M&Aの基礎知識 2022/07/30

M&A(エムアンドエー)とは? M&A実行の流れと利害関係者・手法別のメリット・デメリットを徹底解説

M&A(エムアンドエー)とは? M&A実行の流れと利害関係者・手法別のメリット・デメリットを徹底解説
                    

後継者不足の解決や事業上のシナジー効果により事業拡大に寄与するM&Aは、近年注目を集めています。M&Aを進めるための手続きや流れに手法(事業譲渡、株式譲渡、会社分割、第三者割当増資)についても理解を深めておくことで、それぞれのケースに応じて最適な方法を検討することができます。また、M&Aを行う際は、買い手と売り手がメリット・デメリットを検討し実行していきますが、その他の利害関係者(取引先、士業、金融機関)への影響も重要な判断材料となります。今回はM&Aの流れや手法、利害関係者のメリット・デメリットをご紹介します。

M&A(エムアンドエー)とは

Merger(合併)and Acquisitions(買収)の略で、企業の合併・買収を意味します。M&Aの基本的な流れは、M&Aの検討、条件交渉、経営者同士の面談など様々なプロセスがあります。取引をスムーズに進めるための各段階におけるポイントを含めて解説します。

M&Aの具体的な流れは以下の通りです。

  1. プレディール:M&Aの検討
  2. オリジネーション:資料の準備/案件化
  3. マッチング:相手先探し/秘密保持契約の締結
  4. エグゼキューション:経営者同士の面談/M&Aの条件交渉/基本合意の締結/デューデリジェンス/最終契約の締結

M&Aの流れ

各プロセスでの手続きの内容やポイントについて解説します。

プレディール

M&Aの検討

M&Aは、あくまでも経営戦略の実現のためのひとつの手段です。会社の将来や事業目標を達成するために、M&Aという選択がベストなのかどうかを検討しましょう。目標達成のためにM&Aを選択するか否かを多角的に検討することで、M&Aという手段が目的化することを未然に防ぐことができます。M&Aを検討する段階では、顧問税理士やメインバンクなど外部の専門家に相談することもあります。外部に相談することで他社の例などを参考に、売却(買収)価格の目安やメリットを検討することができます。

M&Aの相談

M&Aを進めるためには、会社の財務や税務などに関する専門的な知識が求められます。相手企業との交渉や手続きにも時間や労力を要しますが、忙しい経営者が経営の片手間でM&Aの取引を進めることは容易ではありません。自社で実行できない場合は、M&Aの検討段階から、外部の専門家に相談し、委託契約を締結することが望ましいでしょう。専門家の代表的なものとしてはフィナンシャルアドバイザーやM&A仲介会社などがあります。

オリジネーション

交渉相手の選定

買い手候補先企業の探し方は大別すると3つの方法があります。それは①自分のネットワークで探す、②M&Aプラットフォームで探す、③M&A専門家を活用するです。

自分のネットワークで探すことで相手が見つかればよいのですが、通常は②か③の方法を採用することになります。その場合、買い手候補先企業への初期的な情報開示はノンネームシートで行われることが一般的です。

交渉相手へのアプローチ

「ノンネームシート」を作成します。

ノンネームシートとは、自社の業種や本社所在地、事業規模、業績推移、売却理由、売却希望価格などの企業概要を企業名を伏せて記載した書面です。M&A専門家に依頼をすれば無料で作成してもらえるケースがほとんどですので、初めてM&Aに取り組まれる方はM&A専門家に依頼をしてみるとよいでしょう。

マッチング

秘密保持契約の締結

買収を検討する企業からノンネームより詳細な情報を求められた場合には、秘密保持契約(NDA、CA)を締結します。M&Aの取引は自社の従業員や取引先、金融機関などの利害関係者に大きな影響を及ぼします。M&Aは秘密保持にはじまり、秘密保持に終わると言われますが、秘密保持契約を締結の上、M&Aの一連のやり取りが完結するまでは情報の開示先はたとえ社内であっても最低限に留めることを心がけましょう。

エグゼキューション

経営者同士の面談

秘密保持契約書を締結し、双方の社名や会社情報等を開示した上で、されにM&Aの検討を進めたいという際には、経営者同士のトップ面談が行われます。1回のみの場合もありますし、複数回行なわれる場合もあります。特に中小企業の場合には、経営における経営者の影響度が大きいため、トップ面談を行う中で双方の会社運営の考え方、経営理念、企業カルチャーなどについて認識や理解を深めることも重要なポイントになります。トップの間で信頼関係を醸成し、双方が納得行くまで会談を行うことが後続のM&A取引を進める上でも重要です。

M&Aの条件交渉

条件交渉の段階では具体的に以下のことを決定します。

  • 買収価格
  • 経営者・役員・従業員の処遇
  • M&Aの方法やスキーム
  • 最終契約締結までの流れ
  • 守秘義務

交渉段階ではこのような詳細事項を決定し、次のステップである基本合意の締結に向けて動き出します。一般的には買い手企業の側から希望する買収価格やスケジュール、M&Aの方法などが提示され、譲渡企業が合意するという流れで進みます。

基本合意の締結

交渉段階で詳細事項について合意形成ができたら、双方の間で基本合意書が締結されます。基本合意書には法的拘束力があるものと、そうでないものがあります。仮に、法的拘束力がない場合でも無碍にしていいというものではなく、M&Aの成約に向けての意思表明となる重要なプロセスです。一般的に記載される事項は以下の通りです。

上記の中でも独占交渉権の付与は買い手企業に、M&Aにかかる一定期間の独占的な交渉権を与えるものになりますので検討状況によっては他の買い手候補先企業にお断りをいれるなど契約違反とならないように注意が必要です。

デューデリジェンス

基本合意書を締結したらデューデリジェンスに進みます。デューデリジェンスとは買い手企業が売り手企業の財務、法務、税務などを調査し、訴訟の可能性や簿外債務がないかをチェックする手続きです。簡潔に言えば、売り手企業のリスクや問題点の洗い出しということです。

デューデリジェンスを怠ると買収後にトラブルに発生する可能性があるので、買い手企業が確認をしたい各分野の専門家が行うことになります。例えば財務や税務であれば、会計士や税理士が、法務であれば弁護士が行う形になります。

最終契約の締結

デューデリジェンスの結果、買収に問題がないと判明すれば最終契約を締結します。その後然るべき手続等を行い、M&Aをクロージングします。最終契約書の締結日と、譲渡代金の払込日は同日のケースもあれば、別日にずれるケースもあります。株式や事業の権利の移転にあたっては取締役会や株主総会の同意が必要となることもあります。

最終契約書には主に以下の内容が盛り込まれます。

  • 買収価格
  • 譲渡する対象物
  • 誓約事項
  • 表明保証クロージングの前提条件

取り引き先や、従業員はそのまま引き継がれるケースは多いのでご安心ください。

M&Aにおける利害関係者別メリット・デメリット

M&Aを行う場合の買い手と売り手、その他利害関係者にとってメリット・デメリットについてご紹介していきます。M&Aの主な利害関係を整理すると以下の通り、買い手・売り手・取引先・顧問先(会計事務所、税理士事務所等)・金融機関という人たちがいます。

M&Aの利害関係者

買い手(譲受企業)

買い手のメリット

時間と労力を買える、シナジーや節税効果の可能性

M&Aを行うにあたって、多くの買い手に当てはまるメリットは時間と労力を買うことができる点です。通常事業を拡大する、新規事業を立ち上げるためにマーケティング、技術開発、従業員の教育などで多くの時間が必要になります。M&Aを実行することによりすでに完成している状態の事業や企業を買収できるので、時間の短縮が可能です。

現行の事業と買収企業とのシナジー効果や、買収企業に繰越欠損金がある場合には節税効果を図れる可能性があることなどもメリットといえます。

買い手のデメリット

資金投入にリスクを負う

M&Aで企業の譲り受けるには相応の資金が必要です。特に規模の大きな企業や評価の高い企業の譲り受けほどその傾向は顕著ですが、中小企業であっても予想以上の評価額がつくケースもあります。

そのため買収資金と買収後の想定パフォーマンスの比較、想定パフォーマンスを実現できる確率についてはよく検討する必要があります。上場企業のケースでも大型M&Aによって負債が膨らみ、本社ビルなどの資産売却を迫られる事例も見受けられます。

売り手(譲渡企業)

売り手のメリット

後継者問題の解決、売却代金の獲得と個人保証の解消

M&Aによって、業績が良く意欲も高い企業に事業や会社を譲渡することで、後継者不足の問題の解消につながります。市場環境が不透明な中、最近は無理に家業を継がせて我が子に苦労をさせたくないという考え方をもつオーナーも増えている状況です。実子や親族による承継が減っており、M&Aは事業承継問題の課題解決の手段となっております。

また、売却代金の獲得と負債の引継ぎによる個人保証などの解消についても大きなメリットと考えられます。M&Aによるハッピーリタイアメントに向けて経営者利益の獲得ができることは見逃せません。

売り手のデメリット

対応に心理的・実務的なコストを要する

M&Aにおいて売り手のデメリットとしては、対応にコストがかかること、コストをかけたといって必ず希望価格で売れることは保証されていないことがあげられます。仲介会社等に依頼したとしても、価格や条件について折り合いがつかず、スムーズに買い手企業が見つからないケースは多々あります。成約まで平均的には早くても半年、1年以上かかる場合も多くあり、その間の資料提出にかかる準備の時間や、交渉の中での心理的な負担など、M&売り手企業のオーナーに心理的・実務的なコストが発生します。

取引先

取引先のメリット

買い手・売り手:サービスの充実やコスト削減、販路の拡大

買い手・売り手双方の顧客にとって、M&Aを行うことで取引している企業の商品ラインナップが増加する場合や、生産ラインを統一したり仕入先を最適化したりすることでコストが削減できる可能性が存在します。販売網が強化できれば顧客が増える可能性に繋がります。また、売り手が主要な取引先にあたる場合、売り手の事業が存続することによりその後も継続して取引を行うことができる面もメリットといえます

取引先のデメリット

買い手・売り手:競合可能性や名称の刷新によるネガティブな影響

デメリットとしては、取引条件の変更や、買い手、売り手のどちらかともう一方の取引先が競合関係にある場合に取引が継続できなくなってしまう、また、売り手側の事業の一部が廃止になり、これまでと同じ商品やサービスが利用できなくなってしまうといったこともあります。

また商品の機能や性能は同じでも、M&Aによる統合によってブランド名や店舗名を刷新するというケースがあります。その場合、信頼関係を築いてきた顧客が違和感を抱くおそれもあります。

顧問先(会計事務所、税理士事務所等)

顧問先(会計事務所、税理士事務所等)のメリット

  • 買い手:顧問範囲の拡大
  • 売り手:アドバイザリー業務の受託

買い手側の顧問士業のメリットとしては、M&Aに伴う、会計及び税務のデューデリジェンス等を依頼される可能性があります。加えて、M&Aにより子会社や事業が増え、顧問範囲が広がる可能性があるでしょう。

売り手側の顧問士業のメリットとしては、顧問先をM&A仲介会社等に紹介することで、M&Aが成約した場合に手数料のフィーバックがもらえることがあげられます。また、顧問先のM&Aが成約すれば、顧問先の廃業リスクが減り、将来の事業継続可能性が高まり、顧問業のニーズも維持できる可能性があります。さらに、顧問先の廃業を防ぐためのM&Aの提案をしたことでオーナーから信頼を獲得することもあり、安定的な顧問業の継続に寄与することも考えられます。

顧問先(会計事務所、税理士事務所等)のデメリット

  • 買い手:作業や対応範囲の増加
  • 売り手:顧問先喪失リスク

買い手側の顧問士業のデメリットとしては、M&Aの検討フローの一貫として、買収対象企業やその取引先に海外企業が入っているなどの理由で専門外の業務を依頼されるケースがあります。また、M&Aに伴う業務が依頼されることが多い場合は、通常の業務を逼迫する恐れがあります。

売り手側の顧問士業のデメリットとしては、顧問先のM&Aのニーズに正しく対応出来ない場合は、顧問先が知らぬ間に他社に買収されることで顧問業務が減少する点です。

逆に、顧問先のM&Aのニーズに正しく答えていくことで、オーナーの信頼を勝ち得たり、紹介手数料獲得したりするチャンスに繋がります。自社でM&A業務等に対応していない場合でも、M&A業務等に対応可能なパートナーや事業者と協業し、外部のリソースを上手く活用することで顧問先に対して適切なサービス提供を行なうことが解決手段の1つになります。

金融機関

金融機関のメリット

  • 買い手:融資機会、アドバイザリー業務の受託
  • 売り手:アドバイザリー業務の受託

買い手側の金融機関のメリットとしては、顧客がM&Aによる企業買収をしている場合ほとんどのケースで買い手は資金調達を検討しており、金融機関としては買収を検討する企業に対して融資を実行できる可能性があります。また売り手側の金融機関のメリットとして、売り手の企業が金融機関の融資を返せないまま廃業する可能性がある場合、優良な買い手企業に買収される選択肢を選んでもらうことで貸し倒れを防ぐこがのできる有効な手段です。

また買い手側、売り手側問わずM&Aを行う企業に対し、金融機関がアドバイザーとして関われば、M&Aアドバイザリーの手数料を受け取れます。

金融機関のデメリット

買い手・売り手:顧客の借り換えリスク

買い手側の金融機関のデメリットとしては、M&Aによる資金ニーズ等に答えられない場合は、他行に借り換えをされてしまう可能性があることです。

買い手が検討しているM&A案件の買収資金の融資検討の際に、メインバンクは融資不可、サブバンクは融資可能という判断となる場合があります。その場合、買い手が買収資金の融資と含めてその他の現状の借入についても借り換えを依頼するケースもあるようです。

売り手の金融機関のデメリットとしては、融資先がM&Aによって売却された場合、買い手の事情で買収後に借り換えをされてしまう可能性も出てくることがあげられます。

M&Aにおける各手法別メリット・デメリット

ここからはM&Aを行うにあたっての各手法についてとメリットとメリットについてご紹介していきます。
M&Aの主な手法を整理すると以下の通りとなります。

M&Aの各手法

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手が株式を売却し買い手がその対価で現金を渡し経営権を得る手法でM&Aの中で最も活用されています。

株式譲渡のメリット

  • 買い手:シンプルなプロセスでの支配権の獲得
  • 売り手:被買収企業がある程度独立性を保てる

株式の譲渡による経営権の譲渡であるため、株主(≒経営陣)のみが変化し、会社内の資産や組織構造には変化がないことが買い手と売り手に選択されやすい特徴です。買い手のメリットは他の手法と比較して、主な手続きが取締役会の決議のみであることなど比較的プロセスが簡単であることです。また売り手にとってもメリットは債権者保護手続きが不要になるなど会社法の手続きが比較的簡便である点や買収後も被買収企業の独立性が維持しやすい点があります。

株式譲渡のデメリット

  • 買い手:必要のない資産や、異なる企業文化の受け入れ
  • 売り手:経営判断に関与できなくなる

株式譲渡の買い手のデメリットは買収した会社が抱えている負債や事業に関して、必要のない資産を引き受けるリスクがある点があります。また、異なる企業文化の企業が買収後も存続するため、シナジー効果の発揮や融合がスムーズに進まない可能性もあります。

また、売り手のデメリットとしては、株式譲渡後は経営権が買い手側に移ることで経営判断には基本的には関与できなくなる点が大きなデメリットとしてあげられます。

事業譲渡

事業譲渡とは、特定の事業に使用する資産、負債を一体として譲渡する手法です。譲渡対象資産としては、特定の事業に紐付くような、在庫や不動産といった有形資産だけでなく、ソフトウェアのような無形資産、ノウハウや特定の人材、技術、契約なども譲渡対象となりえます。

M&Aではよく利用される手法ですが、特に株式譲渡との比較で、特定の資産のみを取得したい場合に利用されます。

事業譲渡のメリット

  • 買い手:譲受範囲を選択できる
  • 売り手:譲渡範囲の選択と集中が可能

買い手にとっては特定の資産のみを取得したい場合に利用されます。必要な資産だけを買収できるため、買収コストを抑えることができる点や、不要な資産や簿外債務を引き継ぐリスクがない点があります。売り手にとっては、譲渡対象の資産が少ないケースでは、会社法上の手続きが簡便である点や、事業の選択と集中として不要事業だけの売却が可能である点がメリットといえます。

事業譲渡のデメリット

買い手・売り手:手間とコストがかかる

買い手にとっては資産の引継ぎの際に他の手法と比較してコストがかかりやすい点がデメリットとしてあげられます。多数の資産の引継ぎを伴う場合、所有権の移転手続きが必要になる点や、従業員や取引先を承継する場合には契約の移転手続きが必要など手間と時間がかかります。また不動産の移転を伴う場合、不動産取得税や登録免許税などが発生します。資産の買収には消費税が課されるため、その分の資金も用意しなければなりません。

売り手のデメリットとしては譲渡の対象が一部事業である分、その後残る事業運営に影響が出る可能性があることがあげられます。

会社分割

会社分割は株式会社や合同会社などの権利義務の一部もしくは全部を別の会社に承継することです。会社分割には大きく分けて吸収分割と新設分割があります。吸収分割とは会社がその事業の権利義務の全部または一部を分割して他の会社に承継させる方法です。新設分割とは、会社がその事業の権利義務の全部または一部を分割して、新たに設立した会社に承継させる方法です。会社分割の特徴は、分割後の会社が消滅しない点にあります。

また、分割は、分社型分割、分割型分割に区分されます。吸収分割と新設分割との組み合わせで4区分の分割手法が存在します。分社型分割は「縦の分割」とも呼ばれ、孫会社を設立するようなイメージで、分割型分割は「横の分割」とも呼ばれ、兄弟会社を設立するイメージです。

会社分割のメリット

  • 買い手:買収に資金が必要にならないケースがある
  • 売り手:比較的手続きコストをかけずに選択と集中が可能

買い手のメリットとしては買収資金の準備が不要で、買収対価として新株を発行すれば可能であり、承継対価の支払いが柔軟である点が挙げられます。や、また買い手・売り手両社のメリットとして、分割契約では包括承継のため、事業譲渡との比較で契約の個々の移転手続きが不要という点で事業譲渡等よりも手続きコストが低くなることもありえます。また売り手にとっては、自社戦略にそぐわない事業など特定の事業のみ切り離すことができる点があげられます。

会社分割のデメリット

  • 買い手・売り手:実行に時間と手間を要する

まず買い手・売り手両者にとってデメリットは実行に時間がかかる点です。株式を対価として渡すため株式評価の必要があり、登記を含めた手続きに時間がかかります。

買い手のデメリットとしては事業全体を承継するため、事業に紐付く簿外債務を引き継ぐリスクがある点や、外部の事業を自社に取り込むため、システムなどの統合作業に労力を要する場合がある点があげられます。

売り手のデメリットは株主総会の決議にて3分の2以上の同意を得なければならない点であり時間と合わせて手間がかかる点にあります。また対価として受け取り株式の場合は、現金化が難しい点もあげられます。

第三者割当増資

第三者割当増資は対象企業(売り手)が株式を新規で発行し、資金の出し手(買い手)がその株式を引き受けることで、対象会社(売り手)は資金調達、資金の出し手(買い手)は株式を取得する手法です。株式を引き受ける資金の出し手にクライアントや取引先、付き合いがある金融機関、会社の役員など、会社の縁故者であることが多く、縁故募集とも言われましたが、最近では企業間のパートナーシップ構築の手法としてより柔軟に用いられるようになってきています。

第三者割当増資のメリット

  • 買い手:段階的な支配権の獲得
  • 売り手:財務基盤の強化

資金の出し手(買い手)のメリットとしては、段階的な支配権の獲得と資金供給による対象会社(売り手)との関係維持があげられます。資金の出し手(買い手)が対象会社の買収を考えている一方で、対象会社(売り手)にとって既存株主との資本関係が有益であり、資金の出し手(買い手)としても既存株主と対象会社の関係継続を望む状況かつ、対象会社(売り手)に資金ニーズがある場合、第三者割当増資に応じることが、段階的な支配権の獲得と対象会社と既存株主との関係維持につながります。

また対象会社(売り手)のメリットとしては、第三者割当増資の受け入れは資金を集めながら自己資本比率を改善できる特徴があり、財務基盤を強化できる点にあります。また、対象会社(売り手)は資金の出し手(買い手)を自ら選択できる点もメリットといえます。

第三者割当増資のデメリット

  • 買い手:早急な完全支配ができない
  • 売り手:資金の出し手(買い手)の影響力の増加

資金の出し手(買い手)のデメリットに原則として100%の株式取得はできないことがあげられます。

対象会社(売り手)のデメリットとしては、第三者割当増資により資金の出し手(買い手)は対象会社(売り手)の株主になるため、関係悪化時、資金の出し手(買い手)の影響力が対象会社(売り手)にとってネガティブに作用する可能性がある点があります。また、第三者割当増資を行うことは既存株主の保有株価値の希薄化につながります。既存株主に対して第三者割当増資の目的を適切に説明しなければ、株主からネガティブなイメージを持たれてしまうリスクもあります。

おわりに

ここまでM&Aの流れや利害関係者・手法別のメリット・デメリットついて解説しましたが、実際にM&Aを実行するためには少なくとも半年以上がかかり、長いと年単位の取り組みになることも少なくありません。準備が遅れて適切なM&Aの取引のチャンスを逃してしまうことも多くあります。買い手・売り手に係る多くの関係者に大きな影響が発生します。当事者になる前段階で、自身の立ち位置にどのような影響が出るか事前に抑えておけるかが、いざというとき判断を誤らない為の重要な要素になるといえます。また、手法について複数ご紹介しましたが、状況に応じてそれぞれのケースを検討できることが大切です。そのためには事前に知識をつけておくことや、詳細な部分については都度適切な専門家に相談することが、M&A検討にあたっての重要なポイントであるといえます。M&Aを検討する必要が出てきた場合には、早めの段階からM&A専門家に相談し、M&Aの準備に取り掛かりましょう。

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事業譲渡における譲渡元企業の会計処理の基本的な考え方/仕訳方法を解説
事業譲渡における譲渡元企業の会計処理の基本的な考え方/仕訳方法を解説

はじめに

事業譲渡とは、企業を構成する事業を他の企業に移転することを言います。事業譲渡では、必ずしも会社のすべての事業が譲渡されるわけではなく、一部のみのケースも存在し、会社法の規定に則って手続きが進められます。事業譲渡を行うには買い手企業を探し、事業範囲を決定しなければなりません。

事業譲渡は、まず、買い手企業(譲渡先)探しから始まります。事業譲渡の範囲や概要の条件を相手に提示してもらいます。この際に、買収価格や資産・負債の受け継ぎなどについても提示してもらい、意向表明書として相手から示されることになります。

この記事では、事業譲渡における事業を譲り渡す側(譲渡元)においてどのような会計処理が行われるのか、その基本的な考え方と仕訳方法をわかりやすく解説していきます。

事業譲渡における会計処理の基本的な考え方

事業譲渡は、会計の世界では「事業分離」と呼ばれます。ですが、今回はわかりやすくするために、事業譲渡と呼んでいきましょう。

事業譲渡は、ある企業の事業の一部を他の企業に移転することを言うと会計基準において定義されています。事業を譲渡する場合、事業の移転先がどのような会社であるかによって、会計処理の仕方が異なります。つまり、仕訳も異なるということです。

インターネット上の多くの記事では、事業の移転先が子会社でも関連会社でもないケース(すなわち、投資を精算するケース)を取り扱っていて、会計処理の仕訳方法を完全には説明していません。しかし、実際には、移転先がどのような会社かによって会計処理の仕方が異なるので注意が必要です。

事業譲渡が行われた際に譲渡元企業が適用すべき会計処理は、譲渡元企業からみて移転した事業に対する投資が継続しているか、それとも投資が精算されているかに基づいて決定されます。

もし、投資が継続している場合には、“投資を精算した”とは考えないので、譲渡元企業に損益は発生しません。つまり、投資が継続していれば、譲渡元企業に損益が発生しない簿価承継によって事業は譲渡されることになります。

一方で、投資が精算されている場合には、“投資が継続していない”と考えるので、譲渡元企業に損益が発生します。つまり、精算したとみなされれば、時価による譲渡もしくは交換として会計処理が行われます。

事業譲渡の際の仕訳方法

譲渡元企業側からみれば、事業譲渡は「事業を譲渡し」、「対価を受け取る」という取引です。したがって、以下の仕訳が基本となります。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

受け取った対価

☓☓☓

分離した事業

☓☓☓

次の例について考えてみましょう。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、現金等の財産(時価は150、A社における帳簿価額は120)である。

この場合、受取対価は現金等の財産であるため、投資は清算されたと判断します。よって、対価は時価の150で計上し、損益を認識することになります。仕訳は以下のとおりです。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

現金等の財産     

150

事業X

100

 

 

差額(損益)

50

同じように次のケースについて考えていきます。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • 取引後のA社に対する持分比率は20%未満なので、A社株式はその他有価証券として保有する。

今回受取対価はその他有価証券であるため、投資は清算されたと判断します。よって、対価は時価の150で計上し、損益を認識します。仕訳は以下の通りです。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式

150

事業X

100

 

 

差額(損益)

50

さらに、投資が精算されずに、継続しているケースについても考えていきましょう。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • 取引後のA社に対する持分比率は50%超なので、A社株式は子会社株式として保有する。

今回は、受取対価は子会社株式であるため、投資は継続していると判断します。よって、対価は簿価の100で計上し、損益は認識しません。仕訳は以下のとおりです。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式

100

事業X

100

分離先(譲渡先)企業の株式のみを受取対価とする事業譲渡において、分離先企業が新たに分離元(譲渡元)企業の子会社となる場合、経済実態として、分離元企業における当該事業に関する投資がそのまま継続していると考える必要があります(事業分離等会計基準87項)。そのため、損益を認識することをしないのです。このため、個別財務諸表上、当該取引において、移転損益は認識されず、当該分離元企業が受け取った分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定します。

子会社となるケースについてみてきたので、次に関連会社となるケースについても考えていきましょう。

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • 取引後のA社に対する持分比率は20%以上なので、A社株式は関連会社株式として保有する。

勘定科目

金額

勘定科目

金額

A社株式

100

事業X

100

今回も受取対価は関連会社株式であるため、投資は継続していると判断します。よって、対価は簿価の100で計上し、損益は認識しません。

おわりに

事業を譲渡することで譲渡側はその対価を得ることになります。事業を譲渡する際には、譲渡先に譲り渡した事業に対して投資が継続するのか、精算されるのかによって会社処理の仕方が異なるので注意しなければなりません。精算される場合には、損益を認識しますし、投資が継続される場合には損益を認識しません。仕訳の方法が異なることをきちんと理解しておきましょう。

関連コラム:事業譲渡とは?事業譲渡の概要と手続きについて解説

 

M&Aの基礎知識
2022/08/06
垂直統合戦略と水平統合戦略とはなにか?基本的考え方について
垂直統合戦略と水平統合戦略とはなにか?基本的考え方について

はじめに

M&Aのプロセスは、買収の種類と事業戦略によって、「水平統合」と「垂直統合」に分類することができます。水平統合は、企業規模の拡大、製品ラインナップの多様化、競争の緩和、新市場への進出を目的としたM&Aです。一方で、垂直統合は、利益を高め、消費者へのアクセスをより迅速にすることを目的としたM&Aであると言えます。この記事では、M&Aのプロセスを垂直統合と水平統合に分け、その効果について説明していきます。

M&Aにおける水平統合と垂直統合の概要

水平統合と垂直統合は、企業が自らの地位を固め、競合他社との差別化を図るために用いる競争戦略です。どちらも、他の事業の買収を伴う、つまりM&Aを活用した企業の成長戦略であると考えることができます。

垂直統合は、同じサプライチェーンに沿って複数の企業が結合することであるのに対し、水平統合は、企業が同じ業界で顧客基盤、市場規模、または製品の多様性を高めるために類似した他の企業(多くの場合競合)をM&Aによって取得することを意味します。

さらに、水平統合は、製品の差別化を図ったり、市場支配力を拡大したりするために行われる場合もあります。水平統合は、多くの場合同じ業界内で行われますが、異業種や関連業界で行われるケースもある行為です。したがって、その意図は、必ずしも自社のサプライチェーンをより多くコントロールすることによるコスト削減ではないものの、水平統合を行う企業は、消費者基盤、資産や資源の増加、または収益の増加を期待して行うことが多いと考えることができます。

水平統合と垂直統合という2つの戦略は、企業の拡大を助けるものではあるものの重要な違いがあります。

水平統合は、企業が関連する企業、つまり競合他社を買収することによって成長することを目指す戦略です。一方、垂直統合は、企業が生産や流通の1つまたは複数の段階を支配することで、産業プロセスのすべての部分を所有することを目指す成長戦略です。

水平統合の基本的考え方

水平統合は、規模の経済、競争力、市場シェアの拡大、事業の拡大をもたらす競争戦略です。より多くの資源、市場、能力、効率性を目標に水平統合を行います。水平統合とは、言い換えれば、似たような2つのビジネスが1つの会社になることである。たとえば、ナイキとアディダスの合併は、水平統合の一例です。

両社は、スポーツウェアの製造・販売を営んでいます。M&Aを行って水平統合を実施した2つの事業体は、独立して事業を行う場合よりも、より多くの収益を実現できるような体制になるはずです。水平統合は活動の最適化、または会社のプロセスおよび活動の範囲内の戦略的なビジネス活動の統合を促進する可能性があります。

垂直統合は、サプライチェーン上で同じ段階にある限り、水平統合は産業間でも起こりうることに注意しましょう。たとえば、サウジアラビアの石油・ガス採掘業者が、ブラジルのコーヒー豆栽培業者を買収することがあります。両社は原材料の供給業者であり、サプライチェーン上で同じ段階にあるにもかかわらず、業種が異なっていますが、サプライチェーン上の同じ段階の事業者同士によるM&Aの実行は当然あり得るものです。

具体的な例として、ディズニーがピクサー(映画製作)と、エクソンがモービル(石油生産、精製、流通)と、あるいは悪名高いですがダイムラー・ベンツとクライスラーの合併(自動車の開発、製造、小売)が水平統合の有名な事例です。

もし、同じ業界に属していて、同じ事業を営む企業同士が水平統合した場合どうなるでしょうか。たとえば、ボーイング社とエアバス社は共に飛行機を製造しており、合計で99%の市場シェアを誇っています。もし、この2社が水平統合をすれば、独占が可能になるのです。

こうした水平統合は、特定の産業において独占的な力を生み出し、消費者にとって不利益となる場合があることに注意が必要です。競争の低下により、談合行為が誘発され、製品価格の上昇につながる可能性があります。

垂直統合の基本的考え方

垂直統合とは、企業が自社製品のサプライチェーンを所有する戦略的構造であり、通常、異なる生産段階に関与する1社または2社の企業で構成されます。

サプライチェーンには、原材料の調達から製品化、販売までのすべての段階が含まれます。その意味で、垂直統合型の企業は、サプライチェーンの複数(またはすべて)の部分を所有する戦略です。

たとえば、ある企業が綿花の生産者とTシャツの製造会社を買収し、その製品を自社で販売することがあります。つまり、元の会社(現在は、同じ垂直方向に沿った複数の会社のコングロマリット、または同じ種類の製品)が、商品、製造、流通、小売というサプライチェーンの4つの部分を支配することになるのです。

垂直統合を行うと、サプライチェーンをよりコントロールできるようになり、より低い価格で製品を提供できるようになります。市場における市場支配力が高まるなど、企業にとって多くの利点があります。

垂直統合の方法は、企業の種類によって、後方統合と前方統合の2つに分かれます。

(1)前方統合

企業がサプライチェーンの前方に進出する場合(例えば、メーカーが小売業を買収した場合)、前方統合を行うことになります。これは通常、鉱業会社がさらに「下流」の工場を支配するような、サプライチェーンの始点に近い会社が行うものです。この場合、メーカーは流通経路をコントロールすることで、中間業者を通さずに直接消費者に製品を提供することができるようになります。

(2)後方統合

逆に、企業が後方(または「上流」)に拡大し、サプライチェーンのさらに後方の生産部分を支配する場合(たとえば、小売企業が商品のメーカーや生産者を買収した場合)、それは後方統合を行ったことになります。企業が原材料の供給者と合併する場合、プロセスの一部を外部調達するのではなく、必要なものをすべて自社で調達するため、多くのコストが削減されるのが一般的です。この意味で、大手小売企業や流通企業は、輸送費を節約し、供給者を抑えるために、自社商品の生産者やメーカーの買収を行います。

5.おわりに

水平統合と垂直統合は、ある企業が他の企業を統合する2つの成長の方向性を示すものです。水平方向の合併は、互いに競合する2つのビジネスに関するものです。一方、垂直合併は、同じサプライチェーン内で動作する2つのビジネスに関するものです。水平方向のM&Aは、競合する2つの会社が一緒になって1つの会社を作るときに起こり、垂直方向のM&Aは、異なる生産段階にある2つの会社が一緒になって1つの会社を作るときに起こります。

収益を上げたい、または製品の幅を広げたい場合は、M&Aを活用した水平統合の機会を探すとよいでしょう。この場合、M&Aの候補となる企業は、自社と同様の製品・サービスを持ちながら、自社が希望する製品・サービスを追加していたり、現在自社が参入していない地域で事業を展開しているところが良いでしょう。

コスト削減によって競争力を高めたい場合、あるいは重要な供給源へのアクセスを確保する必要がある場合は、垂直統合を検討する必要があります。この場合、M&Aの候補となる企業は、自社の製品を製造するのに必要となる原材料を作っていたり、自社の製品の販売をするのに必要となる販売先であることになります。

どちらの水平統合にせよ、垂直統合にせよ、一長一短の戦略です。その効果をきちんと理解して活用することが大切です。

M&Aの基礎知識
2022/07/30
M&A・事業承継の“マッチング”を支援する相談先・プラットフォームの普及
M&A・事業承継の“マッチング”を支援する相談先・プラットフォームの普及

はじめに

会社の事業を承継することを考えるとき、誰に承継するかは非常に重要です。自分の血縁関係の中で事業を承継するケースもあれば、会社の従業員に事業を承継するケースもありますし、全くの会社の外部の人あるいは会社に事業を承継するケースもあります。

このうち、3つ目の会社の外部に人あるいは会社に事業を承継するケースでは、一般に、事業承継を行う譲渡側と、事業承継を受け入れる譲受側があり、両者のニーズが一致するように調整しなければなりません。その調整をマッチングと言います。会社の外部の人あるいは会社に、事業を承継するケースでは、この両者の合意がない限り、事業承継が成立しません。昨今の事業承継ニーズの高まりから、より効率的に、より納得感が得られるように両者を結びつけることを目的として、多くの事業承継マッチング業者、あるいは、マッチングプラットフォームが誕生しています。

そこでこの記事では、会社の外部の人あるいは会社に事業を承継する際に、近年盛んに利用されるようになっている事業承継マッチング業者、マッチングプラットフォームについて解説します。

M&A・事業承継におけるマッチング

会社や事業を売りたい(承継したい)と考えている会社が、会社や事業を買いたいと考えている会社に出会うためには、両者を引き合わせなければはじまりません。このように売りたい側と買いたい側が出会い、条件等双方の合意が得られた状態がマッチング成功となります。

一般に、会社を売りたい人と買いたい人のマッチングを自ら行うことは難しいことから、M&A。事業承継の専門家に相談することになります。近年、事業を売りたいという事業者と、事業を買いたいという事業者をマッチングさせる事業承継マッチング業者やM&Aマッチングプラットフォームと呼ばれるサービスを提供する企業が増えてきています。

事業承継マッチング業者は、中小企業の事業承継(M&A)を支援する機関であり、民間のM&A専門仲介機関や、金融機関、士業の専門家などが存在しています。マッチング業者の担う業務は、相手先企業のマッチングから行う場合もあれば、デユーデリジェンスや契約締結等の特定の業務に特化している場合もあり、その関わり方は様々です。事業承継マッチング業者に支払わなければならない仲介等の手数料についても、仲介者かアドバイザーかといった契約関係だけでなく、案件の規模や報酬体系(着手金・中間金・成功報酬等)によって異なります。

また、事業承継のマッチング業務は、案件の規模にかかわらず同程度の業務が発生するため、最低手数料を設けている専門仲介機関も多くなっています。そのため、近年では、インターネット上でのマッチングも行われるようになってきており、低コストでマッチングを図ることで小規模事業者でも事業承継を実施できる環境も整いつつあります。

いずれにせよ、事業承継を推進していくためには、金融機関、専門仲介機関、士業専門家といった、当事者以外の支援が重要です。こうした支援機関の事業承継への理解を深めるとともに、支援機関同士が連携し専門性の補完やマッチングを図ることで、様々なニーズに対応していくことが期待されています。

事業承継マッチング支援の相談先(専門家)

ここでは、まず事業承継マッチング支援をする代表的な相談先(専門家)について説明していきます。

① 公認会計士

公認会計士は、監査及び会計の専門家として、財務書類の監査証明業務のほか、財務に関する調査や相談に応じており、事業承継の様々な場面で、広い見識に基づく支援が期待できます。特に、経営状況・課題の把握(見える化)や経営改善(磨き上げ)をはじめ、非上場株式の評価・M&Aにおける売却価格試算等の複雑な状況での公正な評価、経営者の個人保証の解除、適正な会計の導入支援といった、将来の事業展開も踏まえた幅広い助言が期待できます。

② 司法書士

司法書士は、商業登記、不動産登記等の実務家として、事業承継における株式及び事業用不動産の承継、M&A、種類株式及び民事信託の活用、担保権の処遇等についてサポートしています。また、日本司法書士会連合会においては、商業登記・企業法務対策部、民事信託等財産管理業務対策部等を設置して事業承継に関する支援事業を行っています。

③ 税理士

税理士は、顧問契約を通じて日常的に中小企業経営者との関わりが深く、決算支援等を通じ経営にも深く関与しています。経営者向けアンケートにおいても、事業承継の相談先として選ばれやすい存在です。また、日本税理士会連合会にて構築した顧問税理士同士によるマッチングサイト「担い手探しナビ」の利用等を通じて、 多くの税理士が、後継者不在の中小企業に対するM&A支援に着手するなど積極的な事業承継支援を行っており、主体的な関与が期待できます。経営者に最も近い存在として、事業承継ニーズの掘り起こしのほか、相続税に関する助言や株価の評価、生前贈与のやり方や種類株式の発行に関する助言、中小企業会 計要領・中小企業会計指針の活用支援等、事業承継に関係する幅広い領域にわたる支援をしてくれます。

④ 中小企業診断士

中小企業診断士は、「中小企業支援法」に基づき、中小企業のホームドクター として、様々な経営課題への対応や経営診断等に取り組んでいる事業者です。事業承継に関しては、事業承継診断やプレ承継支援(事業承継計画の策定支援、 後継者教育支援、磨き上げ支援等)、ポスト承継支援のほか、M&A等に関わる支援も期待されています。

⑤ 弁護士

弁護士は、中小企業や経営者の代理人として、事業承継を進めるにあたり、経営者と共に金融機関や株主、従業員等の利害関係者への説明・説得を行い、円滑な事業承継を進める役割を担います。特に、株主関係が複雑な場合や、会社債務・経営者保証等に関する金融機関との調整・交渉が必要な場合、M&Aを活用する場合等においては、法律面全般の検討と課題の洗い出し、それらを踏まえたスキーム全体の設計、契約書をはじめとする各種書面の作成といった支援が期待される。また、日本弁護士連合会は、事業承継に関するプロジェクトチームを設置し、中小企業の事業承継に関する課題分析と改善策の検討、有用なスキーム・事例の周知活動、具体的な相談体制の整備等に取り組んでいます。

⑥ 金融機関

金融機関は、中小企業に日常的に接して経営状況を把握しており、中小企業に対してきめ細やかな経営支援等を実施し得る立場にあります。また、金融機関が取引先企業の事業実態を理解し、そのニーズや課題を把握し、経営課題に対する支援を組織的・継続的に実施することは、取引先企業の価値向上、ひいては我が国経済の持続的成長につながるとともに、金融機関自身の経営の安定にも寄与するものです。このような観点から、金融機関は取引先中小企業の事業承継問題に対しても積極的な支援を実施することが期待されています。

⑦商工会議所・商工会

商工会議所・商工会は、経営指導員の日々の巡回指導等を通じて中小企業経営者との間に信頼関係を構築している身近な存在です。このため、事業承継ニーズの掘り起こしのほか、事業承継セミナーの開催や事業承継施策に関する情報提供、専門家の紹介、事業承継・引継ぎ支援センターとの連携等が期待されています。

代表的な事業承継マッチングプラットフォーム提供事業者

近年では、IT技術を活用しインターネット上で事業承継マッチングを行う業者も誕生しており、低コストでマッチングが実現できる環境も整いつつあります。

事業承継マッチングプラットフォームは、事業や会社の譲り渡し側・譲り受け側がインターネット上のシステム(プラットフォーム)に情報を登録することによって、マッチングをはじめとする事業承継の手続きを低コストで行える支援システムです。従来、事業承継においては、事業者自身が譲り渡しや譲り受けの情報にアクセスすることが困難でした。その橋渡しを事業承継支援業者(金融機関、M&A仲介業者など)が担っていたのです。結果として、情報量の少なさからマッチングの可能性が低くなってしまったり、マッチングにかかるコストが大きく、業者に支払うべき高額の報酬につながってしまったり、といった課題がありました。こういった従来のM&Aの問題点を解決するために誕生したサービスが、マッチングプラットフォームです。

それでは、現在の日本でマッチングプラットフォームを提供している代表的な事業者を2つ紹介します。

①BATONZ(バトンズ)

BATONZは、無料で利用できる成約数No.1のM&A・事業承継支援サービス提供事業者です。企業と第三者のマッチングを支援し、M&Aによる事業継承をサポートします。バトンズでは小規模・零細企業の案件だけでなく、中小企業も含めた幅広い規模の案件も掲載しており、個人・個人事業主・法人といった、あらゆる属性の人が利用している事業者となっています。業界の標準価格よりもかなり安い金額で成約までたどり着くことができるうえに、充実したサポート体制が魅力となっています。

②TRANBI(トランビ)

TRANBIは、挑戦したい個人・中小企業のためのM&Aや事業開発を中心とするイノベーションプラットフォームです。インターネットを通じて、事業を買いたい人と売りたい人がマッチングする事で、 これまで多額の資金を必要としたM&Aの費用を大幅に削減することに成功しました。会員数も2022年7月時点において、106,246名と業界最大級を誇っています。

昨今、M&Aのマッチングプラットフォームは乱立しており、上記以外にもたくさんのプラットフォームがあります。

頑張っていく事業承継

おわりに

事業承継において、会社や事業の譲り渡し先を決めるのは容易ではありません。会社のことを理解していないところに事業を承継してしまえば、会社に残った従業員が不幸になることはもちろん、これまで会社に培われてきたものが台無しになってしまいます。だからこそ、マッチングを支援してくれる事業者の存在は、事業承継において欠かせないのです。

事業承継においてマッチングサービスを提供している事業者は数多く存在します。従来は、専門業者に依頼するケースも多かったものの、自分たちで直接プラットフォームサービスを利用するケースも多くなっています。会社の将来を左右する事業承継ですので相手探しは重要です。

M&Aの基礎知識
2022/07/31