M&Aの基礎知識 2022/07/30

コロナで経営不安となった企業のための、経営資金繰り支援策と自力再生以外の対策

コロナで経営不安となった企業のための、経営資金繰り支援策と自力再生以外の対策
                    

新型コロナウイルスの流行により、経営不安が深刻化して経営者は存続判断を迫られ、数多くの企業が資金繰りの対策を行っています。特に中・小事業者では、財務体質が大手企業と比較すると弱含みであることと、大手企業やそのグループ企業よりも信用力が乏しいことが影響し、金融機関からの新規調達借入が難しい状況となる場合があります。その故に、資金繰りが回らなくなり、廃業を選択する事業者も徐々に増加傾向にあります。政府としては、新型コロナウイルスの影響を受け、資金調達が困難な中・小企業の資金繰りを支援するため、特例として融資制度・信用保証制度の拡充を実施しています。また一方で、倒産や事業休止において自力での再建に不安を感じている経営者がとる方法のひとつが、事業承継です。事業承継を適切に行い、他の企業と連携を図ることで、自力再建では実現できなかった新しい道が拓けることがあります。このコラムでは、コロナ禍の経営不安で自力再生が厳しい経営者に向けた対策、事業承継について解説します。コロナにより先行き不安を感じておられる中小企業の経営者のみなさんに参考となれば幸いです。

コロナ関連倒産の現状

コロナウイルスの影響を受けての倒産は、2021年7月21日時点で発生累計が1788件となっています(帝国データバンク調べ)。コロナ関連倒産では、「破産整理」が1554件と発生件数全体の86%を占めているのが現状です。

とくに、テレワークや外出自粛に対応できない業種である飲食店や建設業、宿泊業の倒産は多くなっています。倒産に追い込まれた企業は、もともと経営状況が悪化している中で、コロナが決め手となるケースも少なくありません。さらに、飲食店や宿泊業の倒産は、食品卸や観光業への連鎖が避けられない状況です。

参照元:帝国データバンク https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html

コロナ経営

コロナ禍の経営不安の正体

コロナ禍で業績が悪化した企業の経営者は、以下のような不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

  • 取引先企業の影響を受けた“連鎖倒産”を避けられるだろうか。
  • 事業存続のために自力再生ができるだろうか。
  • 以前のように売上が戻ったとしても、コロナで受けた融資は自力で完済できるのだろうか。

いずれにしても、不確実性の高いコロナウイルスの流行は、先行き不透明感を生み、事業における中長期的な見通しをたてづらくなっています。その中で、足もとの売上も低迷し運転資金の工面さえままならない状態で、経営を続けていくのは経済的にも精神的にも大きな困難を伴います。

コロナ禍の経営不安への対処:売上減少が「見込まれる」場合に利用可能な融資制度

セーフティネット貸付

「セーフティネット貸付」は以前からある制度で、主に自然災害時に適用されていましたが、コロナ対応として利用条件の緩和が実施されています。

従来までは過去の実績等と比較して売上が減少した事実が必要となる、いわゆる売上減少要件がありましたがそれが緩和され、売上減少が「見込まれる」場合であれば利用することが出来るようになりました。

  • 利用対象:中小法人、個人事業主など
  • 売上条件:コロナの影響が見込まれる事業者であれば利用可(※実質無条件)
  • 金利:中小11% 個人1.86%(※基準金利)
  • 融資限度:中小事業2億 国民事業4,800万円
  • 据置期間:3年
  • 貸付期間:設備資金15年以内、運転資金8年以内
  • 担保・保証人:原則必要

対象期間の売上減少が「5%以上」で利用可能な融資制度

コロナの影響で売上減少が5%以上ある事業者は、以下3つの制度から支援を選択することが可能です

  • 新型コロナウイルス特別貸付
  • 商工中金による危機対応融資
  • 新型コロナウイルス対策マル経融資

ただし、②「商工中金による危機対応融資」は、これまでに商工中金と取引がない事業者は、商工中金の新規審査の基準等を勘案し、実質的に利用する事が難しい状況になっています。

③「新型コロナウイルス対策マル経融資」は商工会議所の経営指導員の指導を受ける必要があり、意思決定に時間を大幅に有することから、実際には利用者の大半が①「新型コロナウイルス特別貸付」を選択しているとのことです。そのため、今回は「新型コロナウイルス特別貸付」に関して記載致します。

新型コロナウイルス特別貸付

  • 利用対象:中小法人、個人事業主など
  • 売上条件:5%以上の売上減少(※個人事業主は条件無し)
  • 金利:当初3年間(金利21%~0.36% ※以降は基準金利適用)
  • 融資限度:6億円(利下げは2億円迄)
  • 据置期間5年
  • 貸付期間:設備投資20年以内、運転資金15年以内
  • 担保・保証人:原則無担保で利用可

コロナ対応の信用保証協会による信用保証

信用保証協会とは、信用保証協会法という法律に基づき、信用力の乏しい中小企業・小規模事業者の資金調達支援、資金繰り安定化のために設立された公的な信用保証機関です。保証協会は事業者が金融機関から資金を調達する際に、事業者への「信用保証」を通じて信用力を付与し資金調達のサポートを行います。信用保証協会による信用保証の主な特徴については以下の通りです。

  • 取引金融機関からのプロパー融資と保証付融資の併用により、融資枠の拡大を図れる
  • 多様なニーズに応じて利用できる保証制度を用意
  • 長期借入金に対応した保証制度を用意
  • 無担保で利用可能

コロナ対応として新たに信用保証の対象となったのは、「セーフティネット保証4号」、「セーフティネット保証5号」、「危機対応融資」の3種類です。

セーフティネット保証4号

突発的災害の発生した地域において、災害等に起因し売上高減少している中小企業者を支援するための制度です。現在は「令和2年新型コロナウイルス感染症」だけではなく、「令和2年7月豪雨による災害」「令和2年台風第14号に伴う災害」等が指定案件となっています。

対象事業者

指定地域で1年間以上事業を継続していること(※新型コロナウイルス関連については、全ての都道府県の「業歴3カ月以上」と期間減少されています。)

政府指定を受けた特定災害の発生により、最近1か月間の売上高又は販売数量等が前年同月に比して20%以上減少していること
その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること

保証限度額

普通保証:2億円以内 無担保保証:8,000万円以内
無担保・無保証人保証:2,000万円(※一般保証とは別枠で保証)

セーフティネット保証5号

全国的に「業況の悪化している業種」の中小企業者を支援するための措置ですが、長期化する新型コロナウイルスによる経済の低迷を受け、令和2年5月1日以降は原則全業種が指定対象となり対象範囲が拡大しています。信用保証協会の一般保証(2.8億円)とは別枠で、最大2.8億円の借入債務の80%について保証を受けることが可能です。

対象事業者

  • 指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年同期比5%以上減少の中小企業者
  • 指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上、上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者

保証限度額

セーフティネット保証4号と等しい条件

危機関連保証

新型コロナウイルスの影響によって、新たに全国・全業種の事業者を対象に設けられた追加保証枠が「危機関連保証」です。売上高が前年同月比15%以上減少する中小企業・小規模事業者に対して、セーフティネット保証とは別枠として2.8億円の借入債務の100%を保証します。

対象事業者

新型コロナウイルスに起因し、金融取引に支障を来しており(リスケの実施等)、金融取引の正常化を図るために資金調達を必要としていること。

原則として、最近1か月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少しており、且つ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれること。

保証限度額

普通保証:2億円以内 無担保保証:8,000万円以内
無担保・無保証人保証:2,000万円

(※一般保証・セーフティネット保証4号5号とは別枠で保証)

コロナ禍では、大多数の事業者の方が大幅な売上減少を経験しています。複数制度がある中で、実際にどの制度を利用するべきか過去の事業活動や、事業規模、現在の財務状況などを鑑み判断する必要があります。資金繰りが悪化傾向にある場合は、できる限り迅速に金融機関の窓口や専門家に相談しサポートを受けましょう。

参照資料

日本政策金融公庫経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)ページ:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/07_keieisien_m.html

全国信用保証協会連合会HP:https://www.zenshinhoren.or.jp/index.html

コロナ禍の経営不安への対処:事業承継

コロナウイルスの経営不安を回避する対策として、政府では世代交代の事業承継を推進しています。事業を引き継ぐ後継者がいれば税制上の優遇措置が受けられます。しかし、事業承継において、すでに後継者が決まっている企業は少ないのではないでしょうか。後継者不在の場合、親族内承継、従業員承継、第三者承継など幾つかの方法がありますが、親族内承継、従業員承継は人材の選定や資金の準備などに時間がかかることも多くあります。短期で検討できる処方箋という観点では、第三者承継を選択する必要があります。

参照元:帝国データバンク https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210605.html

コロナ禍の経営不安対処:第三者承継

第三者承継は、事業承継の方法の一つです。現状の企業経営者が後継者不在のため、第三者に経営権を譲る方法になります。
第三者承継は、次のような状況下において効果的です。

  • 後継者がいない
  • コロナによる収益獲得ができない
  • 金融機関からの資金調達ができない

事業承継や第三者承継には補助金も適用されるものもあります。

中小企業庁より令和2年度第3次補正予算「事業承継・引継ぎ補助金」の公募が開始されています。事業承継による補助金は400万円~800万円を上限とする規模です。

本補助金は“事業承継やM&A(事業再編・事業統合等。経営資源を引き継いで行う創業を含む。)を契機とした経営革新等(事業再構築、設備投資、販路開拓等)への挑戦に要する費用”とされており、事業承継やM&A(第三者承継)にかかる費用の一部を補助するものとなります。

参照元:中小企業庁 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2021/210702shoukei.html

第三者承継

第三者承継のメリット

  • 後継者問題から解放される
  • 旧社名を残して事業を継続できる
  • 買い手と売り手のシナジーが期待できる
  • 雇用の継続ができる
  • 取引先や仕入れ先との関係性を続けられる
  • 譲渡代金を受け取れる

後継者問題からの解放

後継者問題は、少子高齢化の進む我が国の大きな課題です。
子供がいない家庭はもちろん、なんらかの事情で子供に経営のバトンを渡せない状況など、親族内承継がスムーズに行えないケースも多くあります。事業承継において、第三者承継の取り組みは今後ますます標準化していくでしょう。
経営に第三者的視点がはいることなど、副次的メリットも大きいです。

旧社名を残した事業継続

事業承継後も旧社名を残した事業継続が可能な場合もあります。
コロナの影響がなければ経営が順調だった企業の場合は、旧社名を残した承継では、取引先や仕入れ先の信用につながることが考えられます。事業自体がまったく新しい発想となる場合は、旧社名を残さないケースもあるでしょう。
社名に関しては、事業状況により判断が左右されます。

買い手と売り手のシナジー効果

買い手が売り手の事業を引き継ぐことで、買い手が既存に持っていた事業や経営資源と、売り手から引き継いだ事業やノウハウ・経営資源を組み合わせることで相乗(シナジー)効果が発生することが考えられます。シナジー効果は、売り手・買い手双方の事業にプラスになることが多く、事業の停滞によって引き継ぎを決めた売り手の事業が、シナジー効果によって再生する事例などもあります。
事業承継先を選ぶ際のポイントとしてシナジー効果は重要です。

雇用継続

事業承継をせずに廃業を選択した場合、雇用している従業員は原則解雇となります。事業承継で事業や会社を残すことを選択した場合には、買い手の方針にもよりますが、従業員の雇用を継続できる可能性が拓けます。通例、事業承継をした買い手も、引き継ぎ後の事業を滞りなく運営するために従業員を継続雇用するケースが多く見られます。

取引先や仕入れ先との取引継続

売り手の取引先や仕入先は重要な経営資源になりますので、事業承継の際には、取引先や仕入れ先との取引継続を買い手から望まれることが多いです。事業継続により、従来の取引を継続できれば連鎖倒産の防止にも役立つでしょう。

譲渡代金

事業の売り手経営者には、会社(株式)や事業の譲渡代金が入ります。その他、退職金等が支給される場合もあります。
株式譲渡代金や退職金等は税制の観点からも役員報酬や給与所得より優遇されていますので、ある程度まとまった資金を手元に残すことができる可能性は高まります。

まとめ:経営資金繰り支援策と自力再生以外の対策

コロナ前と同様の経営においては、急激な環境変化に伴う一時的な手当てができたとしても、負債の増加など、経営に対する悪影響は免れません。中長期的に考えれば尚更のことです。見通しのつかない不安もある中で、環境変化への対応を実行しなければいけません。

独立独歩での事業回復以外の選択肢として、第三者承継を活用した事業承継も有用な選択肢の1つとなりえます。事業上の相乗効果や、資本力や経営資源の豊かな企業とタッグを組んで業績の回復や再成長を志向するのもアフターコロナの新しい手法と言えるでしょう。この記事で紹介した事業承継のメリットと一致する部分があれば、ぜひ前向きに検討してみることをおすすめします。

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事業譲渡における譲渡元企業の会計処理の基本的な考え方/仕訳方法を解説
事業譲渡における譲渡元企業の会計処理の基本的な考え方/仕訳方法を解説

はじめに

事業譲渡とは、企業を構成する事業を他の企業に移転することを言います。事業譲渡では、必ずしも会社のすべての事業が譲渡されるわけではなく、一部のみのケースも存在し、会社法の規定に則って手続きが進められます。事業譲渡を行うには買い手企業を探し、事業範囲を決定しなければなりません。

事業譲渡は、まず、買い手企業(譲渡先)探しから始まります。事業譲渡の範囲や概要の条件を相手に提示してもらいます。この際に、買収価格や資産・負債の受け継ぎなどについても提示してもらい、意向表明書として相手から示されることになります。

この記事では、事業譲渡における事業を譲り渡す側(譲渡元)においてどのような会計処理が行われるのか、その基本的な考え方と仕訳方法をわかりやすく解説していきます。

事業譲渡における会計処理の基本的な考え方

事業譲渡は、会計の世界では「事業分離」と呼ばれます。ですが、今回はわかりやすくするために、事業譲渡と呼んでいきましょう。

事業譲渡は、ある企業の事業の一部を他の企業に移転することを言うと会計基準において定義されています。事業を譲渡する場合、事業の移転先がどのような会社であるかによって、会計処理の仕方が異なります。つまり、仕訳も異なるということです。

インターネット上の多くの記事では、事業の移転先が子会社でも関連会社でもないケース(すなわち、投資を精算するケース)を取り扱っていて、会計処理の仕訳方法を完全には説明していません。しかし、実際には、移転先がどのような会社かによって会計処理の仕方が異なるので注意が必要です。

事業譲渡が行われた際に譲渡元企業が適用すべき会計処理は、譲渡元企業からみて移転した事業に対する投資が継続しているか、それとも投資が精算されているかに基づいて決定されます。

もし、投資が継続している場合には、“投資を精算した”とは考えないので、譲渡元企業に損益は発生しません。つまり、投資が継続していれば、譲渡元企業に損益が発生しない簿価承継によって事業は譲渡されることになります。

一方で、投資が精算されている場合には、“投資が継続していない”と考えるので、譲渡元企業に損益が発生します。つまり、精算したとみなされれば、時価による譲渡もしくは交換として会計処理が行われます。

事業譲渡の際の仕訳方法

譲渡元企業側からみれば、事業譲渡は「事業を譲渡し」、「対価を受け取る」という取引です。したがって、以下の仕訳が基本となります。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

受け取った対価

☓☓☓

分離した事業

☓☓☓

次の例について考えてみましょう。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、現金等の財産(時価は150、A社における帳簿価額は120)である。

この場合、受取対価は現金等の財産であるため、投資は清算されたと判断します。よって、対価は時価の150で計上し、損益を認識することになります。仕訳は以下のとおりです。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金等の財産     

150

事業X

100

 

 

差額(損益)

50

同じように次のケースについて考えていきます。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • 取引後のA社に対する持分比率は20%未満なので、A社株式はその他有価証券として保有する。

今回受取対価はその他有価証券であるため、投資は清算されたと判断します。よって、対価は時価の150で計上し、損益を認識します。仕訳は以下の通りです。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式

150

事業X

100

 

 

差額(損益)

50

さらに、投資が精算されずに、継続しているケースについても考えていきましょう。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • 取引後のA社に対する持分比率は50%超なので、A社株式は子会社株式として保有する。

今回は、受取対価は子会社株式であるため、投資は継続していると判断します。よって、対価は簿価の100で計上し、損益は認識しません。仕訳は以下のとおりです。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式

100

事業X

100

分離先(譲渡先)企業の株式のみを受取対価とする事業譲渡において、分離先企業が新たに分離元(譲渡元)企業の子会社となる場合、経済実態として、分離元企業における当該事業に関する投資がそのまま継続していると考える必要があります(事業分離等会計基準87項)。そのため、損益を認識することをしないのです。このため、個別財務諸表上、当該取引において、移転損益は認識されず、当該分離元企業が受け取った分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定します。

子会社となるケースについてみてきたので、次に関連会社となるケースについても考えていきましょう。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • 取引後のA社に対する持分比率は20%以上なので、A社株式は関連会社株式として保有する。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式

100

事業X

100

今回も受取対価は関連会社株式であるため、投資は継続していると判断します。よって、対価は簿価の100で計上し、損益は認識しません。

おわりに

事業を譲渡することで譲渡側はその対価を得ることになります。事業を譲渡する際には、譲渡先に譲り渡した事業に対して投資が継続するのか、精算されるのかによって会社処理の仕方が異なるので注意しなければなりません。精算される場合には、損益を認識しますし、投資が継続される場合には損益を認識しません。仕訳の方法が異なることをきちんと理解しておきましょう。

関連コラム:事業譲渡とは?事業譲渡の概要と手続きについて解説

 

M&Aの基礎知識
2022/08/06
垂直統合戦略と水平統合戦略とはなにか?基本的考え方について
垂直統合戦略と水平統合戦略とはなにか?基本的考え方について

はじめに

M&Aのプロセスは、買収の種類と事業戦略によって、「水平統合」と「垂直統合」に分類することができます。水平統合は、企業規模の拡大、製品ラインナップの多様化、競争の緩和、新市場への進出を目的としたM&Aです。一方で、垂直統合は、利益を高め、消費者へのアクセスをより迅速にすることを目的としたM&Aであると言えます。この記事では、M&Aのプロセスを垂直統合と水平統合に分け、その効果について説明していきます。

M&Aにおける水平統合と垂直統合の概要

水平統合と垂直統合は、企業が自らの地位を固め、競合他社との差別化を図るために用いる競争戦略です。どちらも、他の事業の買収を伴う、つまりM&Aを活用した企業の成長戦略であると考えることができます。

垂直統合は、同じサプライチェーンに沿って複数の企業が結合することであるのに対し、水平統合は、企業が同じ業界で顧客基盤、市場規模、または製品の多様性を高めるために類似した他の企業(多くの場合競合)をM&Aによって取得することを意味します。

さらに、水平統合は、製品の差別化を図ったり、市場支配力を拡大したりするために行われる場合もあります。水平統合は、多くの場合同じ業界内で行われますが、異業種や関連業界で行われるケースもある行為です。したがって、その意図は、必ずしも自社のサプライチェーンをより多くコントロールすることによるコスト削減ではないものの、水平統合を行う企業は、消費者基盤、資産や資源の増加、または収益の増加を期待して行うことが多いと考えることができます。

水平統合と垂直統合という2つの戦略は、企業の拡大を助けるものではあるものの重要な違いがあります。

水平統合は、企業が関連する企業、つまり競合他社を買収することによって成長することを目指す戦略です。一方、垂直統合は、企業が生産や流通の1つまたは複数の段階を支配することで、産業プロセスのすべての部分を所有することを目指す成長戦略です。

水平統合の基本的考え方

水平統合は、規模の経済、競争力、市場シェアの拡大、事業の拡大をもたらす競争戦略です。より多くの資源、市場、能力、効率性を目標に水平統合を行います。水平統合とは、言い換えれば、似たような2つのビジネスが1つの会社になることである。たとえば、ナイキとアディダスの合併は、水平統合の一例です。

両社は、スポーツウェアの製造・販売を営んでいます。M&Aを行って水平統合を実施した2つの事業体は、独立して事業を行う場合よりも、より多くの収益を実現できるような体制になるはずです。水平統合は活動の最適化、または会社のプロセスおよび活動の範囲内の戦略的なビジネス活動の統合を促進する可能性があります。

垂直統合は、サプライチェーン上で同じ段階にある限り、水平統合は産業間でも起こりうることに注意しましょう。たとえば、サウジアラビアの石油・ガス採掘業者が、ブラジルのコーヒー豆栽培業者を買収することがあります。両社は原材料の供給業者であり、サプライチェーン上で同じ段階にあるにもかかわらず、業種が異なっていますが、サプライチェーン上の同じ段階の事業者同士によるM&Aの実行は当然あり得るものです。

具体的な例として、ディズニーがピクサー(映画製作)と、エクソンがモービル(石油生産、精製、流通)と、あるいは悪名高いですがダイムラー・ベンツとクライスラーの合併(自動車の開発、製造、小売)が水平統合の有名な事例です。

もし、同じ業界に属していて、同じ事業を営む企業同士が水平統合した場合どうなるでしょうか。たとえば、ボーイング社とエアバス社は共に飛行機を製造しており、合計で99%の市場シェアを誇っています。もし、この2社が水平統合をすれば、独占が可能になるのです。

こうした水平統合は、特定の産業において独占的な力を生み出し、消費者にとって不利益となる場合があることに注意が必要です。競争の低下により、談合行為が誘発され、製品価格の上昇につながる可能性があります。

垂直統合の基本的考え方

垂直統合とは、企業が自社製品のサプライチェーンを所有する戦略的構造であり、通常、異なる生産段階に関与する1社または2社の企業で構成されます。

サプライチェーンには、原材料の調達から製品化、販売までのすべての段階が含まれます。その意味で、垂直統合型の企業は、サプライチェーンの複数(またはすべて)の部分を所有する戦略です。

たとえば、ある企業が綿花の生産者とTシャツの製造会社を買収し、その製品を自社で販売することがあります。つまり、元の会社(現在は、同じ垂直方向に沿った複数の会社のコングロマリット、または同じ種類の製品)が、商品、製造、流通、小売というサプライチェーンの4つの部分を支配することになるのです。

垂直統合を行うと、サプライチェーンをよりコントロールできるようになり、より低い価格で製品を提供できるようになります。市場における市場支配力が高まるなど、企業にとって多くの利点があります。

垂直統合の方法は、企業の種類によって、後方統合と前方統合の2つに分かれます。

(1)前方統合

企業がサプライチェーンの前方に進出する場合(例えば、メーカーが小売業を買収した場合)、前方統合を行うことになります。これは通常、鉱業会社がさらに「下流」の工場を支配するような、サプライチェーンの始点に近い会社が行うものです。この場合、メーカーは流通経路をコントロールすることで、中間業者を通さずに直接消費者に製品を提供することができるようになります。

(2)後方統合

逆に、企業が後方(または「上流」)に拡大し、サプライチェーンのさらに後方の生産部分を支配する場合(たとえば、小売企業が商品のメーカーや生産者を買収した場合)、それは後方統合を行ったことになります。企業が原材料の供給者と合併する場合、プロセスの一部を外部調達するのではなく、必要なものをすべて自社で調達するため、多くのコストが削減されるのが一般的です。この意味で、大手小売企業や流通企業は、輸送費を節約し、供給者を抑えるために、自社商品の生産者やメーカーの買収を行います。

5.おわりに

水平統合と垂直統合は、ある企業が他の企業を統合する2つの成長の方向性を示すものです。水平方向の合併は、互いに競合する2つのビジネスに関するものです。一方、垂直合併は、同じサプライチェーン内で動作する2つのビジネスに関するものです。水平方向のM&Aは、競合する2つの会社が一緒になって1つの会社を作るときに起こり、垂直方向のM&Aは、異なる生産段階にある2つの会社が一緒になって1つの会社を作るときに起こります。

収益を上げたい、または製品の幅を広げたい場合は、M&Aを活用した水平統合の機会を探すとよいでしょう。この場合、M&Aの候補となる企業は、自社と同様の製品・サービスを持ちながら、自社が希望する製品・サービスを追加していたり、現在自社が参入していない地域で事業を展開しているところが良いでしょう。

コスト削減によって競争力を高めたい場合、あるいは重要な供給源へのアクセスを確保する必要がある場合は、垂直統合を検討する必要があります。この場合、M&Aの候補となる企業は、自社の製品を製造するのに必要となる原材料を作っていたり、自社の製品の販売をするのに必要となる販売先であることになります。

どちらの水平統合にせよ、垂直統合にせよ、一長一短の戦略です。その効果をきちんと理解して活用することが大切です。

M&Aの基礎知識
2022/07/30
M&A・事業承継の“マッチング”を支援する相談先・プラットフォームの普及
M&A・事業承継の“マッチング”を支援する相談先・プラットフォームの普及

はじめに

会社の事業を承継することを考えるとき、誰に承継するかは非常に重要です。自分の血縁関係の中で事業を承継するケースもあれば、会社の従業員に事業を承継するケースもありますし、全くの会社の外部の人あるいは会社に事業を承継するケースもあります。

このうち、3つ目の会社の外部に人あるいは会社に事業を承継するケースでは、一般に、事業承継を行う譲渡側と、事業承継を受け入れる譲受側があり、両者のニーズが一致するように調整しなければなりません。その調整をマッチングと言います。会社の外部の人あるいは会社に、事業を承継するケースでは、この両者の合意がない限り、事業承継が成立しません。昨今の事業承継ニーズの高まりから、より効率的に、より納得感が得られるように両者を結びつけることを目的として、多くの事業承継マッチング業者、あるいは、マッチングプラットフォームが誕生しています。

そこでこの記事では、会社の外部の人あるいは会社に事業を承継する際に、近年盛んに利用されるようになっている事業承継マッチング業者、マッチングプラットフォームについて解説します。

M&A・事業承継におけるマッチング

会社や事業を売りたい(承継したい)と考えている会社が、会社や事業を買いたいと考えている会社に出会うためには、両者を引き合わせなければはじまりません。このように売りたい側と買いたい側が出会い、条件等双方の合意が得られた状態がマッチング成功となります。

一般に、会社を売りたい人と買いたい人のマッチングを自ら行うことは難しいことから、M&A。事業承継の専門家に相談することになります。近年、事業を売りたいという事業者と、事業を買いたいという事業者をマッチングさせる事業承継マッチング業者やM&Aマッチングプラットフォームと呼ばれるサービスを提供する企業が増えてきています。

事業承継マッチング業者は、中小企業の事業承継(M&A)を支援する機関であり、民間のM&A専門仲介機関や、金融機関、士業の専門家などが存在しています。マッチング業者の担う業務は、相手先企業のマッチングから行う場合もあれば、デユーデリジェンスや契約締結等の特定の業務に特化している場合もあり、その関わり方は様々です。事業承継マッチング業者に支払わなければならない仲介等の手数料についても、仲介者かアドバイザーかといった契約関係だけでなく、案件の規模や報酬体系(着手金・中間金・成功報酬等)によって異なります。

また、事業承継のマッチング業務は、案件の規模にかかわらず同程度の業務が発生するため、最低手数料を設けている専門仲介機関も多くなっています。そのため、近年では、インターネット上でのマッチングも行われるようになってきており、低コストでマッチングを図ることで小規模事業者でも事業承継を実施できる環境も整いつつあります。

いずれにせよ、事業承継を推進していくためには、金融機関、専門仲介機関、士業専門家といった、当事者以外の支援が重要です。こうした支援機関の事業承継への理解を深めるとともに、支援機関同士が連携し専門性の補完やマッチングを図ることで、様々なニーズに対応していくことが期待されています。

事業承継マッチング支援の相談先(専門家)

ここでは、まず事業承継マッチング支援をする代表的な相談先(専門家)について説明していきます。

① 公認会計士

公認会計士は、監査及び会計の専門家として、財務書類の監査証明業務のほか、財務に関する調査や相談に応じており、事業承継の様々な場面で、広い見識に基づく支援が期待できます。特に、経営状況・課題の把握(見える化)や経営改善(磨き上げ)をはじめ、非上場株式の評価・M&Aにおける売却価格試算等の複雑な状況での公正な評価、経営者の個人保証の解除、適正な会計の導入支援といった、将来の事業展開も踏まえた幅広い助言が期待できます。

② 司法書士

司法書士は、商業登記、不動産登記等の実務家として、事業承継における株式及び事業用不動産の承継、M&A、種類株式及び民事信託の活用、担保権の処遇等についてサポートしています。また、日本司法書士会連合会においては、商業登記・企業法務対策部、民事信託等財産管理業務対策部等を設置して事業承継に関する支援事業を行っています。

③ 税理士

税理士は、顧問契約を通じて日常的に中小企業経営者との関わりが深く、決算支援等を通じ経営にも深く関与しています。経営者向けアンケートにおいても、事業承継の相談先として選ばれやすい存在です。また、日本税理士会連合会にて構築した顧問税理士同士によるマッチングサイト「担い手探しナビ」の利用等を通じて、 多くの税理士が、後継者不在の中小企業に対するM&A支援に着手するなど積極的な事業承継支援を行っており、主体的な関与が期待できます。経営者に最も近い存在として、事業承継ニーズの掘り起こしのほか、相続税に関する助言や株価の評価、生前贈与のやり方や種類株式の発行に関する助言、中小企業会 計要領・中小企業会計指針の活用支援等、事業承継に関係する幅広い領域にわたる支援をしてくれます。

④ 中小企業診断士

中小企業診断士は、「中小企業支援法」に基づき、中小企業のホームドクター として、様々な経営課題への対応や経営診断等に取り組んでいる事業者です。事業承継に関しては、事業承継診断やプレ承継支援(事業承継計画の策定支援、 後継者教育支援、磨き上げ支援等)、ポスト承継支援のほか、M&A等に関わる支援も期待されています。

⑤ 弁護士

弁護士は、中小企業や経営者の代理人として、事業承継を進めるにあたり、経営者と共に金融機関や株主、従業員等の利害関係者への説明・説得を行い、円滑な事業承継を進める役割を担います。特に、株主関係が複雑な場合や、会社債務・経営者保証等に関する金融機関との調整・交渉が必要な場合、M&Aを活用する場合等においては、法律面全般の検討と課題の洗い出し、それらを踏まえたスキーム全体の設計、契約書をはじめとする各種書面の作成といった支援が期待される。また、日本弁護士連合会は、事業承継に関するプロジェクトチームを設置し、中小企業の事業承継に関する課題分析と改善策の検討、有用なスキーム・事例の周知活動、具体的な相談体制の整備等に取り組んでいます。

⑥ 金融機関

金融機関は、中小企業に日常的に接して経営状況を把握しており、中小企業に対してきめ細やかな経営支援等を実施し得る立場にあります。また、金融機関が取引先企業の事業実態を理解し、そのニーズや課題を把握し、経営課題に対する支援を組織的・継続的に実施することは、取引先企業の価値向上、ひいては我が国経済の持続的成長につながるとともに、金融機関自身の経営の安定にも寄与するものです。このような観点から、金融機関は取引先中小企業の事業承継問題に対しても積極的な支援を実施することが期待されています。

⑦商工会議所・商工会

商工会議所・商工会は、経営指導員の日々の巡回指導等を通じて中小企業経営者との間に信頼関係を構築している身近な存在です。このため、事業承継ニーズの掘り起こしのほか、事業承継セミナーの開催や事業承継施策に関する情報提供、専門家の紹介、事業承継・引継ぎ支援センターとの連携等が期待されています。

代表的な事業承継マッチングプラットフォーム提供事業者

近年では、IT技術を活用しインターネット上で事業承継マッチングを行う業者も誕生しており、低コストでマッチングが実現できる環境も整いつつあります。

事業承継マッチングプラットフォームは、事業や会社の譲り渡し側・譲り受け側がインターネット上のシステム(プラットフォーム)に情報を登録することによって、マッチングをはじめとする事業承継の手続きを低コストで行える支援システムです。従来、事業承継においては、事業者自身が譲り渡しや譲り受けの情報にアクセスすることが困難でした。その橋渡しを事業承継支援業者(金融機関、M&A仲介業者など)が担っていたのです。結果として、情報量の少なさからマッチングの可能性が低くなってしまったり、マッチングにかかるコストが大きく、業者に支払うべき高額の報酬につながってしまったり、といった課題がありました。こういった従来のM&Aの問題点を解決するために誕生したサービスが、マッチングプラットフォームです。

それでは、現在の日本でマッチングプラットフォームを提供している代表的な事業者を2つ紹介します。

①BATONZ(バトンズ)

BATONZは、無料で利用できる成約数No.1のM&A・事業承継支援サービス提供事業者です。企業と第三者のマッチングを支援し、M&Aによる事業継承をサポートします。バトンズでは小規模・零細企業の案件だけでなく、中小企業も含めた幅広い規模の案件も掲載しており、個人・個人事業主・法人といった、あらゆる属性の人が利用している事業者となっています。業界の標準価格よりもかなり安い金額で成約までたどり着くことができるうえに、充実したサポート体制が魅力となっています。

②TRANBI(トランビ)

TRANBIは、挑戦したい個人・中小企業のためのM&Aや事業開発を中心とするイノベーションプラットフォームです。インターネットを通じて、事業を買いたい人と売りたい人がマッチングする事で、 これまで多額の資金を必要としたM&Aの費用を大幅に削減することに成功しました。会員数も2022年7月時点において、106,246名と業界最大級を誇っています。

昨今、M&Aのマッチングプラットフォームは乱立しており、上記以外にもたくさんのプラットフォームがあります。

頑張っていく事業承継

おわりに

事業承継において、会社や事業の譲り渡し先を決めるのは容易ではありません。会社のことを理解していないところに事業を承継してしまえば、会社に残った従業員が不幸になることはもちろん、これまで会社に培われてきたものが台無しになってしまいます。だからこそ、マッチングを支援してくれる事業者の存在は、事業承継において欠かせないのです。

事業承継においてマッチングサービスを提供している事業者は数多く存在します。従来は、専門業者に依頼するケースも多かったものの、自分たちで直接プラットフォームサービスを利用するケースも多くなっています。会社の将来を左右する事業承継ですので相手探しは重要です。

M&Aの基礎知識
2022/07/31