M&Aの基礎知識 2021/11/03

飲食店のM&A~廃業する前にM&Aの利用で活路を見つけよう~

飲食店のM&A~廃業する前にM&Aの利用で活路を見つけよう~
                    

飲食店は低資本で事業を新たに始められる業態のひとつです。裏を返せば、新規参入者が多く競争が激しいことにもなるので、経営不振から開業から数年以内に閉店・廃業して撤退してしまうことも多々あります。しかし、廃業するとなるとそのコストも少なくないものになることも多く、そのコストが次の事業を始めるときの大きな足かせになる場合もあります。もし、飲食店を閉店・廃業するつもりなら、M&Aで飲食店を売却・譲渡することを検討してみてはいかがでしょうか。経営者にとって飲食店を廃業するより、良い選択肢となるかもしれません。この記事では飲食店のM&A活用について詳しく解説します。

昨今の飲食店動向と廃業件数

帝国データバンクの調査によると、2021年1-6月に全国で休廃業・解散した企業は28,400件と、2020年1-6月期の29,780件から比較して若干低下しました。しかし、それは官民一体の資金繰り支援、コロナ対応補助金などが中小零細企業を資金面から支援したものを踏まえての数字であり、コロナ過が追い打ちをかけるなか、依然として景気は明るいとはいえない先行き不透明な状況が続いています。

また、東京商工リサーチの「2019年後継者不在率調査」では、中小企業における後継者不在率は55.6%となっており、とりわけ代表者の高齢化や、若年層の減少が後継者難に拍車をかけている状況が浮かび上がっています。

中でも新型コロナウィルスの影響を強く受けている飲食店業界は、度重なる非常事態宣言で、営業時間短縮、客数制限、酒類提供禁止、それに伴う休業など、他の業界に増して厳しい業況は続いています。もともと資本力が小さい事業者が多い業界だけに、後継者不足や経営不振から廃業・解散を選択したり、他社に飲食店を売却・譲渡する動きが強まったりしています。

当面、この流れは強くなることが見込まれています。

「後継者不在率」調査:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20191107_01.html
2021年1-6月 全国企業「休廃業・解散」動向調査:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210705.html

飲食店の廃業原因

飲食店の廃業原因は大きく分けて2つあります。ひとつは「経営状況の悪化」、もうひとつが「後継者不足」です。

飲食店業界は他業種以上に新規参入が容易であり、その分競争が激しくなりがちです。また、外部環境変化の影響を大きく受けやすいため、ちょっとした環境変化でも大きな影響を受け、その結果経営不振に陥ることがあります。いったん経営不振に陥ると財務体力が強くない事業者にとっては復活も難しく、それが廃業や他社に飲食店を売却する動きにつながります。

また、飲食店は経営黒字を出している先でも後継者問題を抱えており、それが解決できなければ廃業や売却・譲渡という選択をせざるを得ません。しかし、廃業や倒産したら多くの関係者(顧客・従業員、取引先等)に大きな打撃を与えてしまいます。

そうなってからでは遅いので、できればまだ運営の見通しが明るい段階で積極的に店舗や会社を売却・譲渡する努力をすれば、理想的な買い手と出会える可能性も高くなります。それが廃業や倒産を避ける有力な解決策になるでしょう。

飲食店を廃業するならM&Aまたは居抜き売却で解決を図ろう

飲食店の売却方法は2つ、居抜き売却とM&A

飲食店の売却方法は主に2つあります。「居抜き売却」と「M&A」です。

居抜き売却とは、飲食店の内装や厨房設備などの造作(その物件のサイズや目的に合わせた造り付けの内装や設備のこと)をそのままの状態で買い手に売却することです。M&A(企業の合併及び買収)は、株式譲渡や事業譲渡等の手法で、飲食店を会社丸ごと、あるいは事業の一部(全部)を外部の法人・個人に売却譲渡することをいいます。

飲食店を売却する経営者は、飲食店を店舗単体で売却するのか、複数事業のうち飲食事業だけ売るのか、あるいは飲食事業を運営する会社ごと売却するのか、それぞれの事情に応じて「居抜き売却」や「M&A」を使い分けると良いでしょう。

飲食店の居抜き売却及びM&Aの相場

飲食店の居抜き及びM&Aの相場ですが、売却価格の相場はその飲食店の立地や売上規模、店舗内外の清潔感や事業の財務状況等で変わってきます。このうち居抜き物件の売却相場に関しては、特に飲食店の立地状況や売上規模がその相場を左右します。しかし、いずれにしても居抜き物件の売却価格は、個別の相対取引で決まると考えて下さい。

一方、M&Aで売却譲渡する飲食店の相場では、売却価格についていくつか算出方法があります。そのうち簡便なものとして、飲食店の総資産から総負債を引いた純資産(時価ベース)に営業利益を倍率(内容によって2~5倍)して加算する方法があります。これを計算式で示すと、売却価格=純資産(時価ベース)+営業利益×(2~5倍)となります。もちろんM&Aの売却価格がこの計算式通り単純に決まるわけではありませんが、売り手買い手とも価格交渉を始める際のおおよその目安程度にはなるでしょう。

飲食店の売却・譲渡で得られるメリット・デメリット

では、飲食店を居抜きまたはM&Aで売却・譲渡したとき、当事者はどのようなメリットを受けられ、またどんな点がデメリットになるのでしょうか。売り手、買い手の双方から解説します。

売り手側のメリット

飲食店を「居抜き」で売却するときのメリット

飲食店を居抜きで売却するとき、売り手が得られるメリットは主に3つあります。

  • メリット1.原状回復の費用がかからない。

通常飲食店を閉店・廃業するとき、その物件を家主からテナントとして借りていた場合、退去時に物件を原状回復して引き渡す約束をしていることが多いです。ところが、飲食店は調理で水や油等を使う機会が多く、他の業種より店舗の損耗摩耗がひどいので原状回復するにも多額の費用がかかります。

そこを居抜きで売却できれば、物件の権利をそのまま買い手に引き継げるので、家主の承諾さえもらえれば原状回復の費用を掛けずに済みます。

  • メリット2.居抜きを売却することで現金が得られる

原状回復工事費用を抑えた上で譲渡対価として現金も得られるので、廃業を選択するより大きなメリットがあります。

  • メリット3.家賃を払うリスクを避けられる

通常、物件を借りる際、家主から一定の賃貸契約期間を求められることが多いです。そのため、廃業したくて家主に早めに契約解除を申し入れたとしても、契約期間が残っていれば、その期間中、借り手は家賃を払い続けねばなりません。

しかし居抜き売却することができれば、すぐに買い手に物件を譲渡できる上、家主の承諾が条件にはなりますが、買い手に契約期間の残りを払ってもらえる場合もあります。家主にとっても新たな買い手から家賃が得られるため、相談に乗ってくれるケースは多いでしょう。

飲食店を「居抜き」で売却するときのデメリット

一方、居抜き売却のデメリットですが、売却については事前に家主の承諾を得る必要があります。家主が居抜き売却を嫌う場合もあるので、売り手は慎重に承諾を得る努力をする必要があります。

M&Aで「売却・譲渡」するときのメリット

飲食店をM&Aで売却・譲渡するとき、売り手は多くのメリットを得られるでしょう。

まずM&Aのうち、株式譲渡で飲食店を売却できると、事業譲渡に比べて手続きが簡単なので短時間で飲食店を売却できます。債権者保護などの複雑な手続きが不要になるからです。さらに株式譲渡を使うと、株主の変更が行なわれるだけで社内の資産や権利に原則的には変動はありません。会社をそのまま買い手に引き継げるので、従業員の雇用や取引先との契約も維持できます。(株主が変更した場合に契約を解除もしくは変更する条項が稀に契約に盛り込まれている場合もあるので確認が必要にはなります。)

次に、飲食店を事業譲渡で外部の会社・個人に譲る場合、売り手は売却したい資産や権利を個別に選んで譲ることができます。これは売り手経営者が会社の経営権をそのまま残したい場合に便利な方法です。この方法を使うと、不採算の部門や特定エリアの事業だけ売却して、残りの事業に経営資源を集中させることができます。

M&Aで「売却・譲渡」するときのデメリット

飲食店をM&Aで事業譲渡するとき、その飲食店が債務超過(総負債額が総資産額を上回る状態)の会社だと、譲渡後にその会社の債権者に「詐欺行為取消権」を行使されるリスクがあるので注意して下さい。これは、売り手にとって慎重に対応すべき重要な注意点です。売り手の飲食店経営者が「債権者に内緒のまま」、債務超過の会社を買い手に譲渡してしまうと、会社資産の中で現金化できたり利益を生み出したりしている重要な資産が第三者に移ってしまうので、会社に残るのは無価値な資産ばかりになり、最終的に債権者の利益を害してしまいます。

そのため、譲渡後に債権者にその事実が知られて、債権者から詐欺行為取消権を行使されると、譲渡契約の有効性を裁判所に取り消されてしまいます。あくまでこのようなケースでの事業譲渡の手続きは法的正当性を整えてから行なう必要があります。

買い手側のメリット

飲食店をM&Aで売却・譲渡するとき、買い手側が受けられる主なメリットは以下の3つです。

  • メリット1.低コストで新規出店ができる、あるいは事業拡大を図りやすい

買い手が飲食事業で新規出店を考えているとき、新たに店舗を探したり作ったりするとなると、立地の良い場所を見つけるための調査費、土地建物等の建設取得費、社員教育費、集客費など、多額の費用がかかります。

しかし、すでに経営している店舗をM&A等で引継げれば、設備や備品、社員・顧客も含めて確保できるので、新規出店より安く費用を抑えることができます。また事業拡大を図る場合にもM&A等で飲食店を買い取れば、すでにいる顧客、取引先、店舗や設備、経験のある従業員なども引継げるので、一気に事業の拡大を図ることができます。

  • メリット2.好条件の物件を確保しやすい

飲食店事業にとって立地の良さは売上に直結する極めて重要なポイントです。その点M&Aだと、既存の店舗を丸ごと得られるので、候補の中から自社の飲食業態にぴったりの立地条件の物件を確保できます。

  • メリット3.飲食店経営のノウハウを獲得できる

異なる業界から飲食業に新規参入しようとすると、まずは飲食店経営のノウハウの獲得が必要です。しかしM&Aで異業種が既存の飲食店を確保できれば、すでにそこにはスキルを持った人材や、飲食業を経営する上で欠かせないレシピ、必要設備等が整っており、すぐにでも経営をスタートできます。労せずして飲食店経営のノウハウを得られるのです。

飲食店のM&A:まとめ

飲食店オーナーが、廃業を考えはじめる際に考慮するべき点を解説しました。特にM&Aの活用は廃業を選択するよりメリットがかなりあります。ぜひ飲食店のM&Aを前向きに検討してみましょう。

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会社を高く売るポイントとは-M&Aで会社を売りたい方へ
会社を高く売るポイントとは-M&Aで会社を売りたい方へ

昨今、後継者不足により事業承継の問題がある中、M&Aで会社を売るという選択肢を取る経営者が増えています。会社を売ることは大変な出来事ですが、ポイントを押さえて売却をすれば様々なメリットがあります。この記事では、M&Aで会社を売却するメリット、会社を高く売るポイントについて解説します。

会社を売るメリットとは

会社を売ることによって、会社の存続や、経営者が利益を受けることができます。

株主の収入になる

会社を売ることの大きなメリットは、経営者や株主が売却益を得られることです。会社の規模や経営状況によりどの程度利益が出るかは異なりますが、独自のノウハウや強み、相性のいい買い手が見つかれば、売却益を大きくすることも可能です。

事業と従業員の雇用を守ることができる

会社を畳んでしまうことにより、従業員は新しい就職先を見つけなければなりません。しかしM&Aで会社を売る場合、会社が存続できるようになり、従業員の雇用が守れるというメリットがあります。また、事業自体も存続するため、既存の取引先にも継続して利用してもらうことができます。

会社を畳むことなく引き継ぐことができる 

M&Aで会社を売ることのメリットは従業員の雇用維持や取引先へ迷惑をかけずに済むことの他に、会社自体を存続させることもあります。これは経営者が長年育ててきた会社を潰さず、看板や法人を買い手企業へバトンをつなげることができ、経営で培ってきた会社の技術を後世に残すことができます。

債務や個人保証などから解放される

債務や個人保証などから解放されることも会社売却を行うメリットです。個人保証とは、会社が金融機関から融資を受ける際に、経営者などの個人が会社の融資について保証をする場合に、その経営者などが負う保証のことです。

会社が金融機関などからお金を借りるときには、社長の個人保証がついている場合が多いのですが、株式譲渡を行った場合には会社に紐づく債務の実質的に次のオーナーである買い手(経営者)が支払義務を負うことになります。また、その場合だと個人保証を名義変更することが一般的で、売り手企業の経営者はここで個人保証から解放されることになります。

買い手とのシナジーで会社が成長する機会を創出できる

買い手とのシナジーで会社の成長が期待できる点も、会社売却のメリットと言えます。M&Aで会社を売り、元々足りていなかった資金面や営業力、買い手企業のノウハウなどを掛け合わせることによって、会社が成長の機会を得ることができます。                     

会社を高く売るポイントとは

会社を売却する際には下記のような算式で計算されます。

会社の売却額-M&A費用(仲介手数料、税金等)=経営者の手取り額

そのため、売却額を高くすること、M&A費用を安くすることがポイントになります。会社を売るときのポイントを「事業」と「買い手」と「スキーム」の3つの観点から解説します。

会社を高く売るポイント:事業

 収益性を高く維持する

会社を売る際の金額を決める要素として一番わかりやすいのは売上、利益などの数字です。

例えばDCF法であれば、主に対象資産が生み出す将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を算出する方法のため、フリーキャッシュフロー(※)が大きければ大きいほど、企業価値は増加していきます。そのため、計算の基礎となる営業利益が大きくなれば企業価値も大きくなり会社を高く売ることができます。

※フリーキャッシュフローの算定:営業利益×(1-税率)+減価償却費-設備投資-運転資本

取引先や顧客

取引先と顧客も会社売却の金額を決める上で重要です。

もし大企業の大口の取引先がある場合、買い手企業からするとつながりのない大企業とのつながりができるため、会社を売る際に高く評価される可能性があります。また、継続して自社のサービスを利用している会社があれば、今後も長期的に収益を得られる可能性が高いため、こちらも高く評価される場合があり、会社を高く売ることにつながります。

技術力・ノウハウ

技術力やノウハウも会社売却の金額を決める上で重要になってきます。技術力やノウハウは会社の数値上表されないものではありますが、会社の利益を大きく支えているものになります。特にそれが独自の技術やノウハウであったり簡単にマネできないものであれば、会社を売る際に高く評価されることが多いでしょう。

従業員の経験・スキル

従業員は会社の大切な財産です。M&Aでは優秀な人材がそろっている会社には高い企業価値が付く可能性があります。特にその経験やスキルが簡単に得られるものでなかった場合、高い評価を得られます。

勤続年数が長く、経験豊富な従業員を採用するよりも会社を買うことで手に入れたほうが効率的であるため、そのような会社を買う場合もあります。

財務状況・法務状況の健全化

買い手企業がM&Aで恐れる要素の一つとして、買った企業が粉飾をしていることがあげられます。買い手は財務・法務状況が健全であるほど安心でき、価格交渉もしやすくなります。そのため、

適切なタイミングで会社を売る

会社を売る際は、タイミングが非常に重要になります。企業価値が一番高い時に会社を売ることで、より高い価格で売ることが期待できるからです。特に業績が好調な時や、最新技術や独自技術が社会の潮流として必要とされているときなどは、企業価値が高くなりやすくなります。逆に業績が不調の時や廃れた技術や規制緩和によって免許も必要なくなる場合などは将来性がないとみなされ、企業価値は低くなりやすいです。

このように、企業価値が高いタイミングは会社によって異なるので、会社売却を考えたら専門家に相談して、一番いいタイミングで売却できるようにしましょう。

 会社を高く売るポイント:買い手

買い手候補を多く見つける

会社を高く売る方法として、買い手候補を多く集めるのも重要です。

買い手が複数いることで、買い手同士が競争する環境になり、高い価格が付きやすくなります。その中から、最も好条件を提示した買い手候補を取引相手に選定することもできます。

会社売却にいいM&A専門家を見つけること

M&A専門家の選定も会社を売る際に重要になります。

会社を高く売るには、M&A専門家に支払う相談料や手数料といった諸費用を抑えることが重要になります。併せて買い手候補を多く見つけるためには、広いネットワークを持つM&A専門家を選ぶ必要があります。

そのため、各社の費用とサポート体制を比較し、最もM&A専門家を見つけましょう。

シナジー効果の高い買い手企業を見つける

買い手はM&Aによりシナジー効果を発揮できる会社を探しており、売却価格は、買い手がその会社にどの程度の価値を見出すかによって大きく変わります。

これは会計上ののれんに影響していきます。のれんとは、M&Aによって会社を買収した時の買収価格と買収される会社の時価純資産の差額のことを言います。買収価格は買い手・売り手で同意した金額で、時価純資産は会社を今処分した金額に近い金額を指しているため、当該金額を上回るものがのれんに該当します。

そのため、のれんはブランド力や技術力、人的資源や地理的条件、顧客ネットワークなど見えない資産価値を表しており、そういった帳簿上には直接現れづらい部分に魅力を感じる買い手を見つけることにより、今処分した場合の純資産額よりも大きい価格で売ることができます。

買い手の業種

買い手が異業種なのか、同業種なのかも売却額に影響していきます。それぞれ何を意識しているかによって変化するため、認識しているといいかと思います。

異業種の場合

異業種の場合は、目的としては異業種の情報がほしい、新規参入したいなどになり、得られる点が多いため、高く売れる傾向にあります。ただ、なじみのない業種の場合内容理解に時間がかかるため、会社を売るスピードは遅くなる傾向にあります。

同業種の場合

同業種の場合は、目的として規模の拡大が多く、事業内容を詳細に把握しているため、会社を売るスピードは速い傾向にあります。また、事業に詳しいことにより、本質的な面を重視するため、目的が達成されるのであれば高く売れ、目的と違っていたら厳しい条件を提示してくる可能性があります。

隣接業種の場合

隣接業種の場合は買収によるシナジーが大きな目的となります。そのため、同業種よりも高い金額で交渉をすることができ、異業種よりも事業は把握しているため、スムーズに会社を売ることができる傾向にあります。

会社を高く売るポイント:スキーム

株式譲渡と事業譲渡

会社ごと売却する株式譲渡と事業のみを譲渡する事業譲渡では、どのような違いがあるのでしょうか。

株式譲渡は株主が買い手に株式を売ることで、買い手が経営権を取得することになります。この場合は売却利益を得ることができるのは株主になり、オーナー企業であれば社長個人が利益を得ることになります。

対して事業譲渡は会社が自社の事業の一部を売ることで、買い手がその事業を吸収することになります。

この場合、会社が自社の事業を売っているので、売却利益は会社の利益に計上されます。

売却価額

会社売却では、株式譲渡の場合は一般的に従業員もそのまま移動しますが、事業譲渡の場合には、異なる企業の従業員になるために転籍手続が必要になります。この際に、人の移動が限定的な可能性があり、買い手にとっては不安要素になります。

そのため、人の数で売り上げが伸びる業態や属人性が高い業態、採用が難しい職種の人材を必要とする業態の場合、価格が高くなりやすくなります。

税金費用

税金費用はM&Aの中でも、最終の手取り額に大きな影響を与えます。その金額については株式譲渡と事業譲渡では、取引形態と利益を受け取る主体が異なるため、納める税金も異なってきます。税金を少なくしたいのであれば、有利なのは株式譲渡となります。株式譲渡の場合、譲渡益は消費税の対象とはならず、譲渡益に対して20%の税金が課せられます。

それに対して事業譲渡は売却した利益に対して法人税として29.74%と消費税の10%が課されることになります。そのため、税率が異なることにより、株式譲渡の方が税金費用を抑えられ、譲渡金額が同じ場合には

DD(デューデリジェンス)は事業売却の方が簡易的

事業譲渡の方がDD手続としては簡易的なものとなります。

DDとは、買い手が売り手の会社や事業を詳細に調査することです。財務状況のみならず、法務や労務など会社の状態を調べ、リスクがないかを明らかにします。会社売却では企業をすべてチェックする必要がありますが、事業譲渡では対象となる事業のみに限定されているため比較的簡易にDDが行われます。

まとめ:会社を高く売る方法

M&Aにより会社を売る場合、事前の準備や買い手候補の選定で売却額、売却までのスピードも変わってきます。売却方法、売却先、事前の整理など会社を高く売る方法はさまざまであり複雑でもあるので、一度専門家に依頼して相談してみることもいいと思います。

 

 

 

M&Aの基礎知識
2021/11/25
M&Aで生じる「のれん」とは?
M&Aで生じる「のれん」とは?

M&A(Mergers(合併)and Acquisitions(買収))を行うと買い手側の企業に対して「のれん」が生じることがあります。こののれんとは一体どのようなものでしょうか?今回は、M&Aのときに発生する「のれん」についてわかりやすく解説していきます。

「のれん」とは何か

 のれん(goodwill)とは、ある企業が別の企業を買収した際に発生する「無形資産」のことを言います。具体的には、企業のブランド名、強固な顧客基盤、良好な顧客関係、良好な従業員関係、独自の技術などの価値が、のれんの形態です。

 「のれん分け」という言葉がある通り、日本のお店の入り口には「のれん」が掛かっていることがあると思います。その「のれん」は、お店のブランド価値、顧客からの信頼、老舗として価値など、様々な魅力(お金を稼ぐ能力)を持つものです。有名なお店の「のれん分け」をしたお店であると分かれば、そのお店に行ってみたくなりませんか?その“行ってみたくなる”という、顧客を引き寄せる、目に見えない力が「のれん」と呼ばれるものの力なのです。つまり、のれんは会社にとって「キャッシュをもたらすもの」=無形資産=目に見えない収益を稼ぐ力なのです。のれんは、日本語では「超過収益力」とも呼ばれますが、これは、のれんが目に見えないけれど顧客を引き寄せる力を持っているからです。

具体的には、買収価格のうち、買収で購入したすべての資産の公正価値と、引き受けた負債の公正価値の純額よりも高い部分を「のれん」と呼びます。のれんの価値は、通常、買収(買収者がターゲットの企業を購入すること)の際に発生します。買収企業が対象企業に対して支払った金額が、対象企業の純資産の公正価値を上回った場合はほとんどのケースで、対象企業の「のれん」の価値が計上されます。買収企業が、対象企業の純資産の公正価値 よりも低い金額を支払った場合、買収企業は負ののれんを獲得しますが、これは窮地に追い込まれた企業をバーゲン価格で購入した場合などに発生します。

「のれん」の具体

たとえば、ABC社の資産(200億円)から負債(80億円)を差し引いた会社の価値(公正価値)が120億円であったとしましょう。そして、DEF社が150億円でABC社を買収した場合、本来、120億円であるはずのABC社をDEF社は150億円で買収したことになります。なぜ、DEF社は資産から負債を差し引いた公正価値が120億円の会社を150億円もかけて、つまり、30億円も余計にプレミアムを支払って買収するのでしょうか。

その理由は、DEF社にとってABC社には150億円の価値があるからです。資産から負債を差し引いた価値が120億円であっても、それは純粋な会社の清算価値を示しています。つまり、今すぐに会社を清算して、会社が保有している全ての資産を売却し、全ての負債の支払いをした価値が120億円なのです。

しかし、通常、会社は、目に見える資産だけではなく、目に見えない資産(無形資産)を保有しています。それは、前述のとおり、ブランド名、強固な顧客基盤、良好な顧客関係、良好な従業員関係、独自の技術といったその会社独自のものです。この無形資産に対して、DEF社は30億円分のプレミアムを支払っています。この30億円分を「のれん」と呼びます。そして、この30億円は「のれん」として買収者側の貸借対照表(B/S)に無形資産として計上されます。

 M&Aにおけるのれんと会計処理の方法

M&Aにおいて、特定の会社を買収する場合、一体いくらでその会社を買収できるのでしょうか?

たとえば、資産が50億円(時価)、負債が40億円(時価)の会社を買収しようとした場合、理論的には、この会社の価値は10億円(この会社の「株式」の価値は10億円)ですから、10億円あればこの会社を買収することができることになります。

しかし、通常、この会社を買収するためには、10億円以上の対価を支払わなければなりません。もし、10億円の会社を買収するために、12億円支払った場合には、差額2億円のプレミアムを支払い、のれんは無形資産として、貸借対照表に計上されることになります。

 貸借対照表に計上されたのれん(2億円)は、ずっと2億円の価値があるわけではありません。時間の経過とともに、その価値は減少しています。これは、老舗のお店の味が悪くなれば、お客さんが離れていくのと同様に、のれんも時間が経てば、収益を得られる力が失われていくことになります。したがって、日本の会計基準では、のれんを最大20年間にわたって償却することになっています。これを「のれんの償却」と呼びます。先の例で挙げた2億円ののれんを20年にわたって償却する場合、200,000,000÷20で1年間の償却額を求めることができますから、M&Aによる買収時に計上されていた200,000,000円の「のれん」は1年間で1,000,000円分の価値を向こう20年にわたり失っていくことになります。

これが日本の会計基準におけるのれんの会計処理の基本的な考え方です。

まとめ:M&Aで生じる「のれん」

 M&Aでは多くの場合、のれんが発生します。会社の価値よりも多額の資金を支払えば、それだけ多くのプレミアムを支払っているので、多額の「のれん」が計上されることになります。一方で、会社の価値よりも少ない資金で買収を成功させた場合には、逆ののれん、つまり「負ののれん」が計上されることになります。のれんは少しわかりにくい概念ですが、その本質は、会社に収益をもたらしてくれる目に見えない資産です。

M&Aの基礎知識
2021/11/24
事業売却は従業員にどのような影響を与えるか?|事業売却側の従業員への影響と処遇の変化
事業売却は従業員にどのような影響を与えるか?|事業売却側の従業員への影響と処遇の変化

事業売却のプロセスは、従業員のストレスレベルに大きな影響を与えます。場合によっては、事業売却のプロセスが1年以上に及ぶこともあります。合併が完了するまでの時間は、両社の従業員のストレスレベルに大きな影響を与えますし、組織再編が行われるので、従業員の処遇も変化します。このコラムでは、事業売却が従業員にどのような影響を与えるのかについて解説します。

売却される事業に従事する従業員に対する影響

事業売却とは、取得側となる企業に、売却側の企業が既存の事業を売却することをいいます。事業売却は、組織再編行為の一種ですが、売却される事業を実際に動かしているのは、その仕事に従事している従業員なので、組織体制が変わることは、従業員にさまざまな影響を与えます。ここでは、売却される事業に従事する従業員への影響について説明します。

(1)不確実性

 事業売却による不確実性の発生は、売却される事業に従事する従業員に対して、ネガティブな影響をもたらすものと考えられがちですが、ポジティブな影響をもたらすものもあります。この不確実性がもたらす影響は次のような形で顕現します。

(2)従業員雇用の喪失や配置転換

歴史的に見てもM&Aは雇用の喪失を招く傾向にあります。その原因の多くは、業務の重複や効率化のためのリストラクチャリング(雇用再編)です。雇用が脅かされるのは、一般に、売却される事業の上級管理職であり、退職金を提示されて解雇されるケースも少なくありません。また、ほとんどの従業員は、自分の立場が脅かされていることに気づき、他の場所で仕事を探し始めるかもしれません。事業売却後、余剰人員の発生は避けられません。この場合、従業員の権利が尊重されるべきであることは言うまでもありませんが、それでも重複する業務の人員は削減されるか他の業務へと配置転換がなされます。

たとえば、2つの銀行が合併したり、1つの銀行が買収されたりした場合、合併後の銀行はオペレーションや営業所が重複することになるでしょう。事業売却完了後の新しい銀行には、すべての支店は必要ないかもしれないし、2つの住宅ローン部門、2つの企業会計事務所、すべての預金を処理する2つの証明部門も必要ないといえます。

もちろん、事業売却後の企業の方がより多くの顧客や取引を処理することになるため、事業売却前の事業の無駄な業務プロセスがすべて解消されるわけではありませんが、重複している業務プロセスに従事している従業員が余剰となることが考えられます。その際には、業務プロセスの再整理の中で配置転換やレイオフが行われることになります。

一方で、M&Aにより従来の業務より大きな範囲や権限を任される従業員は、自身のキャリアアップや能力向上のチャンスとなります。レイオフや配置転換となった従業員でも、M&Aを機に従来のキャリアとは異なった仕事に触れ、自らのキャリアの新しい可能性が拓けたり、業務の幅が広がり市場価値が向上したりするプレイヤーもいます。また、M&Aという変化を伴う環境の中で業務を体験したということそのものが市場からの評価に繋がる可能性もあります。

(3)会社文化の融合

文化が個人にどのような影響を与えるかを考える最も簡単な方法は、外国でのホームステイを思い浮かべることでしょう。目に見えない違いであっても、ほとんどすべてが異なっています。買収側の従業員も売却側の従業員も、新しい企業文化、経営構造、オペレーションシステムを理解することを求められます。もし、新経営陣に移行のための効果的なコミュニケーションが不足していると、従業員の間で不満が生じる可能性があります。

しかし、そういった文化の混じり合いを乗り越えて、双方の文化の良い部分が継承され、新しい文化となることで会社の文化が更により良いものかつ強固なものになっていきます。また、M&Aを繰り返すことで他社の文化に対する順応性や受容性もあがり、排他的でない文化の醸成につなげていくことができます。

(4)従業員の賃金

合併した2つの会社の間に存在していた賃金格差がいくつか出てくる可能性があります。従業員はそのことを話題にするでしょうし、一見小さな格差であっても、大きな憤りを引き起こす可能性があります。

合併後の企業で貴重な貢献をしてくれるはずの従業員が、自分の仕事が脅かされていると感じた場合、自分の仕事が保証されていない企業よりも、当面の仕事が保証されている企業での仕事を引き受けた方が安全だと判断するかもしれません。

事業売却が完了し、売却後の統合段階に入れば、少なくともどちらかの会社において文化的な変化が起こります。これにより、従業員はより一生懸命働かなければならないと感じたり、新しいプロセスが「この会社のやり方ではない」と感じたりして、不満を抱くかもしれません。このような不満やそれに伴う反発は、少なくとも短期的にはパフォーマンスの低下につながると考えられます。

このような合併後の摺合せはリスクがありますが、しっかりと買収後のプランを事前に作っておくことで対応が可能です。中長期的には人事体系なども一本化されることで賃金にかかる不満はクリアにすることができますし、M&Aによるシナジー効果等で、業界内でのシェアや利益率などが向上すれば従業員に対する還元も可能になります。

従業員に対する事業売却の影響を緩和するには

事業売却に際して、譲渡側のマネジャー、あるいは譲受側のマネジャーからの曖昧で一方的なコミュニケーションなど、合併時の発生しがちな従業員とのコミュニケーション不足があります。これは、実際に事業に従事する従業員のモチベーションや生産性に大きな影響を与えます。

会社の利益を生み出すはずの主要な従業員が、この変化の中で保護され、尊重されていると感じられない場合、会社から逃げ出したくなるかもしれません。従業員が事業売却の際に以下のような質問をするのは当然のことであり、これらの質問にマネジャーがどのように解答できるかによって、その従業員の生産性や新会社に残りたいと思う可能性に影響を与えます。

  • 給与、福利厚生、有給休暇、退職金制度などはどのように変わるのか?
  • 他の場所や新しい場所での仕事の機会はあるのか?
  • 自分の仕事内容や責任は変わるのか?
  • 仕事のプロセス、システム、手順は変わるのか?その場合、どのようなトレーニングが提供されるのか?
  • お客様やメディアからの問い合わせにはどのように対応すればよいか?
  • 正式な発表のスケジュールはどうなっているか?

買い手側、売り手側問わずM&Aに関わる企業の経営者や上級管理職は、このような事項についてクリアにし従業員に対して十分なコミュニケーションを行う必要があります。

まとめ:事業売却側の従業員への影響と処遇の変化

譲受企業において、事業売却を成功させるためには、法的な組織再編行為だけではなく、譲受側の事業に従事する従業員への対応も重要です。企業には当然、それぞれ特有の組織文化、賃金体系、システムなどのルールが存在しています。これらを無視して、自分達のやり方やルールを押し付けてしまうと、従業員の生産性にも影響を与えますし、最悪の場合、従業員が辞めてしまうというケースも少なくありません。これに対応するためには、従業員と可能な限りコミュニケーションをとり、十分な説明をするのが重要です。

M&Aの基礎知識
2021/11/22