種類には承継する相手によって3つのタイプがあります。「親族内承継」、「従業員承継」、そして「第三者承継」です。そこでまず種類別に「会社・事業を誰に引継ぐのか」を定義します。

親族内承継

親族内承継とは、その会社・事業を経営者の親族(子息子女、配偶者、親戚等)にバトンタッチする承継方法です。経営者本人がよく知る人物に事業を引き継げるので、この方法は中小企業では昔から最も多く採用されてきました。

従業員承継

従業員承継とは、その会社に勤めている従業員の中から、会社の業務に精通して、さらに将来の経営者として期待できる人物を選んで事業承継する方法です。なお、従業員の範疇には経営者と直接姻戚関係のない役員・取締役も含まれます。

第三者承継

第三者承継とは、親族、従業員以外の第三者(法人・組織・個人)へ自分の会社・事業を承継させる方法をいいます。第三者へ事業承継する場合、M&Aで株式譲渡を伴いながら会社そのものを引継ぐことが多く、その他には事業の一部または全部を選んで事業譲渡する方法も使われます。

事業承継の傾向

かつては中小企業の事業承継の方法として親族内承継が大半でした。しかし、後継者となる経営者の子供数の減少、価値観の変化による職業の多様化などから親族内承継が難しくなっており、近年は親族内承継に代わり従業員承継や第三者承継が増える傾向にあります。

特にM&Aを通じた第三者承継は、いくつかの背景を理由に利用が顕著になってきています。その背景とは、高齢化を迎えた経営者がM&Aに対する価値観をポジティブに変化させたこと、中小企業専門のM&A仲介業者が増えてきたこと、国も事業引継支援センターを全国に作るなど積極的に支援態勢を整えてきたことなどです。これからは親族内承継に代わり、外部の会社や組織、個人などにM&Aで会社や事業を引継ぐ先がますます増えてくるものと考えられますし、国や公的機関も第三者承継の促進すべく後押ししています。

事業承継の種類、その特徴やメリットデメリット

次に事業承継の種類について、各々の特徴や利用上のメリットデメリットを解説します。

親族内承継

親族内承継は、その会社・事業を経営者の親族に引継ぐ承継方法です。経営者の常に身近にいて人間性も能力もよく知る人物を後継者にするので、他の承継方法に比べて引継ぎがスムーズに行えます。

さらに引継ぎにかかる準備期間を長く取れるので、長期的な後継者教育が可能です。経営者がまだ元気なうちから、後継予定者に直接、経営者としての心構えや覚悟も伝承できます。また事業承継のやり方として、経営者が保有する株式を後継者に贈与・相続の形で譲るので、株式や財産が分散せず、所有と経営の一体的な承継ができるのも、この承継方法のメリットです。

さらに他の承継方法に比べて、後継者が経営者の身内なので、従業員や取引先からの理解が得やすく、銀行等の金融機関からも支援を得やすい特徴があります。一方、親族内承継のデメリットとして、「後継者が経営者の期待するほどの経営に対する強い意欲を持っていない」、「経営者としての能力が不足している」という場合があります。これではせっかく親族に事業承継しても、途中で経営不振から会社を廃業・倒産させてしまうかもしれません。

さらに、経営者が親族に事業承継したくても、親族が会社を継ぐ意志がなかったり、すでに別の仕事に就いていて、会社を継ぐことを拒否したりするケースがあります。これだと後継者を他の方法で探すしか手はありません。

また、経営者が承継前に突然死亡した場合には、承継予定の親族とその他の親族との間で会社の資産や遺産をめぐって争いが起こる可能性もあります。その結果、経営者の残した株式が親族間に分散して相続されれば、後継者が会社の株式を全て所有する状態とはならず、他の親族株主に経営介入されるリスクを背負ってしまいます。これもまた親族内承継に係るデメリットといえるでしょう。

従業員承継

従業員承継は、会社に勤めている従業員の中から業務に精通して、さらに将来の経営者として期待できる人物を選んで事業承継する方法です。

また従業員承継にはパターンとして2通りあり、後継者に株式譲渡を行なって、会社の所有権ごと承継させる方法と、会社の株式は経営者が所有したまま、経営権のみ譲る方法があります。

後継者に株式譲渡を行なうときには、その従業員に株式を買い取るだけの資金力が必要ですし、経営権だけ譲っても譲られた従業員は経営者としてのマインドセットがなく、サラリーマン気分のまま、経営へのモチベーションが上がらない可能性もあります。いずれにしても、経営者が従業員の誰かを後継者とするなら、この買収資金の解決やモチベーションアップは避けて通ることができない課題です。特に、会社が長年堅調に事業運営を行ってきた場合、会社の中には多く内部留保があります。そういった会社の株式を譲渡すると際に、億単位の資金が必要になることもあり、後継者の従業員が買収資金をどのように調達するかが大きなハードルとなっています。実際に、従業員に引き継ぐ意思はあるものの、買収資金が工面できずに話が頓挫してしまうケースも数多くあります。

とはいえ、従業員承継にも多くの活用メリットがあります。

ひとつは親族に事業承継するのに比べ従業員の数は多いので、後継者の候補が多くなることです。承継対象の選択肢が増えるのは従業員承継のメリットといえるでしょう。

さらに、後継予定の従業員は経営者と同じ会社で働いているので、経営方針・事業内容・ノウハウ等に精通しており、従業員を経営者に選んでも企業文化がそのまま維持されやすいというメリットもあります。同じ会社の社員なので、親族同様、取引先や金融機関に理解されやすいのもメリットのひとつでしょう。

一方、従業員承継のデメリットとしては、上記に記載したとおり、後継者に指名された従業員が会社株式を買取りするための十分な資金を用意できるのかという問題があります。もし本人が資金を用意できなければ、たとえその社員が優秀でも承継は事実上困難です。

加えて、経営者が従業員を後継者に指名した場合、後継者の子息等・親族が反発して、承継後に社内で権力争いが起きるリスクがあります。現経営者には従業員への承継後、あるいは自分が死んだ後に、そのような内紛が起きないよう、株式の配分割合や親族への遺産の取扱いなどに関して細心の注意が必要です。

第三者承継

第三者承継は、親族、従業員以外の第三者(法人・個人)へ自分の会社・事業を承継させる方法です。外部の第三者へ自分の会社を承継させるには、株式譲渡を行なうのが通常ですが、そのほかに事業の一部または全部を、金銭等を対価として譲渡する方法もあります。第三者承継は、売却・譲渡相手が第三者なので、他の承継方法のような人間関係のしがらみにとらわれず株式譲渡や事業譲渡できる可能性が高いです。

第三者承継に関しては、M&Aで交渉や取引に仲介者や代理人が必要とされ、M&A仲介会社、FA(ファイナンシャルアドバイザリー)、弁護士や公認会計士等の専門家、金融機関等がその役割を担っています。第三者承継の一番のメリットは、親族内承継、従業員承継より、広範囲から最適な後継者を選べる点です。またその対象者は、会社・組織だけでなく、資金力のある個人まで広げられます。

一般的に、買収先は売り手より会社規模・財務体力もある先が多く、会社を譲渡することで売り手は会社や事業を安定させることが可能です。また、売り手経営者は会社をうまく売却できれば、創業者利益が得られるだけでなく、個人保証している会社の債務(借入金等)を、株式譲渡で買い手に債務ごと引き取ってもらうことで個人保証からも解放されます。

一方、第三者承継のデメリットとして、必ずしも売り手側の希望通りの買い手がうまく見つからないという点があります。そもそも第三者承継は、社風や企業文化の違う先に会社を買い取ってもらう行為なので、その困難さは容易に想像できます。適切な買い手があらわれない限り、第三者承継での引継ぎはできません。経営者は売り手買い手とも、第三者承継のデメリットを十分意識して、リスクが顕在化しないよう、相互に協力して慎重に手続きを進めていく必要があります。

事業承継の種類・まとめ

事業承継の種類について3つの方法を示し、それぞれの違いや傾向、特徴やメリットデメリットを解説しました。経営者は最終的にどの方法を選ぶにしても、まずは自社について客観視して、課題や問題点を整理・把握した上で選んだ承継方法を着実に進めていくことが重要です。

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M&Aにおけるトップ面談の位置づけと重要性を解説
M&Aにおけるトップ面談の位置づけと重要性を解説

はじめに

M&Aは企業間取引であるため、その成否は経営者同士の面談によって分かれることになります。買い手となる企業と売り手となる企業のトップである経営者同士が面談を行うことによって、お互いに相手企業のことが理解できるようになり、信頼関係を構築したうえで取引に臨めるようになります。この記事では、M&Aにおけるトップ面談の位置づけと重要性についてわかりやすく解説していきます。

M&Aにおけるトップ面談の位置づけ

M&Aにおいてトップ面談は重要な意味を持っています。トップ面談は企業経営者による「お見合い」によく例えられます。M&Aは2つ以上の会社が一緒になることを意味しますから、その運営のトップである経営者同士での面談は、結婚(M&A)前のお見合いに例えられることがあります。

トップ面談が行われるタイミングは、譲渡企業の決算書などに基づいて、まず書面で初期検討を行ったのち、譲受候補となっている企業が「前向きに検討を続けたい」と判断したタイミングで実施されるのが普通です。つまり、譲受候補となっている企業側が、まず決算書などから抽象的な情報を読み取り、そこで興味を持った譲受企業(経営者)がお見合いを申し込むわけです。1回目のトップ面談で企業文化や経営理念、事業内容を理解しきれなかった場合には、複数回実施されることも当然あります。まずは候補企業にアプローチした後、経営者同士の考え方を意見交換するトップ面談を複数回実施します。

譲受企業側がM&Aブック(またはオファー)を検討し、意思表示を提出した後、次のステップとして、譲渡企業の主要な経営陣および/または所有者と面談することになります。トップ面談では、財務の最新情報(およびその他の適切な最新情報)を提供し、譲受候補となる企業は譲渡企業と交流することができます。また、トップ面談では、施設の見学が含まれる場合もあります。

ここで、譲渡企業側は、譲受企業側が書面で関心を示すまでは、譲受候補となっている企業との面談に基本的に応じるべきではありません。売却を考えていない譲渡企業が、譲受を考えている企業から直接連絡を受けた場合でも、譲受を考えている企業が関心を示すまでは面談を控えるべきです。

トップ面談が重要な理由

トップ面談では、譲受企業側からは、譲渡企業の経営者に会社や事業への想い、理念などについて聞いても良いでしょう。具体的な財務状況や経営成績を聞くのは、トップ面談のタイミングではありません。お見合いでも、初対面のお見合い相手に「年収はいくらですか?」と聞くのは野暮でしょう。それと同じで、トップ面談では、むしろ、経営に対するビジョンや理念などの確認をする方が大切です。譲渡を希望する理由や、譲渡後の展望、希望について話を聞くのも良いと思います。

一方で、譲渡企業側からは、譲受企業の経営者に理念やビジョン、ミッション、今後の経営計画、事業に対する想いなどについて聞くのが良いでしょう。トップ面談の時には、企業に関する詳細情報をすでに得ていることが多いものの、実際にトップ面談を行うことで決算書の数字や企業情報などだけではわからないことがトップ面談で得られるはずです。

譲渡企業(またはその仲介者)は、譲受企業候補の経営者の様子を観察して、どの譲受企業候補に売却すれば事業の成功を継続できる可能性が高いか、事業を運営するのに適したスキルを持っているか、取引をまとめる能力があるかを見極めようとします。この際の基準は主観的なものであり、ほとんどの場合、高い評価額(買収額)が他のすべての考慮事項に優先する傾向にあるものの、時には、より直感的な「自分(自社)に合わないから他の人にしよう」という理由で取引を断るケースもあります。

ここでも、やはりお見合いと同じで、どんなに年収が高かったり、社会的な地位の高い職業について居たりしても、それだけで結婚を考えることはないのと同様に、もっと直感的で主観的な評価基準によって、譲受企業候補を見極める必要があります。

譲受企業は、譲渡企業側が他の譲受企業候補ともM&Aに関する話を進めている場合が多いことを忘れてはなりません。譲受企業候補の一つとして、譲渡企業側が自分を選んでくれることを当然だとは思わず、トップ面談において謙虚に譲渡企業の経営者と交渉に臨む必要があります。

結局のところ、M&Aにおいてトップ面談で最も重要なことは、相手企業との信頼関係の構築にあります。信頼関係の構築のためには、必ずしも買収金額(譲渡金額)だけが重要なわけではありません。むしろ、トップ面談においては、本当に相手企業が信頼できるかどうかを基本としながら、相手を見極めることが大切です。トップ面談では、お互いの経営者の人間性、経営理念、事業内容への理解を深め、信頼関係を構築することを重視すべきです。そのような場で、買収金額などの具体的な交渉を行おうとすると、一気に場が冷めてしまい、相手先からの不信感を招く可能性が高くなります。繰り返し説明しているように、トップ会談は、双方の企業のビジョンや運営方針、経営方針などを共有し、お互いの理解を深めるようにしましょう。

おわりに

M&Aにおいてトップ面談は、M&A成功を左右するほど重要です。トップ面談は、企業同士のお見合いであり、お互いの理解を深めることで、その後のM&Aの具体的な交渉をスムーズに進めるために行われます。具体的なM&Aの交渉はトップ面談後に行われるのが普通です。トップ面談で具体的な条件などを交渉してしまうと、その後のプロセスにいつまでもたどり着けなくなってしまうので注意が必要です。M&Aにおけるトップ面談の位置づけを正しく理解し、なぜトップ面談を行うのか、その理由をきちんと把握しておくことによって、M&Aをお互いの企業とって意義深いものにしていきましょう。

M&Aの基礎知識
2022/09/26
M&Aにおけるエグゼキュージョンとは何か?重要ポイント
M&Aにおけるエグゼキュージョンとは何か?重要ポイント

M&A取引のプロセスのなかでも、交渉からクロージングまでのプロセスを指す「エグゼキュージョン」は、買収対象となる企業の価値を確定するための重要なプロセスです。この記事では、M&Aにおけるエグゼキュージョンがどのような意味を持っているのか、解説していきます。

エグゼキュージョン

エグゼキュージョン(execution)とは、M&Aのプロセスのなかでも、買い手側が計画を実行するプロセスを指す言葉です。もともと、英語のexecutionという言葉は「(計画を)実行する」という意味を持っています。買い手側がM&Aに関して事前に決定した事項について、実行していくプロセス全体をエグゼキュージョンプロセスと言い、、買い手側が買収候補となる企業を決定した後に行われる交渉・デューデリジェンス・売買契約・買収のための資金調達戦略・買収の完了と統合の計画実行を指すケースが多いです。

なお、エグゼキュージョンという用語をよく利用するのは、M&A取引の成立をサポートするアドバイザーです。アドバイザーは、買い手の買収計画が上手くいくようにサポートを行います。

M&Aにおけるエグゼキュージョンプロセスを具体的に解説

M&Aは、主に以下の10個のプロセスによって成り立っています。

(1)買収戦略の策定

優れた買収戦略の策定は、買収者が買収によって何を得ることを期待しているのか、つまり対象企業を買収する事業目的は何か(製品ラインの拡大や新規市場への参入など)を明確に把握することを中心に行われます。

(2)M&Aの検索基準の設定

潜在的なターゲット企業を特定するための重要な基準を決定します(例:利益率、地理的位置、または顧客基盤など)。

(3)買収候補企業の検索

買収者は、特定した検索基準を使用して、買収候補企業を検索し、評価します。

(4)買収計画の開始

買収者は、検索基準を満たし、良い価値を提供すると思われる1社以上の企業と接触します。最初の会話の目的は、より多くの情報を入手し、ターゲット企業が合併または買収に対してどれくらい積極的であるかを確認することにあります。

(5)評価分析の実施

最初の接触と会話がうまくいったと仮定して、買収者はターゲット企業に、買収者がターゲットをさらに評価できるような実質的な情報(現在の財務状況など)を提供するよう求め、ビジネス単体として、また適切な買収ターゲットとして、評価します。

(6)交渉

買収者は、ターゲット企業の評価モデルをいくつか作成した後、合理的なオファーを構築するのに十分な情報を得る必要があります。

(7)M&Aデューデリジェンス

デューデリジェンスは、オファーが受諾された時点から開始される包括的なプロセスです。デューデリジェンスの目的は、対象会社の財務指標、資産・負債、顧客、人材などのあらゆる側面について詳細な調査と分析を行い、買収者の対象会社の価値評価を確認または修正することにあります。

(8)売買契約

デューデリジェンスが完了し、大きな問題や懸念がなければ、次のステップとして売買契約を締結し、資産購入か株式購入か、売買契約の種類を最終的に決定します。

(9)買収のための資金調達戦略

買収者は、もちろん、買収のための資金調達オプションを早期に検討しますが、資金調達の詳細は、通常、売買契約が締結された後にまとまっていきます。

(10)買収の完了と統合

 買収案件が完了し、買収先と買収企業の経営陣が協力して両社の統合プロセスに取り組みます。

このプロセスのうち、エグゼキュージョンプロセスは、(6)〜(10)を指します。

エグゼキュージョンの重要ポイント

M&Aにおいて、エグゼキュージョンは、要するに、買収対象となる企業の価値を決定するプロセスにほかなりません。買収対象となる企業の価値を決定するにあたっては、以下の2点が重要となります。それぞれについて説明していきましょう。

(1)価値の最適化

デューデリジェンス調査が完了し、その結果について評価を行った後、取引の成功に向けて最もエキサイティングなステップであるバインディング・オファー(売買契約)、そして取引の実行に移っていきます。

M&A取引プロセスにおいて、株式売買契約書(SPA)の作成、規制当局への取引に関する届出の提出、取引財務の作成、初日の準備など、多くの重要なステップが含まれています。取引の終了まであと少しと思われるかもしれませんが、実はその前に検討すべきこと、達成すべきことがまだまだたくさんあります。

M&Aの取引をうまく実行したい(エグゼキュート)したいのであれば、最終的に取引はより多くの価値、たとえば、適正な評価額や所有権を引き継いだ後の状態を、あらかじめしっかりと確定しておくことが大切です。

(2)売買契約書(SPA)

SPAの作成は、しばしば弁護士のための形式的なものとみなされます。SPAのプロセスの多くには、保証、保証、潜在的な紛争の解決などの法的側面が含まれているため、ある程度はその通りです。しかし、SPAには何よりもまず、取引の決済方法を定義する金融条件が含まれ、評価方法についての詳細が記載されます。売買契約書は、買主と売主を法的に拘束するものです。したがって、買収対象となる企業の価値を確定するために、どのような法的拘束力のある事項を実行しなければならないのかを明らかにしておかなければなりません。

おわりに

エグゼキュージョンは、M&Aプロセスのなかでも企業価値を確定するうえで重要となるプロセスです。エグゼキュージョンプロセスのなかには、専門性が求められる企業価値評価といったプロセスも含まれることから、M&Aのアドバイザリーサービス提供している事業者がエグゼキュージョンプロセスを代理してくれることもあります。エグゼキュージョンは、M&Aを行う目的によってその具体的なプロセスも変化するのが普通です。目的に応じて明確な計画を立案し、しっかりとエグゼキュートするように、M&Aプロセスを進めていくことが大切です。

M&Aの基礎知識
2022/09/26
M&Aにおけるアドバイザリー契約について解説
M&Aにおけるアドバイザリー契約について解説

はじめに

M&Aは完了までのプロセスで多くの専門的な知識を必要とします。そのため、自社だけでM&Aを完結させることはほぼ不可能であり、一般に、アドバイザリーサービスを提供している事業者と契約を結び、M&Aに関するアドバイスを受けながら進めていくことになります。この記事では、M&Aにおけるアドバイザリー契約の詳細について詳しく解説していきます。

M&Aにおけるアドバイザリー契約とは?

M&Aのプロセスは複雑で専門的であることから、M&Aの成約までのプロセスをサポートしてくれる事業者が多数存在しています。たとえば、米国では、JP Morgan、Goldman Sachs、Morgan Stanley、Credit Suisse、BofA/Merrill Lynch、Citigroupは一般的にM&Aアドバイザリーのリーダーとして認識されており、通常M&A案件数でも上位にランクインしている事業者です。こうした事業者にM&Aのサポートをしてもらう契約がアドバイザリー契約です。

アドバイザリー契約を結ぶのはM&Aアドバイザリー会社

M&Aアドバイザリー会社は、企業の買収、売却、再編を意図する他社に指導を行う会社のことです。個人のファイナンシャルアドバイザーが個人や中小企業に対してガイダンスを提供するように、M&Aアドバイザリー会社は、あらゆる種類の企業取引において企業の舵取りを支援し、多くの場合、デットファイナンスやエクイティファイナンスをサポートしてくれます。M&Aアドバイザリー会社は、具体的には、以下のようなサービスを提供しています。

  • 株式の発行や募集に関するアドバイスやガイダンスの提供
  • 新規証券発行のための引受業務
  • 個人向け投資助言サービスの提供
  • 企業の正確な評価額の算出
  • 売り手のために可能な限り高い価格を得る
  • 買い手候補への会社の紹介
  • 会社が時価以下で売却されることを防止します。
  • 売り手にとって最適な買い手を見つける
  • 買い手が資金を調達できないなどの不測の事態が発生した場合でも、確実に売却取引を完了させる。

多くのM&アドバイザリーA会社は、取引成立時に取引金額の一定割合を手数料として徴収しています。この手数料は、実施される取引の種類や取引規模によって異なります。また、一部のファームでは、パーセンテージフィーに加え、一律の手数料を課すケースもあります。

アドバイザリーサービスは様々なサービスがありますが、アドバイザリーサービスを受けられるのは買い手だけではありません。売り手も受けることができます。

(1)セルサイドM&A(売り手に対するアドバイザリーサービス)

売り手(ターゲット)のアドバイザーとしてM&Aファームが関与することをセルサイドという。

(2)バイサイドM&A(買い手に対するアドバイザリーサービス)

逆に、M&Aファームが買手(買収者)のアドバイザーとして活動することをバイサイド業務という。その他、ジョイントベンチャー、敵対的買収、バイアウト、買収防衛策などに関するアドバイスも行うこともあります。

M&Aにおけるアドバイザリー契約を結ぶことで得られるサービス

アドバイザリー契約をM&Aファームと締結すれば、以下のようなサービスを受けられます。

(1)M&Aデューデリジェンス

M&Aファームが買主(買収者)に買収のアドバイスをする場合、買収企業のリスクとエクスポージャーを最小限に抑えるために、買収対象の真の財務状況に焦点を当てたデューデリジェンスと呼ばれる作業を支援することもあります。

M&Aデューデリジェンスでは、対象企業の財務情報の収集、分析、解釈、過去と未来の業績の分析、潜在的なシナジーの評価、事業評価による機会や懸念事項の特定などが基本的に含まれています。徹底したデューデリジェンスは、リスクベースの調査分析や、買い手が取引を通じてリスクと利益を識別するのに役立つその他のインテリジェンスを提供することにより、成功の確率を高めます。

企業の売却を検討されている場合、あるいは事業領域の拡大のために他の企業を買収する場合、M&A専門のアドバイザリーサービスを利用することで取引結果を改善することが可能です。

M&Aアドバイザリーサービスは、財務状況を確認し、最終合意に向けた様々なステップを支援し、統合後の新会社のパフォーマンスを最適化するための戦略を策定するための重要なプロセスです。

(2)M&Aに対する包括的なアプローチ

通常、M&Aファームとのアドバイザリー契約は、企業が潜在的なターゲットを特定した後に結ばれ、M&A取引の完了をサポートするためにデューデリジェンスを実施します。しかし、M&Aアドバイザリーチームは、M&Aのライフサイクルを通じたパートナーとして、より多くのことを行うことができます。

M&Aプロセスの流れをよく理解しているM&Aアドバイザリー会社は、M&A取引で起こりがちなことについて事前にアドバイスを与えてくれます。経験豊富な企業幹部でさえ、M&Aプロセスの複雑さに驚かれることがよくありますが、信頼できるアドバイザーとして、対象企業をより深く理解し、デューデリジェンスのプロセス全体を管理し、適切な質問をし、データを正しく取得することを支援してくれます。M&Aアドバイザリー会社とアドバイザリー契約を締結すれば、デューデリジェンスや、法律事務所や専門家によるデューデリジェンスなど、取引のあらゆる側面の管理を支援してくれます。これにより、ビジネスの継続に集中し、将来に向けて戦略的に注力することができます。

(3)デューデリジェンス前の事前の調査

M&Aアドバイザリー会社は、通常、M&Aに関する契約書(LOI)が締結された後に参入します。しかし、アドバイザーは、LOIが締結される前から積極的な役割を果たすことも可能です。多数の現地訪問、マネジメントインタビュー、デリジェンス分析を通じて、ターゲットビジネスの運営方法、そのキーパーソンは誰か、その企業があなたのビジネスにどのように統合されるかを理解し、合意に至る手助けをすることができるのです。

(4)スムーズな移行のための統合計画

M&Aによって統合される会社はどのような姿になるのでしょうか。クロージング後の統合とシナジー効果を中断することなく、可能な限りシームレスに展開し、統合後の企業価値を最大化することを誰もが希望するものです。どのようなタイミングで統合しようとしても、本来やるべき事業を継続するために、事業の安定化に注力することが重要です。さらに、人材と文化に戦略的な注意を払い、人材の確保を図る必要があります。最初の100日間と安定化のための努力は取引の意図した価値を完全に実現するための基盤を作るものです。

統合計画の取り組みは、慎重に計画し、タイミングを計らなければなりません。契約締結とクロージングが同日に行われることもありますが、その場合は統合計画をその日に先駆けて完了させなければなりません。契約締結からクロージングまでに時間がかかる場合は、その間に計画を完成させることができます。プレ・プランニングは30~60日程度で完了するのが一般的ですが、大企業の統合にはもっと長い時間がかかる場合もあります。

準備にかかる時間はストレスになりますが、まず必要なことを戦略的に処理し、そこから二次的な計画を進めていけば、ストレスは少なくなります。こうした統合計画をサポートしてくれるのも、M&Aアドバイザリー会社の重要な役割の一つです。

(5)パフォーマンスの最適化

M&Aにおける統合プロセスの分析とパフォーマンスの最適化は、どちらもM&Aアドバイザーが支援できるサービスです。統合の際には、プロセス分析が計画の重要な構成要素となります。プロセスの分析では、ギャップや欠陥を明らかにし、特に技術や人材などの重要な検討事項について、将来の改善(シナジー)のためのロードマップを作成します。プロセス分析/改善とパフォーマンスの最適化は、統合された企業の新しいプロセスでより高い効率を推進するために、時間が経ってから統合後にも活用することができます。これは、人員の変更を最小限に抑えるために行われるため、M&Aによる統合後のパフォーマンスを最適化することができます。

おわりに

M&Aのプロセスは複雑で専門的な知識を求められるものです。また、手間がかかるプロセスも多いことから、通常、会社内のリソースだけを活用してM&Aのプロセスを完結させることは不可能です。そこで、M&Aに関するアドバイザリーサービスを提供しているM&Aアドバイザリー会社とアドバイザリー契約を結ぶことで、状況に応じて様々なサービスの提供を受けることができるようになります。M&Aにおいてどのようなサービスが必要であるかは、どのようなM&Aを行うか次第なので、M&Aの目的を明確にしたうえで、M&Aアドバイザリー会社に相談してみましょう。

M&Aの基礎知識
2022/09/26