M&Aの基礎知識 2022/08/06

【M&A成約事例】根本製作所様×キヨシゲ様インタビュー

【M&A成約事例】根本製作所様×キヨシゲ様インタビュー
                    

Profile

譲渡企業:株式会社 根本製作所
代表取締役 根本豊太郎 様

群馬県太田市にて建設機械、産業機械、原動機、重工・重電等の部品製造を行う。(溶接加工、機械加工、ショットブラスト、塗装他)

譲受企業:株式会社キヨシゲ
代表取締役社長 小林光徳 様

鋼板・鋼材流通に関する豊富な経験・ノウハウと最新情報に高度の加工技術をミックスさせ、 お客様のニーズに対して鐵の「販売」から「加工」「スクラップ回収」までの理想的なワンストップ・ソリューションを実現。鐵にはめっぽう強い会社。


長年、同地域への進出を目指していた株式会社キヨシゲの小林社長と、過去のM&A提案は断っていた根本製作所の根本社長。今回のお話は、二人の経営者同士が直接出会うことにより、歯車が噛み合い動きはじめました。

譲り受けた株式会社キヨシゲ、譲り渡しをされた株式会社根本製作所の両社の社長にお話を伺いました。


今回のM&Aご成約までの流れについて教えてください。

小林:根本社長と初めてお会いしたのが2021年9月半ば、12月28日に登記を済ませクロージングしました。

2022年1月から正式に根本製作所がキヨシゲグループに参画いただき新体制がスタートしました。 通常のM&Aの流れは、秘密保持契約から始まり、譲渡契約書締結、それに基づいて登記、と進んでいくじゃないですか。

ところが、今回9月よりお話が始まってからすぐの段階で、「ぜひ、一緒にやりたい」とお互いの気持ちが確認できていたので、年内中に全部手続きをしてしまおうと思い、M&A実行を前提に早い段階で、譲渡契約まで一気に結びました。ただ、念のために、進行する上で見直しの選択肢を残すために、譲渡契約書には解除条件を盛り込んだ上で結びました。お互いに難しいところが出てきたら、都度見直しやペンディングをしましょう、と。

買い手様(キヨシゲ)の事業内容を簡単に教えていただけますでしょうか。

小林:私たちは、鉄板を主体にした鋼材販売・加工、そして、加工する中で出てくるスクラップの売買や産廃物の収集運搬という、大きく分けると3分野で事業展開しています。鋼材、鋼板にはさまざま種類がありますが、弊社では種類豊富に幅広い商材を取り扱っています。特に、中板・薄板といわれる鉄板が多いことが特徴のひとつです。

加工については、一般的にプレス屋さん・板金屋さんというような言われ方もしますが、弊社はその両方の機能を有して、顧客の幅広い要望に応えています。具体的には、鉄板を切る・穴を開ける・曲げる・溶接するなどを行います。アングル、チャンネルと呼ばれる構造用材なども加工します。

また、「鉄」は99%以上リサイクルされる資源ですので、リサイクル循環としてのスクラップ売買も行っています。私たちがスクラップの発生する企業から仕入れて、電炉メーカー・高炉メーカーに販売し、メーカー側で鉄を再生して再び世に送り出してもらうという循環です。そしてこの営みの中では、リサイクルができない産業廃棄物も出てきます。私たちは許認可を受け、これら産業廃棄物の収集運搬業も行っています。

何かものづくりをするときには必ず、素材の仕入れという川上から、処理という川下まで一連のフローがあり、そのフェーズごとに専業的に事業を行う企業が多いですが、弊社の場合はこれをワンストップで行っています。ワンストップで行うからこそ、前工程・後工程を俯瞰してどうしたら品質や効率があがるかなど、フェーズごとに事業を行っている中では見えづらい総合的なノウハウが蓄積されます。総合的にさまざまな提案ができるので、お客様には便利に使ってもらいたいと思っています。絶えず弊社がサポートに入ってお手伝いしていくっていうのが、ひとつのコンセプトですね。

手前味噌にはなりますが、他社でなかなかこういったモデルで事業展開しているところはなく、弊社のオリジナリティーとして評価をいただいております。

川上から川下まで全部やってくれるから便利だよね、というのは「言うは易し、行うは難し」ではないかと思いますが、事業を行う難しさはどのような点が挙げられますか。

小林:私たちはお客様の要望に応じて、自分たちのできるサービス領域を増やしていくスタイルなので、絶えずお客様に耳を傾け、いただく要望をどうやって実現していくのかというところに難しさとやりがいを感じています。

もともと弊社は、現会長が個人で創業し、最初はスクラップの回収業から始めました。 スクラップをお客様のところに買いに行くと、「スクラップは出すけど、実は材料が足りないから、安い材料があればもってきて欲しい」という新たな要望をいただく。そのニーズに応えるために、私たちは、スクラップを売ってもらうために材料を一生懸命探して、買って持っていきます。こうして、材料屋の仕事にも領域を拡大していきました。

そして、材料屋をやっていると、今度は「材料そのままではなく、使いやすいように切ってもってきてほしい」とご要望をいただく。そして機械をもち、加工業も始める、と。そうすると「プレスの仕事を手伝ってくれないか」という話がでてくる。

また、大量生産時代から少量多品種時代へと移行してきたときには、板金の仕事も舞い込んできました。その中で、例えば、「切るだけじゃなくて溶接もやってほしい」「鉄板だけじゃなくて形鋼もやってほしい」という声もでてきたため、設備投資して、どんどん業務領域を増やしてきました。

私たちがこうしたい、というよりは、お客様のお考えやご要望ありきで自分たちを変化させています。変化に対応していくうえで、機械や人への投資をどう回収するかなど、常に考え頭を悩ましますが、そこに難しさとやりがいを感じますね。

キヨシゲ小林さん

これまでにもM&Aのご経験があると伺いましたが、どんな経緯だったのでしょうか。

小林:当初、形鋼加工については、自前で賄うのではなく、他社にお願いして買っていました。ただ、その形鋼加工会社の東鋼商事株式会社が後継者不在で「社員や設備を引き継いでくれないか」という話をいただいて、私たちが引き継ぐことになりました。たまたま、私たちの隣の会社だったのですよ。

これが実は、弊社初のM&Aになります。引き継いだときはM&Aをしている意識はなかったですが、後から振り返れば、「え?これがM&Aなの?」という話になって(笑)約20年前になりますが、最初のM&Aは形鋼加工の会社を引き継ぐ、という形で行いました。

なるほど。御社初のM&Aは能動的に仕掛けてM&Aをするというよりは、仕事を引き受けていく中でつながった取引先との事業承継だったのですね。

小林:はい、最初は全く意識していませんでした。「M&A」っていうのは何千億円単位で、世界的大会社が行うイメージしかなかったので。

2回目のM&Aは、プレス事業を行う会社でした。もう4、50年くらいお付き合いをしている取引先の株式会社田中鉄工所でした。本件も後継者不在ということで、引継ぎのお話をいただきました。弊社が行っているプレスは板厚が薄いものでしたが、田中鉄工所では厚いものを取り扱っていました。また、プレス後の「削る」、「溶接する」の工程を行える設備とノウハウを有している会社でもありました。私たちは、当時プレス後の工程を社内で行っていなかったのですが、田中鉄工所のグループインによって新たに請け負えるようになります。板厚の薄いものから厚いものまで取り扱えるようになり、加工の後工程も一貫して行うことができる体制が整い受注の間口も広がるだろうと。

田中鉄工所としても、プレスの設備やノウハウなどの消滅を防げ、従業員雇用や取引先との関係が継続できるという資産が守られ安心できる。ということで、お互いにメリットのあるいいお話だなと思い、引継ぎを決断しました。

キヨシゲ様としては顧客ニーズへ幅広く応えるために事業領域を拡大されてきたということですが、今回のM&Aに至った背景や、課題感などを教えていただけますか?

小林:大きく3つあります。
ひとつめは、取引先が北関東地域に増えてきたことです。

ここ10年ほどで、群馬県・栃木県などの北関東のお客様が増えてきたため、まずは、営業機能のみを持つ北関東営業所を作りました。しかし、お客様と安定した関係構築をして、本質的に喜んでもらえるような状況には一歩及びませんでした。それで、私たちがこの地域に根を張って仕事をしていくという姿勢をより積極的に示さねばならないと感じ、北関東にしっかりした拠点が欲しいと考えるようになりました。

そこで、工場を探し始めました。ただし、工場という設備だけがあっても、すぐに営業ができるわけではなく、働いてくれる従業員がいないと運営もままなりません。北関東の地域でその両者どちらも満たす会社があるのなら、M&Aという形で一緒に事業を行うという判断もあり得る選択肢だと思いました。

そして、2つめは自然災害などで起こりうるリスクの分散です。BCP(事業継続計画)という観点ですね。もともと、弊社は本社のある千葉県浦安市で事業展開し、近隣から領域を増やしてきました。拠点は浦安に4か所ありますが、近年は浦安でも自然災害が目立ってきています。2019年に浦安に大きな台風がきて、弊社設備も被災してしまいました。設備の屋根に穴が開いて、約600トンの鋼材がびしょ濡れで錆びてしまい、品質ダウンとなってしまいました。このような災害で、もし、設備機械が壊れてしまいでもしたら、それこそお客様に大きな迷惑がかかってしまう。

だから、(千葉と)同時に同じ自然災害が起きない場所へ機能を分散する必要があります。リスク分散できるもうひとつの拠点をもつことは、取引先のお客様に安心してもらえるひとつの方法じゃないかと考えました。このような背景で、北関東という場所を検討していました。

最後に3つめは、自分たちの仕事の領域を広げていけるようなノウハウをもつ会社が望ましいと考えていました。1社目のM&Aの際、新たに形鋼のノウハウが弊社に入ってきたときに、既存事業と相乗効果を発揮して効率化が図れました。例えば、溶接加工の効率化と、その前のブランク加工の仕方は密接に関係しており、双方の機能を有することで見えてくる業務効率化のノウハウがあります。それは、「溶接」という過程を自分たちでやらなければ見えてこないことでした。カバーできる業務が増えるにつれて、新しい視座が増え、そこから発想の転換が生まれます。

すると、ますます改善活動がはかどるので、お客様にその分有意義な提案ができ、よりお客様と同じ方向を向いて事業を行えるのです。非常に良い形でM&Aの効果を出していくことができた過去の経験も踏まえて、今回のM&Aの検討では、「相乗効果を生むノウハウ」と「ある程度広い工場」という観点から、どこかにいい出会いがないかなと「北関東地域」を見ていました。

―― 何年くらい探されていたのですか?

小林:3、4年くらいですかね。もっと、かもしれないです。コロナ禍では、時間がぱっと過ぎてしまった感覚なのでうろ覚えですが…。コロナ前の段階から、この地域の事業者さんを羨ましいなと思って見ていました。とはいえ、なかなかどうしていいかわからない状態ではありました。

そのような課題から、弊社のソーシング(お相手様探し)の支援サービス「アクティブオリジネーション」をご利用いただいたということですね。他社のM&A支援会社からもお声がかかっていたと伺いましたが、弊社のサービスを選んでいただいた理由は何でしょうか。

小林:今まで、2社M&Aをしたというお話しをしましたが、1社はお隣だし、もう1社も先代(現会長)が、駆け出しの頃から通ってお取引をしていただいていて、私も大学生の頃にアルバイトで毎日のように伺っていた4、50年のお取引のある会社と、どちらも親戚のような会社でした。

こういうご縁があったからこそ、丁寧な事業の引継ぎが成立したと考えています。

ところが、外からくるM&A支援会社の営業は、自分の会社に対し愛情を注いで育てている経営者に対して、少し乱暴じゃないかと思うコミュニケーションが散見されることもあり、正直あまり良いイメージがありませんでした。会社を商品のように扱うといいますか…。これは、頼めないなと。

だから、現在取引している銀行からM&Aや事業承継の案件紹介の話があれば話を聞こうという、受け身の体制だったのですよね。しかしながら、受け身でいてもいいお話はなかなかない。そんな中、ティールバンクの桃井さんとお会いしてお話を聞いたら、このような悩みを丁寧にサポートしてくれそうな気がして、まずは相談させてもらいました。

ティールバンクの「アクティブオリジネーション」というサービスを伺う中で、「攻めのM&A」という言葉がありました。私自身がそれまで受け身でいたからこそ、この言葉を重く受け止めましたが、確かに、待っているだけで、希望するような良い出会いはないですよね。手を広げているだけで、自分の希望するものが落ちてくるなんてことはないだろうな、と。こちらからアクションを起こして一生懸命、誰かいないかなと探しに行かなきゃいけないな、と気持ちを「攻め」に切り替えました。

ただ、だからといって自分たちでM&Aの専任社員を採用して、従事してもらうのは、パワーがかかるので非常に大変です。それであれば、すでにノウハウを有しているティールバンクさんにお願いしようと思いました。アクティブオリジネーションのように、成功報酬ではなく着手金がかかったとしても、社員採用するコストと比較すれば、リーズナブルだと判断しました。

―通常M&A仲介会社だと、相手探しと呼ばれるソーシングの部分と、マッチング、その後の交渉や手続きを行うエグゼキューションというプロセスまで、ひとくくりのサービスが多いですが、私たちはソーシング特化型のサービスをご案内させていただきました。クロージングのサポートがない不安はなかったでしょうか。

小林:不安はなかったですね。過去2回M&Aを行った際には、取引銀行に全部サポートしてもらっていたし、弊社監査役の公認会計士もM&Aには慣れていて、ノウハウがあったので、全く不安はありませんでした。むしろ、「本当にいい出会い」に特化してプロデュースしてもらえるというのはありがたく、魅力を感じました。

― ありがとうございます。アプローチを届けることに価値を置くサービスを利用して良かった点を教えていただけますでしょうか。

小林:私やうちの社員が、直接会社に出向いて、いきなり「会社を売ってくれませんか?」なんてことは言いずらいし、相手からしても当然驚くと思うのですよ(笑)

そういった意味では、ティールバンクの桃井さんみたいな誠実な方が、相手の失礼にならないように、傷つけないように、私たちに代わって意向を伝えてもらったということには大変感謝しています。

また、桃井さんにはエリア・業種などをキーワード的にお伝えして、企業の候補を出してもらったのですが、これもやはり我々が自分たちで調べたところで、調べきれないと思います。私たちの希望に沿いマッチングするよう、調査いただけたというのは、プロにお願いして良かった点です。

今回、短期間での成約でしたが、桃井さんにオープンネームの方が良いというアドバイスをいただいたことがとてもよかったと思います。
どこの誰なのかを隠して、覆面(ノンネーム)で話を進めていくのではなく、ある程度早い段階で「キヨシゲ」という名前を出して、具体的に素性をはっきりさせてお話をした方がいいと。こういうお作法みたいなものは僕らも分からない部分ですから、どうしたらいいかわからずビクビクしていました。そこをきめ細やかにサポートをしてくださり、背中を押してくれたことは非常に感謝しています。

そして何より、根本社長がお考えになっていることをストレートに話をしてくれたため、すごく打ち合わせしやすかったです。

今回M&Aについて全体的なご感想をお聞かせいただけますか。

小林:はい、やはりM&Aというものは打算的に取り組んでも、なかなかうまくいかないと思うのですよ。本当に何て言うのかな…運命的な出会いのようなものだと思っています。リストアップされた1社1社ホームページを見ていたら、根本製作所さんは立地も素晴らしく敷地も広くて、事業内容も私たちの事業の延長線上でした。まさに、商品に仕上げていくためのフローでいうと、私たちの次のプロセスの仕事をしていらっしゃる。

今まで私たちがお客様の要望に応えられなかったことを、根本製作所さんと一緒にやればきっと実現できると思いました。前工程である私たちのパーツを安価に根本製作所さんに提供することで、根本製作所さんの収益にも貢献できる。これはすごい、と思いました。

ということで、ティールバンクさんから根本社長にラブコールをちゃんと届けていただいて。
こうして一緒に事業展開することが決まり嬉しく思っています。運命的だったと思っています。

直接やりとりをし、早い段階で相互理解ができたということが、ポイントだったのですね。

小林:はい、そうですね。本当に早い段階から自社の考えることをすり合わせることができたため、短期間ながらも有意義な時間の使い方で早期成約につながったと思います。 また、やはりどんな業種で、どんな事業をやっているかなど、会社の表面的な情報というのはもちろんありますが、最終的には「人」だと思います。

例えば、M&Aの話がまとまったとしても、従業員が退職したり、非協力的であれば事業を進めていけません。根本社長とお話しする中で、私たちのグループの一員となったあとでも、積極的な協力体制・信頼関係が構築できると感じましたし、最後の決め手は「人」ですね。

根本社長が「資本がキヨシゲになったとしても引き続き頑張る」といってくださったことと、根本製作所さんの従業員の方がたにも、本件についての丁寧な説明をしていただいたことが一番ありがたかったですね。

大筋の方向性の合意ができている中で、月日が過ぎ、3月となってしまったら決算もありますし、後手に回るよりは、1日でも早いほうがいいですね!と、お話しを進めていきました。 根本社長には、引き継ぎに必要な手続きを急ぎで行っていただいたので、株式の譲渡手続きなどの事務周りでご迷惑おかけした部分もありますが…。おかげで、お客様に対してグループインや、グループでの新しい取り組みを遅滞なくご案内することができました。

その結果、もうすでに両社で協調しながら製作・出荷を済ませている商品などもでてきています。(2022年1月末日現在)

M&Aの実行直後にすでに現場レベルでの成果がでているのは、素晴らしいですね。

小林:
はい、本当に社員のみなさんに積極的にやっていただいたからだと思っています。一緒にやったら効果があがるだろうと当初から思ってはいましたが、本当に期待していた以上ですね。

―では、ここから売り手様、根本社長にお伺いします。まず、会社の事業内容を教えていただけますでしょうか。

根本:主に、厚板の溶接及び機械加工を行っています。業界でいうと、6ミリから上になると厚板というのですが、うちの場合ですと12・16・19ミリというような板厚がメインで、もっと厚いと90ミリとか100ミリもあります。建設機械メーカーさんの部品が取り扱いの比率としては大きいです。

キヨシゲさんとの関わりの点でいうと、キヨシゲさんが切ったり、曲げたりして作った小さなパーツを、私たちが大きな厚い板にアセンブリー(組み立て)し、溶接して作り込んでいく作業をしています。祖父が創業し、父からバトンを受け引き継いで事業運営してきました。

譲渡を考えられたきっかけは何でしょうか。

根本:はい、正直に言ってしまえば、私個人の力だけで、この事業を継続するのは厳しいのではないかと思っていたためです。

譲渡をご検討しはじめたのはいつごろだったのでしょうか。また、検討の中で他のM&A支援事業者からのお話も伺っていたとのことでしたが、お相手探しや引き継ぎへの取り組みをどのように進められようとしていらっしゃったのでしょうか。

根本:検討をし始めたのは、実はお声がけいただいた頃の9月です。だから、本当に運命的なのですよ。

まさに小林社長がおっしゃったように、弊社にもM&A支援事業者から営業はきましたが、やっぱり少し乱暴に感じるのですよね。モノの売買のような…。もちろん大きい会社の戦略的な売買の中で、企業をモノとして見るのはある意味正しいのかもしれないですけれども、私たちのような創業一族がやっている会社は、そんな風に見られるとやっぱり違和感があるのです。

そして、引継ぎの取り組みに関してですが、私がM&Aでお願いしたい希望としては、たった2つだけでした。とにかく、大事なのは「従業員の雇用を維持する」こと。そして、「私たちの設備を有効活用してほしい」ということです。

ところが、私が聞いたM&A事業者さんは「企業価値をいかに高くアピールして、経営者さんにどれだけのお金を渡せるか」ということを、メインに紹介するのがほとんどでした。この設備を活用して、従業員を生き生きとさせてくれるための提案をしてくれるところはなかったのです。

失礼ながらティールバンクさんが、文字通り従業員と設備をフル活用させますよと言ってくれたわけではないのだけれども、早いうちに企業名を教えてくれた上でお話をしてくれて、私なりにキヨシゲさんを調べたら、その2つの希望が十分満たせるだろうと思ったので、お話を前に進めようと思いました。

― はじめに、買い手の小林社長には、ぜひオープンネームで進めたほうが良いとお話しさせていただきました。弊社としても、覆面でお声がけすると業界や地域など一定のセグメント情報でしかお声がけができず、会社が持つ独自の魅力が伝わらないことが多分にあり、共に具体的な未来を描こうにも描けない、というようなもどかしさがありました。お互いより近い距離で温度感が伝わるように話していただければ、きっとうまくいくと思っていたので、まさにオープンネームを評価して頂けて嬉しく思います。

根本:本当にそれが、今回役に立ちました。

キヨシゲさんに決められたポイントは、どのようなところだったのでしょう。

根本:小林社長とお話しをさせていただいて、小林社長が持たれている会社のビジョンを聞いて、そのビジョンの中に入れば、根本製作所は息を吹き返すのかな、と思いました。息を吹き返すだけでなくて、キヨシゲさんとしても成長する過程で、弊社従業員の技術や設備がフルに活用されるのだろうと強く感じられました。

どうしても仲介の方が挟まると、直接話をせず、仲介業者を介してのお話になることが多いと思いますが、早めに小林社長とのご面談をセッティングいしてただいて“直接”ビジョンや思いを聞けたというのは、本当に良かったと思っています。

早めに相手の顔が見えて実際にお話ができるという安心感があったということですね。

根本:はい、結局会って直接話をしてみないとわからないですよね。話をして、考えが違うのであれば止めればいいですし、ベクトルが同じだと思ったら、迷うことなく進めばいいと思いますし。

仲介のスタイルですと、買い手様・売り手様双方から手数料をいただくことが一般的ですが、「アクティブオリジネーション」の特徴として、売り手様からは一切手数料はいただいておりません。費用面に関してはいかがでしたでしょうか。

根本:費用を払う・払わないとか、安い・高いはもちろんあるのですけれども…。

結局、M&A支援事業者が成功報酬型で、成約金額に連動する形でM&A支援事業者の手数料が決まるという考え方だと、「なるべく高く売る」とか「なるべく安くして買ってもらう」ということに執着してしまうものだと思います。売り手と買い手の双方に、M&A支援事業者の取り分が増えるという思惑が透けて見えてしまうやり方は、売り手や買い手が望んでいるのと違う方向に行く可能性が高いと思っています。こういうことはよく男女関係に例えると思いますが、例えば仲人さんが、「あそこの御両家のお嬢さんなんとか縁談取り付けましたので、心付けよろしく」とか「ちょっと町娘だからしょうがない…」なんてことは、ちょっと失礼な話ですよね。そんな雰囲気を感じてしまっていたのですよ。

小林:そうですね。毎度それは感じますよね。

根本:そういう意味だと、ティールバンクさんは弊社からは料金をいただかないと言っていただきましたが、私としてはそれよりも、高く売ろう、安く買おうという匂いが全然しなかったので、警戒心が湧かなかったというのはありますね。

小林:やっぱりそうですね。今のお話の通りだと思う。(成功報酬型だと)本当にこのマッチングがいいことだと思って、進めてくれているのかなと疑ってみてしまうことはありますよね。

 

今回のご譲渡でご親族や・従業員など周囲の方のご反応はいかがでしたでしょうか。

根本:小林社長とお話をして、急な環境変化は精神的にも物理的にも大変なので、事業の融合には時間をかけてアレルギーがでないように進めましょう、としました。

最初、私の方から会社全体に発表してから、個別に詳細説明をするような形で進めました。従業員の反発はなかったですね。「どんな風に変わるのですか」という質問を受けたくらいです。今のやり方を続けていても、会社の急速な成長は見込みづらいから、前向きに変化を捉えよう、というような趣旨の話はしました。それに対しては、従業員には納得してもらえたと思います。退職者はひとりもいないですよ。

親族にも特に反対されることはありませんでした。「もう譲ったのだから好きなようにやればいいんじゃない?」という反応でした。

根本社長にとって人生で初めてのことかと思いますが、今回の事業譲渡については振り返ってみていかがでしょうか。

根本:私としては、業界の動向等も鑑みると、独立独歩での事業の継続には不安を感じていて、どこかのタイミングで、誰かに力を借りる必要があると考えていました。もともと、いわゆる高く売ろうとか、ビジネスとしての売買みたいな駆け引きをするつもりは全くなかったです。小林社長と何度かお話しをする中で、私としてはマイナスと感じることがなく、これはプラスしかないと思いました。

敢えていえば、祖父から続く事業を譲渡することに対しては、個人的には若干罪悪感はありましたけど、従業員や設備、事業運営などいろいろなことを、すこし俯瞰して見れば、譲渡のメリットが非常に大きく、話を進める上で何ら障害はなかったです。

振り返れば、金銭的な何かを揉めることもなく、未来のビジョンに違いを感じることもなく。今回の4カ月弱という期間がスピード成約だと言われれば、そうなのかもしれませんけども、お互い合意して進んでいることなので、当事者の感覚としては事務的にいつ終わるかだけでした。違和感やなにか揉めた覚えは私にはないですが…小林社長はいかがでしょう。

小林:まったくその通りですね。根本社長もそこまでおっしゃっていただいているの?と驚くほど受け入れていただいて。

私たちは厚板という大きな物の溶接、機械加工のノウハウはありません。このM&A後も変わらず、根本社長には音頭とっていただかないと成功しないわけです。その部分で、まず信頼関係ができるかが私にとっては一番重要でした。根本社長は、信頼できる人だなと思って。そのまま残っていただく前提で進めていましたし、不安は感じなかったですよ。

私が根本製作所の工場のみなさんと会って語りかけたのは新年が明けた仕事始めの日でした。そこで混乱なく移行できたのは、根本社長が丁寧に社員さんの立場で説明してくださったおかげです。大変感謝をしています。

M&A後の根本製作所の経営体制について教えてください。

小林:私が社長で、キヨシゲの会長と専務も取締役で登記されています。根本社長には常務執行役員として実質の根本製作所のトップとして、今までと変わらず仕事をしていただいています。いろんな重要な経営判断がある場合には、私が決裁を行い責任を負う体制となっています。

今回は一般的な全部のプロセスを同じ会社が担当せずに、弊社は初回面談まで、その後、銀行さんにサポートいただいたと思いますが、なにかやりにくさなどはありませんでしたか。

小林:困難はなかったです。今回は弊社の取引銀行で議論を進めることにしましたが、もしこの進め方に対して根本社長が不安を感じるのであれば、根本社長の方でもFAなどの支援業者を依頼されることは全く問題ありませんでした。一方の立場に寄って、都合のいいようにすすめてしまうこともありますからね。でも、結果的には我々を信頼していただいて、弊社取引銀行で進めることにしました。

もちろん銀行へは、キヨシゲ側に立って動くということはしないで、双方の間に立って一番いい方法を考えコンサルティングして欲しいと伝えました。実際にそのように動いてくれたので、よかったと思っています。

 

― 引継ぎを終えられて、今後キヨシゲグループとしての展望について改めて教えていただけますでしょうか。

小林:現状は根本製作所さんの中で設備やノウハウ、素晴らしい職人さんたちの技術が埋もれてしまっているので、フル活用できる状態をまずは目指したいと思います。

今申し上げているのは5Sを徹底することや、敷地の有効利用に向けて、利用方法の再検討にも着手しています。私からも積極的に意見を出させてもらっているのですが、本当に従業員の方々はみんなとても協力的ですよ。訪問するたびに敷地内がどんどんきれいになっていきます。

また、これからは現状受注している建機の仕事で終わらずに、建築や土木の領域までも広げていきたいです。いまはうまくアクセスできてないだけで、まだまだ、世の中のお客様が求めるものに対して、私たちが提供できることがたくさんあると思っています。今まで以上に、キヨシゲと根本製作所のお客様とも結び付きを強くしていきたいと思います。

今、根本製作所というブランドを残して子会社にしていますが、対お客様との関係においてこのブランドを残すことが大切だと考えているからです。でも、私の頭の中ではキヨシゲも根本製作所も全部1つのOneキヨシゲです。

そして、これからますます後継者の問題や、様々な理由で残念ながら事業をたたまざるを得ない会社がたくさん出てくるはずです。技術もある、社員もいる、ノウハウもいいものを持っているが、なんらかの原因で閉めざるを得ない…と。私たちは今回3社目のM&Aとなったわけですが、これで打ち止めというわけではなく、出会いがあればどんどんキヨシゲに参画いただいて、同じOneキヨシゲとなって双方に良い相乗効果のある事業展開を図りたいと考えています。日本のモノづくりのノウハウ消失を防ぐ一助になればと考えています。

私たちの業界ですと、鋼材ひとつとっても、薄いものも使うけど厚いものも使うし、様々なパーツを使ってひとつのものを作ります。仕入れもするし、スクラップや産廃物も出る。全体を見ればまだまだ領域は広がります。

― 根本社長はいかがでしょうか。

根本:ちょっと、青臭い言い方になっちゃいますが。小林社長とは、何回か事業ビジョンの話や取引先の増やし方、その規模などのお話をしたとき、私の考えと同じだなと共感する部分がたくさんありました。目指している会社像や事業の将来など、ほぼ、自分が思っていた理想の会社像だったのです。

現状で言うと、ビジョンを実現し続けて、さらに伸ばしているのが小林社長。同じビジョンを夢として語っているのが自分。だから、小林社長と一緒にやれば、「実現だ!」と。キヨシゲグループとなることで、自分も夢の実現ができると思いました。

小林:そう言っていただけると、私も嬉しいですね。

 

― 今後M&Aをご検討されている、経営者様に向けてメッセージをお願します。

小林:あまり偉そうなことは言えませんが、会社というのは、従業員という仲間がいますから、その仲間の雇用が維持できるような方法というものを考えるのは重要なことで、M&Aは有効な手段だと思っています。

会社をたたんでしまうと、結局従業員はみな路頭に迷ってしまいますからね。その意味でも、経営者はM&Aを利用して、次にバトンを託すことを考える必要があります。もちろん、ずっと愛情をもって経営してきた会社を譲渡するという後ろめたさを感じるというのもあると思いますが、きちんと次にバトンを渡すのは、私は経営者として立派な決断と考えています。

根本:そうですね。少し手前味噌になりますが、今回は大成功のM&Aだと思っています。もちろんまだまだここからスタートなので、ちょっと早いですけど。こんないいパターンって、そうそうないような気がしています。ご譲渡を考えている方に、今回の事例をあたかも普通かのように語ってしまうと、譲渡に対する期待値を上げてしまい、話が違うじゃないかと言われてしまうだろうなと(笑)

そのくらい、満足度の高いM&Aだったと感じています。

―今回、お二人ともに大成功だと思われるM&Aとなりましたが、その最大の要因はどういった点でしょうか。

根本:ビジョンが一致したことが大きかったと思います。再び、男女の話になりますが(笑)、知らない人とお見合いで結婚するか、お互いに話をして熱愛のうちに結婚するかの違いに近いかと思います。月並みな説明にはなりますが、私はそう思いましたね。

今後の売却を検討される方に1つお伝えとするとしたら、「会ってお話をしてみた方がいいですよ」ということです。好条件で一緒になるよりも、想いが重なる方と一緒になったほうがいいのではないかとは思います。ただ、好条件を望んでいる方もいらっしゃるとは思いますから、そこはバランスをとっていくことが必要ですね。

小林:また男女の話になりそうですね(笑)

根本:高学歴・高収入に目を向けすぎずに、価値観が同じ人と…ということですね。

小林:変な駆け引きじゃなくて、何をしていきたいのか、それはなぜなのか、ということを膝詰めして話したことが良かったと私も思っています。例えば、譲渡金額のことばかりを争点で話していて、話がまとまったとしても、蓋を開けてみたら異なる事業展開の方向性を考えていたとなったら、新体制でスタートしても「こんなはずじゃなかった…」となってしまいますよね。それは不幸ですからね。本心で話す機会を早い段階でつくることをオススメしますね。


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事業譲渡における譲渡元企業の会計処理の基本的な考え方/仕訳方法を解説
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はじめに

事業譲渡とは、企業を構成する事業を他の企業に移転することを言います。事業譲渡では、必ずしも会社のすべての事業が譲渡されるわけではなく、一部のみのケースも存在し、会社法の規定に則って手続きが進められます。事業譲渡を行うには買い手企業を探し、事業範囲を決定しなければなりません。

事業譲渡は、まず、買い手企業(譲渡先)探しから始まります。事業譲渡の範囲や概要の条件を相手に提示してもらいます。この際に、買収価格や資産・負債の受け継ぎなどについても提示してもらい、意向表明書として相手から示されることになります。

この記事では、事業譲渡における事業を譲り渡す側(譲渡元)においてどのような会計処理が行われるのか、その基本的な考え方と仕訳方法をわかりやすく解説していきます。

事業譲渡における会計処理の基本的な考え方

事業譲渡は、会計の世界では「事業分離」と呼ばれます。ですが、今回はわかりやすくするために、事業譲渡と呼んでいきましょう。

事業譲渡は、ある企業の事業の一部を他の企業に移転することを言うと会計基準において定義されています。事業を譲渡する場合、事業の移転先がどのような会社であるかによって、会計処理の仕方が異なります。つまり、仕訳も異なるということです。

インターネット上の多くの記事では、事業の移転先が子会社でも関連会社でもないケース(すなわち、投資を精算するケース)を取り扱っていて、会計処理の仕訳方法を完全には説明していません。しかし、実際には、移転先がどのような会社かによって会計処理の仕方が異なるので注意が必要です。

事業譲渡が行われた際に譲渡元企業が適用すべき会計処理は、譲渡元企業からみて移転した事業に対する投資が継続しているか、それとも投資が精算されているかに基づいて決定されます。

もし、投資が継続している場合には、“投資を精算した”とは考えないので、譲渡元企業に損益は発生しません。つまり、投資が継続していれば、譲渡元企業に損益が発生しない簿価承継によって事業は譲渡されることになります。

一方で、投資が精算されている場合には、“投資が継続していない”と考えるので、譲渡元企業に損益が発生します。つまり、精算したとみなされれば、時価による譲渡もしくは交換として会計処理が行われます。

事業譲渡の際の仕訳方法

譲渡元企業側からみれば、事業譲渡は「事業を譲渡し」、「対価を受け取る」という取引です。したがって、以下の仕訳が基本となります。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

受け取った対価

☓☓☓

分離した事業

☓☓☓

次の例について考えてみましょう。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、現金等の財産(時価は150、A社における帳簿価額は120)である。

この場合、受取対価は現金等の財産であるため、投資は清算されたと判断します。よって、対価は時価の150で計上し、損益を認識することになります。仕訳は以下のとおりです。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金等の財産     

150

事業X

100

 

 

差額(損益)

50

同じように次のケースについて考えていきます。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • 取引後のA社に対する持分比率は20%未満なので、A社株式はその他有価証券として保有する。

今回受取対価はその他有価証券であるため、投資は清算されたと判断します。よって、対価は時価の150で計上し、損益を認識します。仕訳は以下の通りです。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式

150

事業X

100

 

 

差額(損益)

50

さらに、投資が精算されずに、継続しているケースについても考えていきましょう。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • 取引後のA社に対する持分比率は50%超なので、A社株式は子会社株式として保有する。

今回は、受取対価は子会社株式であるため、投資は継続していると判断します。よって、対価は簿価の100で計上し、損益は認識しません。仕訳は以下のとおりです。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式

100

事業X

100

分離先(譲渡先)企業の株式のみを受取対価とする事業譲渡において、分離先企業が新たに分離元(譲渡元)企業の子会社となる場合、経済実態として、分離元企業における当該事業に関する投資がそのまま継続していると考える必要があります(事業分離等会計基準87項)。そのため、損益を認識することをしないのです。このため、個別財務諸表上、当該取引において、移転損益は認識されず、当該分離元企業が受け取った分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定します。

子会社となるケースについてみてきたので、次に関連会社となるケースについても考えていきましょう。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • 取引後のA社に対する持分比率は20%以上なので、A社株式は関連会社株式として保有する。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式

100

事業X

100

今回も受取対価は関連会社株式であるため、投資は継続していると判断します。よって、対価は簿価の100で計上し、損益は認識しません。

おわりに

事業を譲渡することで譲渡側はその対価を得ることになります。事業を譲渡する際には、譲渡先に譲り渡した事業に対して投資が継続するのか、精算されるのかによって会社処理の仕方が異なるので注意しなければなりません。精算される場合には、損益を認識しますし、投資が継続される場合には損益を認識しません。仕訳の方法が異なることをきちんと理解しておきましょう。

関連コラム:事業譲渡とは?事業譲渡の概要と手続きについて解説

 

M&Aの基礎知識
2022/08/06
垂直統合戦略と水平統合戦略とはなにか?基本的考え方について
垂直統合戦略と水平統合戦略とはなにか?基本的考え方について

はじめに

M&Aのプロセスは、買収の種類と事業戦略によって、「水平統合」と「垂直統合」に分類することができます。水平統合は、企業規模の拡大、製品ラインナップの多様化、競争の緩和、新市場への進出を目的としたM&Aです。一方で、垂直統合は、利益を高め、消費者へのアクセスをより迅速にすることを目的としたM&Aであると言えます。この記事では、M&Aのプロセスを垂直統合と水平統合に分け、その効果について説明していきます。

M&Aにおける水平統合と垂直統合の概要

水平統合と垂直統合は、企業が自らの地位を固め、競合他社との差別化を図るために用いる競争戦略です。どちらも、他の事業の買収を伴う、つまりM&Aを活用した企業の成長戦略であると考えることができます。

垂直統合は、同じサプライチェーンに沿って複数の企業が結合することであるのに対し、水平統合は、企業が同じ業界で顧客基盤、市場規模、または製品の多様性を高めるために類似した他の企業(多くの場合競合)をM&Aによって取得することを意味します。

さらに、水平統合は、製品の差別化を図ったり、市場支配力を拡大したりするために行われる場合もあります。水平統合は、多くの場合同じ業界内で行われますが、異業種や関連業界で行われるケースもある行為です。したがって、その意図は、必ずしも自社のサプライチェーンをより多くコントロールすることによるコスト削減ではないものの、水平統合を行う企業は、消費者基盤、資産や資源の増加、または収益の増加を期待して行うことが多いと考えることができます。

水平統合と垂直統合という2つの戦略は、企業の拡大を助けるものではあるものの重要な違いがあります。

水平統合は、企業が関連する企業、つまり競合他社を買収することによって成長することを目指す戦略です。一方、垂直統合は、企業が生産や流通の1つまたは複数の段階を支配することで、産業プロセスのすべての部分を所有することを目指す成長戦略です。

水平統合の基本的考え方

水平統合は、規模の経済、競争力、市場シェアの拡大、事業の拡大をもたらす競争戦略です。より多くの資源、市場、能力、効率性を目標に水平統合を行います。水平統合とは、言い換えれば、似たような2つのビジネスが1つの会社になることである。たとえば、ナイキとアディダスの合併は、水平統合の一例です。

両社は、スポーツウェアの製造・販売を営んでいます。M&Aを行って水平統合を実施した2つの事業体は、独立して事業を行う場合よりも、より多くの収益を実現できるような体制になるはずです。水平統合は活動の最適化、または会社のプロセスおよび活動の範囲内の戦略的なビジネス活動の統合を促進する可能性があります。

垂直統合は、サプライチェーン上で同じ段階にある限り、水平統合は産業間でも起こりうることに注意しましょう。たとえば、サウジアラビアの石油・ガス採掘業者が、ブラジルのコーヒー豆栽培業者を買収することがあります。両社は原材料の供給業者であり、サプライチェーン上で同じ段階にあるにもかかわらず、業種が異なっていますが、サプライチェーン上の同じ段階の事業者同士によるM&Aの実行は当然あり得るものです。

具体的な例として、ディズニーがピクサー(映画製作)と、エクソンがモービル(石油生産、精製、流通)と、あるいは悪名高いですがダイムラー・ベンツとクライスラーの合併(自動車の開発、製造、小売)が水平統合の有名な事例です。

もし、同じ業界に属していて、同じ事業を営む企業同士が水平統合した場合どうなるでしょうか。たとえば、ボーイング社とエアバス社は共に飛行機を製造しており、合計で99%の市場シェアを誇っています。もし、この2社が水平統合をすれば、独占が可能になるのです。

こうした水平統合は、特定の産業において独占的な力を生み出し、消費者にとって不利益となる場合があることに注意が必要です。競争の低下により、談合行為が誘発され、製品価格の上昇につながる可能性があります。

垂直統合の基本的考え方

垂直統合とは、企業が自社製品のサプライチェーンを所有する戦略的構造であり、通常、異なる生産段階に関与する1社または2社の企業で構成されます。

サプライチェーンには、原材料の調達から製品化、販売までのすべての段階が含まれます。その意味で、垂直統合型の企業は、サプライチェーンの複数(またはすべて)の部分を所有する戦略です。

たとえば、ある企業が綿花の生産者とTシャツの製造会社を買収し、その製品を自社で販売することがあります。つまり、元の会社(現在は、同じ垂直方向に沿った複数の会社のコングロマリット、または同じ種類の製品)が、商品、製造、流通、小売というサプライチェーンの4つの部分を支配することになるのです。

垂直統合を行うと、サプライチェーンをよりコントロールできるようになり、より低い価格で製品を提供できるようになります。市場における市場支配力が高まるなど、企業にとって多くの利点があります。

垂直統合の方法は、企業の種類によって、後方統合と前方統合の2つに分かれます。

(1)前方統合

企業がサプライチェーンの前方に進出する場合(例えば、メーカーが小売業を買収した場合)、前方統合を行うことになります。これは通常、鉱業会社がさらに「下流」の工場を支配するような、サプライチェーンの始点に近い会社が行うものです。この場合、メーカーは流通経路をコントロールすることで、中間業者を通さずに直接消費者に製品を提供することができるようになります。

(2)後方統合

逆に、企業が後方(または「上流」)に拡大し、サプライチェーンのさらに後方の生産部分を支配する場合(たとえば、小売企業が商品のメーカーや生産者を買収した場合)、それは後方統合を行ったことになります。企業が原材料の供給者と合併する場合、プロセスの一部を外部調達するのではなく、必要なものをすべて自社で調達するため、多くのコストが削減されるのが一般的です。この意味で、大手小売企業や流通企業は、輸送費を節約し、供給者を抑えるために、自社商品の生産者やメーカーの買収を行います。

5.おわりに

水平統合と垂直統合は、ある企業が他の企業を統合する2つの成長の方向性を示すものです。水平方向の合併は、互いに競合する2つのビジネスに関するものです。一方、垂直合併は、同じサプライチェーン内で動作する2つのビジネスに関するものです。水平方向のM&Aは、競合する2つの会社が一緒になって1つの会社を作るときに起こり、垂直方向のM&Aは、異なる生産段階にある2つの会社が一緒になって1つの会社を作るときに起こります。

収益を上げたい、または製品の幅を広げたい場合は、M&Aを活用した水平統合の機会を探すとよいでしょう。この場合、M&Aの候補となる企業は、自社と同様の製品・サービスを持ちながら、自社が希望する製品・サービスを追加していたり、現在自社が参入していない地域で事業を展開しているところが良いでしょう。

コスト削減によって競争力を高めたい場合、あるいは重要な供給源へのアクセスを確保する必要がある場合は、垂直統合を検討する必要があります。この場合、M&Aの候補となる企業は、自社の製品を製造するのに必要となる原材料を作っていたり、自社の製品の販売をするのに必要となる販売先であることになります。

どちらの水平統合にせよ、垂直統合にせよ、一長一短の戦略です。その効果をきちんと理解して活用することが大切です。

M&Aの基礎知識
2022/07/30
M&A・事業承継の“マッチング”を支援する相談先・プラットフォームの普及
M&A・事業承継の“マッチング”を支援する相談先・プラットフォームの普及

はじめに

会社の事業を承継することを考えるとき、誰に承継するかは非常に重要です。自分の血縁関係の中で事業を承継するケースもあれば、会社の従業員に事業を承継するケースもありますし、全くの会社の外部の人あるいは会社に事業を承継するケースもあります。

このうち、3つ目の会社の外部に人あるいは会社に事業を承継するケースでは、一般に、事業承継を行う譲渡側と、事業承継を受け入れる譲受側があり、両者のニーズが一致するように調整しなければなりません。その調整をマッチングと言います。会社の外部の人あるいは会社に、事業を承継するケースでは、この両者の合意がない限り、事業承継が成立しません。昨今の事業承継ニーズの高まりから、より効率的に、より納得感が得られるように両者を結びつけることを目的として、多くの事業承継マッチング業者、あるいは、マッチングプラットフォームが誕生しています。

そこでこの記事では、会社の外部の人あるいは会社に事業を承継する際に、近年盛んに利用されるようになっている事業承継マッチング業者、マッチングプラットフォームについて解説します。

M&A・事業承継におけるマッチング

会社や事業を売りたい(承継したい)と考えている会社が、会社や事業を買いたいと考えている会社に出会うためには、両者を引き合わせなければはじまりません。このように売りたい側と買いたい側が出会い、条件等双方の合意が得られた状態がマッチング成功となります。

一般に、会社を売りたい人と買いたい人のマッチングを自ら行うことは難しいことから、M&A。事業承継の専門家に相談することになります。近年、事業を売りたいという事業者と、事業を買いたいという事業者をマッチングさせる事業承継マッチング業者やM&Aマッチングプラットフォームと呼ばれるサービスを提供する企業が増えてきています。

事業承継マッチング業者は、中小企業の事業承継(M&A)を支援する機関であり、民間のM&A専門仲介機関や、金融機関、士業の専門家などが存在しています。マッチング業者の担う業務は、相手先企業のマッチングから行う場合もあれば、デユーデリジェンスや契約締結等の特定の業務に特化している場合もあり、その関わり方は様々です。事業承継マッチング業者に支払わなければならない仲介等の手数料についても、仲介者かアドバイザーかといった契約関係だけでなく、案件の規模や報酬体系(着手金・中間金・成功報酬等)によって異なります。

また、事業承継のマッチング業務は、案件の規模にかかわらず同程度の業務が発生するため、最低手数料を設けている専門仲介機関も多くなっています。そのため、近年では、インターネット上でのマッチングも行われるようになってきており、低コストでマッチングを図ることで小規模事業者でも事業承継を実施できる環境も整いつつあります。

いずれにせよ、事業承継を推進していくためには、金融機関、専門仲介機関、士業専門家といった、当事者以外の支援が重要です。こうした支援機関の事業承継への理解を深めるとともに、支援機関同士が連携し専門性の補完やマッチングを図ることで、様々なニーズに対応していくことが期待されています。

事業承継マッチング支援の相談先(専門家)

ここでは、まず事業承継マッチング支援をする代表的な相談先(専門家)について説明していきます。

① 公認会計士

公認会計士は、監査及び会計の専門家として、財務書類の監査証明業務のほか、財務に関する調査や相談に応じており、事業承継の様々な場面で、広い見識に基づく支援が期待できます。特に、経営状況・課題の把握(見える化)や経営改善(磨き上げ)をはじめ、非上場株式の評価・M&Aにおける売却価格試算等の複雑な状況での公正な評価、経営者の個人保証の解除、適正な会計の導入支援といった、将来の事業展開も踏まえた幅広い助言が期待できます。

② 司法書士

司法書士は、商業登記、不動産登記等の実務家として、事業承継における株式及び事業用不動産の承継、M&A、種類株式及び民事信託の活用、担保権の処遇等についてサポートしています。また、日本司法書士会連合会においては、商業登記・企業法務対策部、民事信託等財産管理業務対策部等を設置して事業承継に関する支援事業を行っています。

③ 税理士

税理士は、顧問契約を通じて日常的に中小企業経営者との関わりが深く、決算支援等を通じ経営にも深く関与しています。経営者向けアンケートにおいても、事業承継の相談先として選ばれやすい存在です。また、日本税理士会連合会にて構築した顧問税理士同士によるマッチングサイト「担い手探しナビ」の利用等を通じて、 多くの税理士が、後継者不在の中小企業に対するM&A支援に着手するなど積極的な事業承継支援を行っており、主体的な関与が期待できます。経営者に最も近い存在として、事業承継ニーズの掘り起こしのほか、相続税に関する助言や株価の評価、生前贈与のやり方や種類株式の発行に関する助言、中小企業会 計要領・中小企業会計指針の活用支援等、事業承継に関係する幅広い領域にわたる支援をしてくれます。

④ 中小企業診断士

中小企業診断士は、「中小企業支援法」に基づき、中小企業のホームドクター として、様々な経営課題への対応や経営診断等に取り組んでいる事業者です。事業承継に関しては、事業承継診断やプレ承継支援(事業承継計画の策定支援、 後継者教育支援、磨き上げ支援等)、ポスト承継支援のほか、M&A等に関わる支援も期待されています。

⑤ 弁護士

弁護士は、中小企業や経営者の代理人として、事業承継を進めるにあたり、経営者と共に金融機関や株主、従業員等の利害関係者への説明・説得を行い、円滑な事業承継を進める役割を担います。特に、株主関係が複雑な場合や、会社債務・経営者保証等に関する金融機関との調整・交渉が必要な場合、M&Aを活用する場合等においては、法律面全般の検討と課題の洗い出し、それらを踏まえたスキーム全体の設計、契約書をはじめとする各種書面の作成といった支援が期待される。また、日本弁護士連合会は、事業承継に関するプロジェクトチームを設置し、中小企業の事業承継に関する課題分析と改善策の検討、有用なスキーム・事例の周知活動、具体的な相談体制の整備等に取り組んでいます。

⑥ 金融機関

金融機関は、中小企業に日常的に接して経営状況を把握しており、中小企業に対してきめ細やかな経営支援等を実施し得る立場にあります。また、金融機関が取引先企業の事業実態を理解し、そのニーズや課題を把握し、経営課題に対する支援を組織的・継続的に実施することは、取引先企業の価値向上、ひいては我が国経済の持続的成長につながるとともに、金融機関自身の経営の安定にも寄与するものです。このような観点から、金融機関は取引先中小企業の事業承継問題に対しても積極的な支援を実施することが期待されています。

⑦商工会議所・商工会

商工会議所・商工会は、経営指導員の日々の巡回指導等を通じて中小企業経営者との間に信頼関係を構築している身近な存在です。このため、事業承継ニーズの掘り起こしのほか、事業承継セミナーの開催や事業承継施策に関する情報提供、専門家の紹介、事業承継・引継ぎ支援センターとの連携等が期待されています。

代表的な事業承継マッチングプラットフォーム提供事業者

近年では、IT技術を活用しインターネット上で事業承継マッチングを行う業者も誕生しており、低コストでマッチングが実現できる環境も整いつつあります。

事業承継マッチングプラットフォームは、事業や会社の譲り渡し側・譲り受け側がインターネット上のシステム(プラットフォーム)に情報を登録することによって、マッチングをはじめとする事業承継の手続きを低コストで行える支援システムです。従来、事業承継においては、事業者自身が譲り渡しや譲り受けの情報にアクセスすることが困難でした。その橋渡しを事業承継支援業者(金融機関、M&A仲介業者など)が担っていたのです。結果として、情報量の少なさからマッチングの可能性が低くなってしまったり、マッチングにかかるコストが大きく、業者に支払うべき高額の報酬につながってしまったり、といった課題がありました。こういった従来のM&Aの問題点を解決するために誕生したサービスが、マッチングプラットフォームです。

それでは、現在の日本でマッチングプラットフォームを提供している代表的な事業者を2つ紹介します。

①BATONZ(バトンズ)

BATONZは、無料で利用できる成約数No.1のM&A・事業承継支援サービス提供事業者です。企業と第三者のマッチングを支援し、M&Aによる事業継承をサポートします。バトンズでは小規模・零細企業の案件だけでなく、中小企業も含めた幅広い規模の案件も掲載しており、個人・個人事業主・法人といった、あらゆる属性の人が利用している事業者となっています。業界の標準価格よりもかなり安い金額で成約までたどり着くことができるうえに、充実したサポート体制が魅力となっています。

②TRANBI(トランビ)

TRANBIは、挑戦したい個人・中小企業のためのM&Aや事業開発を中心とするイノベーションプラットフォームです。インターネットを通じて、事業を買いたい人と売りたい人がマッチングする事で、 これまで多額の資金を必要としたM&Aの費用を大幅に削減することに成功しました。会員数も2022年7月時点において、106,246名と業界最大級を誇っています。

昨今、M&Aのマッチングプラットフォームは乱立しており、上記以外にもたくさんのプラットフォームがあります。

頑張っていく事業承継

おわりに

事業承継において、会社や事業の譲り渡し先を決めるのは容易ではありません。会社のことを理解していないところに事業を承継してしまえば、会社に残った従業員が不幸になることはもちろん、これまで会社に培われてきたものが台無しになってしまいます。だからこそ、マッチングを支援してくれる事業者の存在は、事業承継において欠かせないのです。

事業承継においてマッチングサービスを提供している事業者は数多く存在します。従来は、専門業者に依頼するケースも多かったものの、自分たちで直接プラットフォームサービスを利用するケースも多くなっています。会社の将来を左右する事業承継ですので相手探しは重要です。

M&Aの基礎知識
2022/07/31